小児科医ママが伝える「子どもの時間感覚の身に付け方」について

「20時までに寝る支度を終わらせなさい」
「7時半までには準備しないと遅刻するよ」

よくあるセリフですが、子どもによっては悩みを抱える原因になっていることがあり、診察室でしばしば相談を受けます。
時計の読み方を学校で習うのは小学校1年生ですが、
時計を読めるということと、何分何秒を体感的にわかっているということは、話が別です。
なので、小学校低学年では時間感覚がわからないから、
「20時までに終わらせる」ように言われても、
どうしたらいいかわからない、という本音があってもおかしくありません。

さらに、発達特性で時間感覚が身につきにくい子どももいて、
その子たちは小学校中学年、高学年となっても
なかなか時間通りに動くことが出来ない場合があります。



時間感覚の身に付け方について考えていると、
デジタル社会の現代は、アナログの時代よりも
時間感覚が身につきにくくなっているのではないかと気付きました。

アラフォーの私が子どもだった頃、自宅の時計はアナログでした。
当時の時計って、カチカチと秒針の音が目立ち、シーンとした中で秒針の音が鳴り響くので、
一人で過ごすとドキドキしていたのを覚えています。
リビングの鳩時計は、1時間毎に鳩が飛び出し、12時には鳩が鳴いていました。
お友達の家には、12時には人形が踊る時計や、
定時毎に「ボーン、ボーン」と時刻の数だけ音が鳴るタイプのものもありました。

つまり、私たち昭和世代の人間って、
赤ん坊の時から、音がしたり、鳩が飛び出したりする時計に目をやり、耳を傾け、
定時を意識する事が当たり前の中で生活していたんです。
そのうち、カチカチいう秒針が、12のところに来たときに、
カチッと長針が動くことに気付いたりしながら、
自然と長針と短針、秒針の存在を知り、自分から興味を持つようになって、
親から時計の読み方を教わる、という流れで時計、時間感覚を学んでいったのではないでしょうか。

平成生まれの人たちは、生まれた時からデジタル時計や、
アナログであってもシンプルで針も静かに動いて主張しないような時計に囲まれていました。
そしてスマホの普及以降は、時間をスマホで確認する人が増え、
自宅に時計がないという家庭も出てきました。

そうなると、昔のように自然と子どもが時計に目を向けることが難しくなります。
鳩や人形が出てくる時計だから、小さな子でも面白がって目を向けていたわけで、
静かに回る3本の針や、デジタル時計の数字の並びは、見てもなかなか面白みを感じられません。

親としては、意識せずに自然と身につけていた時間感覚だからこそ、
どうやって時間感覚を身につけさせたらいいのかわからなくなります。



私がよく外来で提案させて頂いている時間感覚を身につけるためのポイントは、
いかに日常生活の中で自然と時間を意識させるか、です。

私が自宅で行っている方法をご紹介します。

[1]アナログ時計を置く。

鳩や人形が飛び出る時計は少ないのでなかなか手に入りませんが、
とりあえず文字盤と針がある時計をリビングに置いています。
そして、私自身が時計を見るタイミングで、
「もうすぐ8時だから、支度を終わらせなきゃ」などとつぶやき、
自分が何を考え時計を見るか、ということを独り言として(神経質になりすぎない程度に)発信しています。
「ほら、8時よ」と子どもに時計を見る事を促す前に、自分が時計を意識している背中を見せておく方が、
言われた子どもも、時計を見ることの必要性を理解しやすいのではないかと思います。

[2]スマートスピーカーのアレクサを活用する。

いつも大活躍している我が家のアレクサ。
私は、急いでいるときは「アレクサ、今何時?」「アレクサ、8時まであと何分?」などと聞いて、
出かける準備をしているときは時間を気にしていることを暗に子どもにも伝えています。

[3]一つ一つの活動にかかる時間を子どもが把握できるようにする。

アラームを使って時間を知らせるのもいいのですが、
数字を読めない子は、途中経過がわからないため、
アラームだと突然終わりが来る感じがして焦ることがあります。
だから、砂時計みたいに、残り時間を目で見て把握しやすいものを、
歯磨きのタイミングなどで使う事が、第一段階としてオススメです。
我が家では、置いた途端、遊び道具になってしまい、まだ何かの時間をはかる、というところには至っていませんが、
そのうち本人が砂時計の使い方を知りたがって使うようになると思いますので、のんびり眺めています。
最近、保育園からもらったコロナ感染対策のプリントに「20秒間手洗いをしましょう」という話が書かれており、
20秒間を子どもが把握しやすいよう、「どんぐりころころ」を歌いながら手洗いする、
ということが紹介されていました。
これなら小さい子でも、「しっかり手洗いするために必要な時間」を把握しやすいですね。
早速私も使っています。

[4]段取り力を育てる。

物事を進める手順を考えたり、時間配分を考えたりし、段取りができるようになると、
時間感覚も身につきやすいです。
うちの娘はまだ小さいので、そこまでは考えられませんが、
日曜日の楽しいお出かけのときは、朝起きて何をしたらいいか自分で考えながら準備を進めさせるようにしています。
言われて動くのではなく、自分で考える事が大切なので、早く準備をしたいと思う休みの日から。
3歳のときから、「次は何する?」と聞いて自分で決めて次の行動をとる、というようにさせていると、
4歳になった最近では、平日も自分から「歯磨きする」「着替える」を言うことが増えてきました。
逆に、自分はお出かけの準備ができているのに、パパやママはできてない!と玄関で怒りながら待っていることがちょくちょくあり、それはそれでまた新たな問題が出てきていますが・・・

デジタル社会の子どもたちが、身につけにくくなっているかもしれない時間感覚について、私の工夫をご紹介してみました。

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