気になる「食べつくし」原因と対策方法について。臨床心理士の視点からお話します!

最近なにかと話題の「食べつくし」。悩んでいる方も少なくないのでは?
今回は「食べつくし」の原因と対策方法について、メディアでもご活躍中の臨床心理士である大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さんにお伺いしました。

「食べつくし」の原因は?

(1)日常的な関わり
日常的に、食卓で大皿から人数分に分けて食べるという経験が少なかったり、家族から「お母さん(お父さん)の分も食べて良いよ」と言われていたりすると、複数人で食事をシェアすることや、自分と他人の食事の境界線が曖昧になっている場合があります。
自己と他者の切り分けができない、「お前のものは俺のもの!俺のものは俺のもの!」いわゆるジャイアン状態になってしまうイメージでしょうか。うちと外の切り分けができず、家ではお父さんもお母さんも何でもくれるから、外で他の人もくれて当然でしょ。となってしまうことが考えられます。
この場合、家族は自他の区別ができているため、「まさか外ではしないでしょ」、と驚かれることもあります。
実は「私は私、人は人」という自他の区別は自然につくものではありません。日常生活の中で、家ではこう、外ではこう、など日常的に自他を区別することを教える関わりが必要になります。
(2)認知の問題
これは二つ。一つは3等分、4等分といった、等しく分けるという計算が出来ないケース。低年齢の子どもや、算数が苦手なお子さんに多いです。もう一つは感覚や感情の問題。例えば、感情のコントロールが苦手な子は、日常的に言葉にできないモヤモヤやストレスへの対処の方法の一つとして、「僕のもの!」「私のもの!」と目の前の人やモノなどを独り占めしたがることがあります。
(3)精神的な問題
不安や脅迫的に「食べなければいけない」という精神状態になることで日常的に食べつくしてしまうケースもあります。例えば、学校でストレスを感じて、その発散のために食べるという対処法をとっていたり、「食事に毒が入れられている。家族を守るために僕(私)が食べてあげないと」という妄想に囚われていることもあります。
(2)の認知や(3)の精神的な問題の特徴として、(1)とは違い、原因の場合の多くは食事はシェアするもの、という理解はしていることが挙げられます。しかし、等しい配分のイメージが描けなかったり、感情をコントロールできない結果、食べつくしが生じているといえます。

対策方法は?

(1)日常的な関わり
単に経験がない、知らない、ということが原因ですので、日常の中で大皿料理を等分にシェアする経験を多く用意してあげることがおすすめです。また、一方的に食べさせてあげるのではなく「お父さん(お母さん)にもひと口頂戴」など、お互いに分け合うということも経験として良い関わりとなるでしょう。
(2)認知の問題・(3)精神的な問題
その子の食べつくしが起きている原因を見つけてあげることが大切です。日常的にストレスを感じていないか、例えば、学校に行きづらそうにしていないか?不安に感じていることはないか?などです。
学年の切り替わりや、大きな行事の前などで一時的にストレスを感じて症状を表すケースもあります。家ではあまり話さない、分からない、という場合には、学校の先生やスクールカウンセラー、クリニックの先生や臨床心理士や公認心理師などこころの専門家に頼ることもおすすめです。
原因が特定できたら、その原因を解消することで徐々に変化が現れるでしょう。

対策方法として、よく食べ物を隠したり、棚に鍵をつける、などなさる方もいらっしゃいます。一時的には対策ができるかもしれませんが、根本原因を解決していないので、酷くなったり、もしくは他のところで子どもの問題が生じてきてしまいます。例えば、親の前ではしなくなったけど、給食の時間に友達のものを食べてしまう、などです。
「なぜこの子は食べつくしてしまうのか?」単に対策を取る前に、まずは時間をかけて根本の原因をしっかりと見つけてあげことが大切です。

執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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