失敗が怖いという子どものへの声かけや対応について臨床心理士の視点からお伝えします!

緊張して何もできない、失敗が怖いという子どもにはどんな言葉をかければいいんだろう?
そんな悩みについて、今回は臨床心理士である、大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さまにお伺いしました。



緊張や不安を感じやすい子どもの特徴

お子さんが緊張しやすい、固くなりやすい理由はさまざまありますが、主に下記のような特徴をもっていると考えられます。

初めての経験で予測がつかず不安

大人も初めて行く場所や初めて経験することに緊張感を感じるように、初登園や初登校といった「初〇〇」は、子どもにとって緊張や不安を感じやすいものです。
特に保育園の発表会や学校の参観日などは、場所が同じであっても、いつもと違った雰囲気や人がたくさん居るという、環境の変化が子どもにとっては予測不能な怖い場所であり、緊張や不安を感じやすくさせています。

「完璧にしたい!」と力が入りすぎている

特に真面目で慎重なお子さんの場合は「完璧にしたい!」といった物事を“きっちりとやり遂げたい”という気持ちが強く、その気持ちが強ければ強いほど、「失敗は許されない」といった緊張や不安が強くなり力が入りすぎてしまい、失敗を恐れて何も出来なくなってしまうという悪循環に陥っていることもあります。

過去に失敗した経験がある

過去に緊張によって本来の力を発揮できずに失敗してしまったり、周囲に笑われてしまったり、失敗して怒られてしまったり、過去にネガティブな経験をしたお子さんは、同じようなシチュエーション、似たような場面で「また怒られたくない」「また失敗したくない」とより緊張を感じたり失敗を恐れやすくなります。

緊張した子どもにどうやって寄り添えばいい?

まずは子どもの緊張や怖いといった気持ちに寄り添うことが大切です。
何に緊張しているのか、何が怖いのか、子どもに問いかけましょう。例えば、初めての発表会。
大人は同じような発表の場を何度も経験していますから、“大丈夫”とわかっています。しかし子どもにとってはその大丈夫がわからないために、緊張や不安に繋がっているのです。
特に親は「うちの子は大丈夫」と緊張や不安を軽く捉えやすい傾向がありますので、「大丈夫よ!」と気軽に言わず、子どもの緊張や怖いといった気持ちに寄り添うことが大切なのです。

うまく言葉にできず、ただ漠然と「怖い」「嫌だ」と言う子もいます。
例えば、「学校に行きたくない」と言う子には「お勉強が嫌なの?」「お友達や先生が嫌なの?」というようにYesかNoで答えられる質問をしてあげましょう。
そして、「そっか、〇〇が△△だから怖いんだね」と、怖いと思う気持ちの正体が明確になることで緊張や不安な気持ちは低下します。

また、緊張や不安な気持ちを「ワクワクしてるんだね」と肯定的な言葉に置き換えてあげることも良いでしょう。
コインに裏表があるように、物事には複数の捉え方があります。
緊張や不安を感じている時には物事のネガティブな面にばかり目がいきがちですが、ポジティブな面に目を向けてあげることにより、前向きに挑戦できる機会が増え、お子さんの能力はどんどんと伸びていきます。

「緊張」「不安」といったマイナスなイメージの言葉を「ワクワク」と言うプラスの言葉に置き換え、励ますことによって、前向きに行動できるように背中を押してあげましょう。
これはリフレーミングといわれる手法で、例えば神経質→小さなことにもよく気が付く、ジッとできない→行動力がある、頑固→意思が強い、といった言い換えがあります。

こんな言葉かけも大切です

結果ではなく、具体的な行動を促す言葉かけをしましょう。
「大丈夫!あなたなら出来るよ!」と時には励ますことも大切ですが、緊張や不安が高いお子さんには、何をどうすれば良いのかが分からず、より不安を感じさせることもあります。
そのような時には、例えばテストの際に「まずはわからない問題は全て飛ばして、わかる問題だけを1つずつ解いていこうね」というように、子どもが簡単に達成できそうかつ具体的な行動を示す言葉がけが良いでしょう。やるべきことが明確になると、不安や緊張を感じながらも1歩前に進むことができるようになります。

そして、脱力させることで心の緊張をほぐしてあげる言葉かけをしましょう。「ゆっくりで良いよ」「楽にやろうね」「落ち着いてやろうね」という言葉で緊張がほぐれ、前向きな気持ちで取り組みやすくなります。

また、言葉かけをしながら手を優しくマッサージしてあげると身体の緊張も同時にほぐれ、さらに脱力を促すことができます。

大人からの言葉かけひとつで子どもの行動は大きく変わります。
その日、その場だけでなく、日頃からお子さんに対して共感的に、前向きで具体的な言葉かけを積み重ねていくことが大切です。
身近な大人を心の拠り所として子どもはさまざまな初めてにチャレンジをすることが出来ます。
そして成功体験や挑戦をした経験が積み重なり、子どもの自信につながり、子どもはその能力を開花させていくのです。

執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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