子どもの歯ぎしりはどうしてするの?寝ている子どもの歯ぎしりが心配です。
そんな心配や疑問について葉山こどものための歯医者さん院長の佐々木康成先生に伺いました!
歯ぎしりって何ですか?
歯ぎしりは、子どもの睡眠中にみられることが多く、上下の歯を咬み合わせて強く擦り合わせたり、強く食いしばったりすることで「ブラキシズム」と呼ばれます。歯ぎしりの音がすることも、しないこともあります。
近年の報告では11歳以下の31%にブラキシズムがあるという報告(Souza ら2020)もあり、珍しいものではありません。子どもは、大人より多いといわれています。
また、脳性麻痺などの全身の障害に伴う場合の過緊張や、意図しない運動(不随意運動)があると、起きている時にも歯ぎしりは見られます。
寝ている子どもの歯ぎしりが心配です
寝ている時に音がすると心配ですよね。
歯ぎしりが起こると、歯が摩耗し易くなります。ひどくなると、歯がひび割れたり欠けたりすることもあります。さらに進行すると、歯の神経(歯髄)へ影響したり、歯のすり減りが大きくなると咬み合わせが不安定になったり、顎が痛くなったりします。
軽度なものは、過度に心配する必要はなく、経過観察を行い、治療を必要としないことが多いものです。しかし、顎関節の症状や睡眠障害などが見られる場合は要注意です。早めに、小児歯科で相談してみてください。
歯ぎしりの原因って?
睡眠時(寝ている時)の歯ぎしりには多くの要因が関係していると考えられています。
咬み合わせが原因の場合、上下の歯がどこかでひっかかって、歯ぎしりが起こりると考えられています。それによって、咬む筋肉が緊張して痛くなることもあります。
一方で、歯並びが良い子どもにも、歯ぎしりがあります。心理的ストレスが強い場合、遺伝的な要因がある場合、肥満や注意欠如・多動症のこどもなどに多く認められることが報告されています。ただ、原因は多岐にわたり、個人差が大きいので特定するのは難しい場合が多いです。
歯ぎしりが気になったらお医者さんに行った方がいいですか?
歯ぎしりが気になったら早めの受診をお勧めします。歯医者さんでは、生活習慣の聞き取り、咬み合わせの検査を中心に、寝ている時の咬筋の働きを記録する検査や、口の機能の検査を行います。
特に歯ぎしりによる歯の咬耗が著しい場合や、咬みしめによる顎関節の症状や咀嚼筋の疼痛がみられる場合には、歯ぎしり防止装置(ナイトガードあるいはスプリントと呼ばれるもの)というマウスピースで治療を行います。また、咬み合わせの異常が原因と考えられる場合には、咬み合わせの治療を行います。
最近では、睡眠障害が疑われることもあります。睡眠時無呼吸などの呼吸障害に基づくことが考えられる場合には、歯科から耳鼻科へ紹介し、協力して治療を進めます。
睡眠時歯科筋電図検査(寝ている時の咬む筋肉の動きを調べる検査)が、令和2年度から健康保険適応となりました。
音のしない「噛みしめ・食いしばり」タイプのブラキシズムは、家族が気づかない場合があります。そのようなブラキシズムは、これまでは見過ごされることがありました。睡眠時歯科筋電図検査では、音のしない歯ぎしりも分かるようになっています。厚生労働省より認可を受けた歯科医院でのみ、このような筋電計を使った睡眠時の歯ぎしりの検査が出来ます。歯ぎしりの詳しい検査をご希望の方は、認可を受けている専門医院で相談されることをお勧めします。
[参考文献]
小児歯科学第5版, 医歯薬出版, 2017年
小児歯科をはじめましょう, デンタルダイヤモンド社, 2020年
まるごとわかるブラキスズム, 医歯薬出版, 2022年
Debora Souto-Souza ら, Sleep Medicine Revews.2020年
[執筆者]
佐々木 康成 先生
葉山こどものための歯医者さん 院長
[プロフィール]
小児歯科のプロフェッショナル。小児の口腔領域の治療・予防・訓練を通して、形態・機能を、チーム医療でトータルに育成する。県内遠方から専門的な治療を求めて、紹介や受診が多数。
食べ方の評価・指導で大事にしていることは、お子様の状態・発達段階を配慮するとともにご家族のご希望に寄り添うこと。
自らも3児の子育てをしている。
葉山こどものための歯医者さん
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