足が痛いと子どもが言ってくる。これって成長痛?見分け方はある??整形外科医、歌島先生に伺いました!

足が痛いと子どもが言ってくるけれど、これって成長痛?見分け方とかあるの?今回はそんなお話を整形外科医の歌島大輔先生にお伺いしました。



子どもの成長痛ってそもそも何?

整形外科医がいただくご質問として、よく「これは成長痛ですか?」というものがあります。
特にケガはしていないのに、お子さんの脚や膝が痛いとなったら、まず思いつくのは「成長痛」というワードになりますよね。
そして、多くの場合の整形外科医の回答は・・・
「うーん、成長痛と言えば、そうですねぇ・・・」という
スッキリしない答えになってしまいます。

それはなぜでしょうか?

それは成長痛というものが、そもそもぼんやりした言葉だからなんですね。
そんな、整形外科に診察室で聞いても明確な回答が返ってきにくい「成長痛」ですが、少しでも「なるほど!」感じてもらえるような説明ができたらと思い、記事を書いております。

成長痛の定義と原因

成長痛(growing pain)は歴史的にはさまざまな定義がされていています。
しかし結局、「骨の成長そのものが原因で痛みが発生する」ということは医学的には考えにくいので、「なんでも成長痛」とされがちな「便利だけれど医学的には不適切な言葉」というのが「成長痛」の正体かもしれません。
そんな中で、どういった症状が典型的な成長痛と呼ばれるかというと、「夜中を中心に突然、下半身の痛みを訴えて、泣き出すが、時間とともに自然とおさまり、次の日には何の症状もない」というような状態です。
なんとも掴みどころがありませんね。

それでも、一般的には
1)痛みが8時間以内におさまる
2)来院時には無症状
3)診察上異常所見なし
4)単純X線検査で異常なし
以上の4つの項目を満たす場合に成長痛と診断されています。
(参考:国立病院機構「四国こどもとおとなの医療センター」〈こども〉 vol.12 成長痛ってどんな痛み?https://shikoku-mc.hosp.go.jp/news/ohisama_basics_c_vol12.html)

つまり、狭い意味での成長痛は明らかな原因や異常は掴めないけれど、困るレベルの痛みが腕や脚にある状態ということになります。
そして、この4つの項目を考えてみると、何も調べずに、いきなり「成長痛ですね」ということはないわけです。
こういう診断を「除外診断」といいます。ですから、成長痛って実は断定するのが難しいんです。
むしろ、成長痛と安易に断定する前に「除外」しないといけない病気が子どもの場合には結構あります。
まだ骨が成熟せずに成長している段階では、さまざまな異常が起こりえます。

ケガ以外で起こる脚の痛みの代表的な病気を列挙だけすると、
単純性股関節炎
ペルテス病
良性腫瘍
悪性腫瘍(骨のがんのようなもの)
化膿性関節炎
大腿骨頭すべり症
離断性骨軟骨炎
疲労骨折
シンスプリント・・・

こういうものがないかをレントゲンや、時には精密検査で確認していくことが必要になるんです。
ですから、「成長痛かなぁ」と思っても、整形外科の受診というのは躊躇しないでいいということになります。

もうちょっと「ざっくり」成長痛を考える-成長に伴う痛み-

ただ、もう少し広い意味で、「成長に伴う痛み」を総称して成長痛としてしまうと、いろいろなものが含まれます。
その代表的なモノは「骨端症(こったんしょう)」と「筋腱の痛み」だろうと思います。

骨端症とは?

骨端症というのは、骨端線の先にある、骨端部分=骨端核に変化が起こって、痛みが出る状態です。
一気に専門用語を羅列してしまい、申し訳ないです。
1つひとついきましょう。
「骨端線」とは子どもの骨が成長する場所で、成長軟骨板とも呼ばれます。
この骨端線はもともと骨よりも脆い、弱い場所なので、骨端線での骨折が起こりやすいという特徴があります。
そして、骨折までは至らないけれど、骨に負担がかかってその「脆い、弱い」骨端線に炎症が起こったり、変化することを骨端症といって、レントゲンでも通常より骨端線が「白く」写ったりすることで診断できます。

「筋腱の痛み」筋肉が付着するため引っ張られる

さらに、骨端線近くには筋腱(筋肉やその先端のスジ=腱)がくっついて、骨端線が離れるように力が常に加わっているということがあります。
この筋腱に引っ張られることが骨端症の大きなひとつの原因です。
子どもの膝の痛みで有名な「Osgood-Schlatter病(オスグッド病)」もこのメカニズムが一因です。
そして、急激に身長が伸びるような時期に、筋肉の引っ張る力が増えてしまって、骨端症が起こりやすくなると考えられています。
もし急激に身長が伸びる時期、つまり、骨が急に長くなる時期に、それに合わせて筋肉や腱の長さも同じように長くなれば特に問題ないわけですが、それがなかなか追いつかないことが多いです。
そうなると、筋肉はどんどん硬くなってしまいます。
結構、身体がカタい子どもって多いですよね。それに伴って、筋肉が小さく損傷して、炎症を起こしてスポーツをするときに筋肉が痛かったり、筋肉の付着部(骨にくっつくところ)が痛かったりします。

成長痛を防ぐ第一戦略はストレッチ!

ここまでの内容をご理解いただくと、広い意味での成長痛を防ぐには、成長期こそ、筋肉の柔軟性が大切だといえます。
そのため、「身長がどんどん伸びている頃に徹底してストレッチをする」これを意識してもらえたらと思います。
特に膝や股関節の柔軟性を上げていくストレッチがとっても重要になってきます。
お風呂上がりなど、筋肉の血流が良くなっていて、かつ、リラックスしているタイミングでのストレッチを家族みんなで行う習慣なんていうのは、とってもおすすめですので、ぜひお試しください。
今回は、成長痛について解説させていただきました。少しでも参考になりましたら幸いです。

[執筆者]

歌島大輔先生
整形外科医

[プロフィール]
フリーランス整形外科医として、常に磨き上げ続けている肩関節鏡手術スキルを駆使し、五十肩・腱板断裂などを対象に治療をおこなっている。
また、情報発信ドクターとしての顔も持ち、「正しい医学情報をわかりやすく」をモットーに、情報発信・オンライン教育事業を積極的に展開している。

すごいエビデンス治療 | 整形外科医 歌島大輔
https://www.youtube.com/@d.utashima

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