前回のお話
こども福祉課でばったり会ったはるさんがゆみかちゃんをたくさん褒めたり話しかけたりしている姿を見て苛立ちを覚えたあやこさん。「知的障害のない娘さんがいていいですよね」「ゆみかみたいな子が自分の子じゃなくて良かったって思ってるんでしょ?」と言いたくないのに嫌味が止まりません。立ち去るあやこさん達の背中を見て、はるさんは「え、娘・・・?」と驚いていて・・・。
障害児のママは神様に選ばれたと言われて[29]
ドアをドンドン叩き続く音が聞こえるなか、トイレでスマホの画面を見つめるあやこさん。
あやこさんは、なんでもママ相談というサイトに相談を書き込んでいました。
『ASDの娘をうまく育てられません』
『4歳のASD娘を育てています。会話できない。ひどい癇癪。毎日が不安でうまく育てられる自信がない。
障害児の母親は神様に選ばれたと人に言われるけど、自分がそうとは思えない。』
トイレの外では、ゆみかちゃんが泣きながらドアを叩き「うしゃぎのおやこぉぉ」と叫んでいます。
あやこさんはゆみかちゃんの呼びかけに応えず、スマホのページを上に送ります。
あやこさんの書き込みへのコメントが並んでいます。
『障害は個性。こどもの個性を認めてあげてください』
『大丈夫。そういう子って神様からのギフトだから。将来天才になる』
『自分だけじゃない。あなたより辛い人だっています。愚痴ばっかりの母親じゃ子供がかわいそう。もっと強くなってください』
『辛いのは子供。ママしっかりして』
『神様は乗り越えられない試練は与えません』
今まで見聞きしてきたのと同じようなコメントが並んでいるのを見て
「・・・疲れた」
とこぼすあやこさん。
トイレの外では相変わらずゆみかちゃんがドアを叩きながら叫んでいます。
『神様は乗り越えられない試練は与えません』
というコメントにあやこさんが思ったのは・・・
「ゆみかに?」
「それとも・・・」
これまで自分が言われてきた言葉が蘇るあやこさん。
「ママ相談やらなきゃよかった・・・」
相談をして気持ちが軽くなるどころか、ますます落ち込んでしまうのでした・・・。
続きます
植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中