前回のお話
相談支援専門員の茂木先生と面談をしたあやこさん。自閉スペクトラム症と知的障害の診断が出ていること、感覚過敏や偏食があること、単語は出ているが会話はできないことなど、ゆみかちゃんの現状を話しました。そして、同じことを何度も言ってきて特定の言葉を返さないと気が済まないと話しているとゆみかちゃんが「まま、うしゃぎのおやこ」と言ってきたので「ピョンピョン」と返すあやこさん。ゆみかちゃんはこれを何度も繰り返して・・・。
障害児のママは神様に選ばれたと言われて[9]
面談の途中、ゆみかちゃんといつものやり取りをしながらあやこさんが思い出していたのは、以前飲食店に行ったときのことでした。
「うしゃぎのおやこぉぉ」
床に寝転がり大泣きのゆみかちゃん。
「いま注文中だからお返事できないよ。もうすぐ終わるから静かにしようね」
そう伝えても、ゆみかちゃんは泣き続けます。
「お腹すいて暴れ出す前にゆみかの好きなポテト頼もうとしたのに。一回返事しなかっただけで結局泣いちゃった・・・」
あやこさんがゆみかちゃんを宥めようとしたそのとき、
「しつけ出来ないなら連れてくんな」
後ろに並んでいた人がそう言ったのが聞こえました。
「・・・・・・すみません。注文キャンセルします」
あやこさんは注文をキャンセルし、泣いて大暴れしているゆみかちゃんを抱きかかえてお店を出たのでした・・・。
「ふぎぃぃ。まま、うしゃぎのおやこ」
ゆみかちゃんの声でハッと我に返るあやこさん。
「まま、うしゃぎのおやこ」
と言って泣くゆみかちゃんに
「ピョンピョン」
と返しつつ
「相談員さん、すみません。ゆみかお外では静かにしようね」
相談員さんとゆみかちゃんに交互に話すあやこさん。
すると、
「瀬戸さん、ここではいくら泣いても大丈夫なので。ゆみかちゃんが苦しいのでなければこのまま様子を見てみましょう」
と茂木先生が言いました。
予想外の言葉に驚いたあやこさん。
「何に不安を感じてるのか、どうしたら過ごしやすくなるのか。僕たちもゆみかちゃんのことをよく知りたいんです」
そう言ってにっこり微笑む茂木先生と花田先生。
「そ・・・そうですか?」
あれ?今までと感じが違う。そんなふうに言われたこと無いからびっくりした。
と、初めてのことにあやこさんは少し戸惑います。
そして、茂木先生から他に困っていることなどがないか聞かれたあやこさん。
先生達の雰囲気から、ここでなら話しても笑われないかなと感じたあやこさんは、ゆっくり口を開きます。
「あの・・・こんなこと悩むの私が気にし過ぎなのかもしれませんが・・・」
「・・・障害児の母親は本当に神様に選ばれてるんでしょうか?」
続きます
植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中