筋トレをしすぎると身長が伸びないってほんと?身長を伸ばしたいと思ったら何をしたらいい?
そんな悩みに、医学博士、循環器内科専門医である医療法人社団正恵会DIOクリニック理事長、藤井崇博先生にお伺いしました。
筋トレをすると身長が伸びにくいというのは本当?
結論からいいますと、筋トレをすると身長が伸びにくいというのは医学的な根拠はありません。
むしろ、有酸素運動(ランニング、水泳など)や筋トレ(自重トレーニング:腹筋、腕立て伏せなど)をすることで、成長ホルモンの分泌が増え身長に関して良い影響があると考えられます。
そもそも成長期における骨の成長は、骨端線という骨の末端にある軟骨組織から始まります。
この軟骨組織がダメージを受けると成長は邪魔されますが、そもそも子どもの筋トレで骨端線が損傷するほどの負荷をかけることは非常に難しいと思われます(念の為に高負荷がかかる高重量のトレーニングは避け、自重によるトレーニングを推奨します)。
もちろん、可能性はゼロではありませんが、たくさん筋トレをしたから背が伸びないとは、考えにくいと思います。
では、なぜ筋トレをすると身長が伸びないと思っている人が世の中に多いかというと、その理由のひとつにボディビルダーとして活躍している選手に背が高くない人が多い傾向があるためかもしれません。
というのも、フィットネスの大会において体の小さい人の方が、体をコンパクトに操作しやすく、筋肉隆々にみえやすくステージ上で評価されやすいからです。
身長が伸びない時に行った方がいい運動や食事などはありますか?
身長を伸びやすくするために意識したい大事なことは食事、運動、睡眠です。
まず、食事に関してよく世の中では牛乳を飲めば身長が伸びるといわれていると思います。 こちらは間違いではないのですが、飲み方や他の食品との食べ合わせを工夫すれば、より骨の成長を効率的に行えるようになり、骨の成長を促す可能性があります。食事に関してのポイントは3点あります。牛乳以外にもたんぱく質を含む魚や肉を、またビタミンDとビタミンKを含む大豆製品や魚介類、きのこ、卵、緑黄色野菜を一緒に食べることでカルシウムの吸収量を増やすことができますし、これらビタミンそのものが骨形成に必要な栄養素でもあります。また、たんぱく質を含め食事で一度に吸収される栄養素の量は限られており(※個人差はありますがたんぱく質だと1食40g程度)、消化、吸収に3~4時間かかるので1食で多く摂取するより、3~4時間の間隔を空けて、こまめに摂取することで消化、吸収の効率が高められます。
運動に関しては先述した通り、成長ホルモンの分泌を促すので身長に良い影響が与えられます。運動の種類は関節への負荷、怪我のリスクなどを考えると有酸素運動(ランニング、水泳等)や筋トレ(自重トレーニング:腹筋、腕立て伏せなど)をおすすめします。
睡眠に関しては、ヒトの各年齢による適切な睡眠時間が2015年にNational Sleep Foundation(国際睡眠財団)から論文として発表されており(Max Hirshkowitz,National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary Sleep Health. 2015 Mar;1(1):40-43. )こちらの論文では、新生児の適切な睡眠時間は 14~17時間、乳児は12~15時間、幼児は11~14時間、未就学児は10~13時間でした。
また、10代の場合、8~10時間、若年成人および成人では7~9時間、高齢者では7~8時間の睡眠が適切であると発表されました。
各成長段階での適切な睡眠時間の目安のご参考にして頂ければと思います。
食事、運動、睡眠に関して前述した内容を実践して頂くと身長を伸ばすには良い効果があると考えます。
子どもの身長に関して
お子さんが将来どれくらいの身長になるかというのは、親御さんであればやはり気になるところですよね?
そんな親御さんに、日本人を対象とした親の身長から子供の最終身長を予測する式が論文で発表されていますので紹介させていただきます。
(Tsutomu Ogata. Target height and target range for Japanese children: revisited Clin Pediatr Endocrinol. 2007;16(4):85-7. )
男の子の場合:予測身長(cm)=(父親の身長+母親の身長+13)÷2(±9cm)
女の子の場合:予測身長(cm)=(父親の身長+母親の身長-13)÷2(±8cm)
【計算例】父親:170cm 母親:160cm
男の子の場合:(170cm+160cm+13)/2(±9㎝)=171.5cm(±9cm)(161.5cm~180.5cm)
女の子の場合:(170cm+160cm-13)/2(±8㎝)=158.5cm(±8cm)(150.5cm~166.5cm)
計算式で±(プラスマイナス)と幅があるのは、遺伝的要因が70%弱と多くを占める最終身長ですが遺伝的要因以外にも例えば、先ほど説明した運動、食事、睡眠など含めてその他にも多くの要因が絡んでいますので、個人差といったところで幅を持たせています。是非一度計算されてみて下さい。
最終身長の計算をお示ししましたが、最後に成長曲線と病的低身長に関して説明させていただきたいと思います。
お子さんが成長していく過程が母子手帳に成長曲線という名前でグラフが載っているかと思います。
こちらのグラフは病的な低身長を早期に発見出来る大切なものでありますので、ぜひ是非今一度改めてお子さんの身長で悩みを抱えている親御さん含め確認をして頂ければと思います。
成長曲線で観察し早期診断したいのが病的低身長です。原因は多岐にわたりますが、成長曲線のグラフの動きからある程度原因を予測できることがあります。
身長の基準値から外れているのが続くとか、急に基準値内でも大きな変動がある時はご家族内だけで悩まずに、小児科受診や受診相談を検討されると早期発見、早期治療開始が可能になりますのでご検討ください。
執筆者
藤井 崇博先生
医療法人社団正恵会 DIOクリニック理事長
経歴
専門領域は循環器内科で心臓領域を専門としており、研修医から2021年までの約10年間大学病院、関連病院で臨床、研究、教育に従事させて頂き、循環器内科専門医、循環器内科領域での医学博士号を取得しております。
現在も循環器疾患を含め外来での診療は継続させて頂いております。
循環器内科医として様々な患者さんの診察に日々従事する中で、何よりも大事なのは未病、医学的には一次予防と呼ばれる未然に病気になるのを予防しようとする意識が大事だと常々思います。
最近では対面でお話出来ないことも多いので、SNSやその他コラムなどで健康に有益な情報の発信に力を入れております。