【番外編】子どもに伝えたい!心を動かされたアニメ~みんな大好き「ドラゴンボール」そして「アラレちゃん」の続編は?~

心を動かされた映画やドラマ、本はありますか?今回は一般社団法人インナークリエイティブセラピスト代表 佐藤城人さんのおすすめ作品をお伺いしました。

1.はじめに

先日、漫画家鳥山明先生がお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。先生の訃報には、多くの著名人がコメントを寄せ、さらに海外のメディアが多数取り上げるなど、人気の高さや広がりがうかがえます。
代表的な作品として「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」があります。後者の主人公は孫悟空。世界中に散らばった7つの球すべて集めると、どんな願いも1つ叶えることができるという秘宝・ドラゴンボール。悟空を中心に、ドラゴンボールを巡る冒険や夢・戦い・友情を描く壮大な物語です。
私は今年60歳、この年齢層ですと、「漫画?そんなの読んでるの」と眉を顰めたり、また女性の皆さんの中には、「ドラゴンボールは格闘シーンばかりでしょ?」と敬遠したりする方も、もしかするといらっしゃるかもしれません。
「男の子は何を考えているのか、今一つ分からない」とお考えのお母さまへ、一緒に考えてみませんか?そして、男性向けのストーリーがあるように、女性には女性としてのストーリーがあります。それぞれに焦点を当てて考えてみようと思います。

2.ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)

ドラゴンボールの、特に初期の頃の魅力。ひと言で言えば「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」です。ヒーローズ・ジャーニーとは、神話学者ジョゼフ・キャンベルが提唱したもので す。古今東西の神話の物語を研究する中で、彼は共通するストーリーを発見します。それが「英雄の旅」なんです。主人公(ヒーロー)がさまざまな苦難、困難を乗り越える勇気と成長の物語。これがヒーローズ・ジャーニーです。
あなたが感動した映画や小説を幾つか思い出してください。概ね踏襲した流れで描かれているはずです。では、どのようなストーリーなのでしょう?

次をご覧ください。
(1)冒険の誘い→(2)冒険の拒絶→(3)賢者との出会い→(4)試練の道→(5)最大の試練→(6)帰還
概ね、この流れに沿って進むのではないでしょうか。

この流れを図にしてみました。(2)を経た後、上昇気流に乗ります。ところが(3)の試練では、ライバルの出現により自分の未熟さを知り、凹みます。しかし、(4)では仲間との友情や賢者からのアドバイスなどもあり、再び立ち上がり自己鍛錬に励みます。そして、ライバルとの再戦(5)、穏やかな平和な世界に戻ります(6)。
(6)でしばらくの安寧な日々を過ごした後、再び旅が始まります。それが「再びの(1)」です。
*本来ヒーローズ・ジャーニーは12の過程で説明されます。ここではわかりやすく6つにまとめてあります。

いかがでしたか?ドラゴンボールもこの流れを踏襲しています。孫悟空と多くの仲間たち、そして師匠である亀仙人や仙猫カリン様の元での修行。さらにピッコロ大魔王というライバルの出現です。悟空は一度戦いに敗れますが、厳しい修行を重ね再戦、勝利します。ここまでが1.~6.です。その後、サイヤ人やフリーザ、さらには人造人間セルなど、より強力なライバルが現れます。このように1.から6.を繰り返しながら、孫悟空とその仲間たちも、よりパワフルになっていくストーリー。そこに、孫悟空独特のあっけらかんとした性格が加わることで、ドラゴンボールという作品がより魅力的になっています。

ヒーローズ・ジャーニーの物語には、人間の成長に必要な要素がぎっしりと詰められています。ここに私たちは自分を重ねます。さらに、敗れて落ち込む悟空を励ましたり、立ち上がる場面では応援したりするのでしょう。
映画であれば「ロード・オブ・ザ・リング」「スター・ウォーズ」なども同じ構成になっています。どれも観る者を魅了する作品ですよね。

3.ヒロインズ・ジャーニー(女神への旅)

神話の中にある共通項、これがヒーローズ・ジャーニーでした。これは、男の子にとって、それまでの子どもの世界から大人の世界へ成長する中での通過儀礼とも捉えることができます。この痛みや試練に耐えられなければ、大人にはなれない(大人の社会には入れない)というものです。実際に、バヌアツでは成人になる男子がバンジージャンプに挑戦します。これは、現代にも残る通過儀礼の1つとされています。
では、女性の場合はどうなるのでしょう? 女性にも大人になるための通過儀礼は必要です。ただ、戦いの意味合いが異なってくるようです。もちろん、目の前の強敵と戦うときもあるでしょう。ただ、「ヒロインの旅(フィルムアート社)」の著者モーリーン・マードックは、自分自身や母親との分離とその関係性の修復に重点を置きます。

ヒーローズ・ジャーニーが求めるものは「実社会で生きていくために必要な心身の強さ」です。しかし男性中心の社会の場合、女性が活躍するためには、女性的な部分を切り離すか、逆に強調する必要が出てきます。前者であれば「競争社会を生き抜く」、後者であれば「媚びを売る」ことになります。しかし、これで幸せかと問われれば、疑問符が付くのではないでしょうか?
ヒロインズ・ジャーニーの求めるものは、「自分が自分らしく生きるための強さ」です。単なる腕力ではない強さ。これは男性的な成功によって得られるものではありません。自分の女性性を再度見つめ直すことです。ヒーローズ・ジャーニーの過程で捉えるのならば、
(1)冒険の誘い:男の子との対等な幼少期
(2)冒険の拒絶:これまでの生き方への疑問・母を含めた女性性への疑問・否定
(3)賢者との出会い:これまでの教えを否定してもよいという気づき
(4)試練の道:過去や母を否定することへの葛藤・自分らしさへの葛藤
(5)最大の試練:女性性の修復・回復
(6)帰還:女神としての再生

概ねこのようになります。この流れは、ヒーローズ・ジャーニーのようにシンプルではありません。そのため、これが絶対という黄金律もありません。ただ、この過程を経るからこそ、「私が私らしく」いられるのでしょう。そして、ジェンダーレスの時代です。これは男の子にも今後、より求められるものです。

4.まとめ

あなたが夢中になったアニメや映画はなんですか?ヒーローズ・ジャーニー、ヒロインズ・ジャーニーどちらのストーリーでしたか? そして、お子さんが夢中になっているストーリーはなんでしょう? どちらであっても、その子の成長に、いま必要なものだからこそ、心惹かれているのでしょうね。ぜひ、一緒に読んでみてください。そして、耳を傾けてください。もし、何かに葛藤しているのだとしたら、その思いをしっかりと受け止めてください。ストーリーの中には人生の師匠が現れます。現実の世界においてその役を担えるのは、親であるあなた自身なのですから。

最後に蛇足ながら、鳥山先生の代表作の1つ「Dr.スランプ」
主人公はアラレちゃん。ヒーローズ・ジャーニーの悟空に対して、ヒロインズ・ジャーニーとして大人になっていく「アラレさん」のストーリー。ロボットなので成長しないことが魅力のひとつですが、個人的には読みたいなと思っていた矢先の突然の訃報です。改めてお悔やみ申し上げます。

執筆者

佐藤城人(さとうしろと)
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会 代表
心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範

経歴
過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出合う。
各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5,000名様の悩みをサポート。
近年はヤングケアラーはインナーチャイルドの予備軍と位置づけ、お子さまや親御さまの支援にも力を入れている。
2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。
カウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。

一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
https://in-ct.org/

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