心を動かされた映画やドラマ、本はありますか?映画「シザーハンズ」を親子でみてみませんか??

心を動かされた映画やドラマ、本はありますか?今回は一般社団法人インナークリエイティブセラピスト代表 佐藤城人さんのおすすめ作品をお伺いしました。

映画・シザーハンズ「みんな違って、みんないい」

「人を外見で判断してはいけない」
この考え方に対して、異論を唱える人はいないでしょう。ただ、実際にその場に、あなたが遭遇するとしたら?
また、あなたの愛する子どもが、世間から奇異の目で見られるとしたら?

今から30年以上前の1990年(日本の上映は1991年) ある洋画が誕生します。
「雪はどうして降るの」 この問いかけからスタートするこの映画、切ない青春ラブストーリーです。

タイトルは、『シザーハンズ』
シザー(scissors)とは、ハサミ。ハンズ(hands)とは、手のこと。両手がハサミの人造人間・エドワードが主人公です。

近年、この映画を授業に取り入れる学校もあると聞きます。もしかすると、お子さんもご存じかもしれませんね。
監督や俳優の名前、これは誰もが知っている大御所です。後半に紹介しますので、ぜひラストまでお読みください。

丘の上の屋敷に一人で暮らすエドワード。
シャイで純粋、口数は少ないのですが、うちに秘めた思いを感じさせます。年齢でいうと、ちょうど青年から成人の中間くらいでしょうか。

ふとしたことがキッカケで、街に降り、暮らすことになります。
ただ、普通の人々と普通に暮らそうとすると、食事もままなりません。彼の手は大きなハサミなのですから。

根は純粋なハートの持ち主です。
次第にハサミならではの才能、例えば、庭木の手入れやヘアーカットなどに活かし、徐々に人たちとも交流が深まり、人気者になっていきます。

しかし、彼の存在を疎ましく思う者も現れます。特に、恋が絡んでくるとなおさらですよね。
※小学生が観ても大丈夫な内容です。過激なシーンは出てきませんからご安心ください。

あるひとつの事件をきっかけに、街の人々が抱いていた小さな恐怖心が肥大化してしまい…。
エドワードへの迫害から、偶然とはいえ、彼は人をあやめてしまいます。失意の中、丘に戻るエドワード。
「雪はどうして降るの?」 答えが、ラストに明かされます。

観るときに意識したいこと

はじめてこのストーリーに触れたとき、金子みすゞさんの童謡をニつ思い出しました。 「みんな違って、みんないい」のフレーズで有名な『わたしと小鳥とすずと』と『星とたんぽぽ』です。内容に触れていますので、ご存じない方はぜひ全文を読んでみてください。
シザーハンズをご覧になった後、この童謡も交えて、お子さんとお時間をお取りになられてはいかがでしょう?

その際のヒントです。
(1)正解はひとつではない
「みんな違って、みんないい」です。
本当は「違い」に過ぎないものの対して、とかく私たちは「間違い」と受け止め批判しがちです。

(2)使い道でプラスにもマイナスにもなる
ハサミという道具。世のため人のために使うことが可能です。しかし、使い道を誤まってしまうと、人を傷つける道具にもなってしまいます。

(3)普通ってなに?
エドワードにとって、両手がハサミである状態が普通です。しかし、街の人々から見れば、奇異に映ります。しかし、丘に戻った彼にとっては、そこでの暮らしが普通の状態。普通ってなんでしょう?

(4)見えるものが全てではない
シザーハンズのラスト、雪が舞うシーン。
見える世界だけに限定してしまうと、雪としか、 受け止めることができません。ただ、金子みすゞさんは『星とたんぽぽ』を通して語ります。
「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」
エドワードの心が雪を降らせるのだとしたら?

(5)ヒロイン・キムへの評価
ヒロインとして高校生キムが登場します。

このヒロインへの評価、日米では分かれるようです。 幾つか挙げてみます。

日本人:自分勝手だ。
・(事件に関して)エドワードだけに罪を被せている。
・氷の降る中、一人ダンスを踊るなんてノー天気もいいところ。

アメリカ:自分中心でOK。
・(事件に関して)エドワードが自分を庇っていることはわかっている。 だから、彼の思いを尊重しただけだ。
・好きな人の元、嬉しい気持ちを表現しているだけだ。

日本とアメリカの価値観の違い、
・相手や周囲に合わせることを尊重する社会(日本)
・自己主張しないと己が埋没してしまう社会(アメリカ)
このように集約することもできます。 もちろん、私たち日本人の中でも、意見は分かれるところです。
ただ「みんな違って、みんないい」です。

そして「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」 この言葉の理解が、異文化や他者の理解にも繋がることでしょう。
やや話が広がり過ぎました。 冒頭の「人を外見で判断してはいけない」に戻ります。

(6)非言語のコミュニケーション
エドワード役は、ジョニー・デップ。
口数も少なく何かと誤解をされる役を、アンニュイな表情・切なげな表情など、内面を豊かに演じ分けます。 ただ、どうしても両手にある大きなハサミ、ここに目が行きがちです。
「外見で判断をする」という時も同じです。
目立つ姿や言動などが判断の基準となります。 しかし、注意深く見てみると、色々な表情にも気づけるんですね。
とかく、コミュニケーションと言うと、用いる言語ばかりが注目されます。しかし、相手の表情をしっかりと見ること。この非言語のコミュニケーションも大事です。

ここまで、(1)~(6)と6個の視点を挙げてみました。
小学生であれば(1)(2)(3)で盛り上がりそうです。
中高生であれば(4)(5)(6)もディスカッションになりそうです。

この他、色々な観点から会話も弾むことでしょう。一つの映画で、これだけのテーマが話題にできる映画、これが『シザーハンズ』です。

お父さま・お母さまへ

まず、お子さんの感想に、耳を傾けることからスタートなさってはいかがでしょう? 大人や親の意見は後回しにして。
自分の意見・言いたいことをキチンと相手に伝えること。これが誤解を防ぎ、より良い人間関係を築くことになります。

若い世代の感受性を育てるために、そして相互理解のために、いかがでしょう?
今回、「人を外見だけで判断してはいけない」からスタートしました。そして、異文化理解にまで、膨らませることが可能なこともお伝えしました。

そして、2回3回観ることをおすすめいたします。
さらに奥深いテーマがあることにも気づけるからです。

次のシーン。再度ご覧になってください。
・丘の下に広がる街並み
とってもカラフルです。これに対しエドワードの衣装は黒づくめ。彼が住む丘の上の屋敷も黒づくめです。この対比は何を意味するのでしょう?
とかく、私たちは、プラス思考は〇、ネガティブはダメと捉えがちですが。

・警官の場面
このカラフルな街には、白人しか住んでいません。 ところがストーリーの終盤、エドワードが捕まりそうになる場面では、彼を擁護する警官が1人、登場します。この警官、黒人なんです。なぜ?
監督・ティムバートンのメッセージ、「人種のるつぼ」と呼ばれるアメリカ社会へのメッセージを感じます。

『シザーハンズ』
年齢に関係なく、何度も見たくなる映画です。

執筆者

佐藤城人(さとうしろと)
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会 代表
心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範

経歴
過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出合う。
各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5,000名様の悩みをサポート。
近年はヤングケアラーはインナーチャイルドの予備軍と位置づけ、お子さまや親御さまの支援にも力を入れている。
2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。
カウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。

一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
https://in-ct.org/

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