負けると泣く、途中で投げ出してしまう子どもにどんな言葉をかけたらいい?新見先生に伺いました!

「負けると泣く、途中で投げ出す子どもにかけたい言葉」について、今回はオックスフォード大学にて医学博士取得もされている新見正則医院院長、新見 正則先生にお伺いしました。



あえて、「それでいいよ!」と言ってあげよう。

負けて泣いたとき、途中で投げ出したとき、子どもには「なんで泣くの!」、「なんで投げ出すの!」と言いたくなります。
このびっくりマーク(!)が重要で、最初に「なんで」を付けると基本的に相手を叱責するモードになります。
「なんで」で始められると、相手も当方の叱責姿勢を肌で感じますので、まず構えて「だって・・・・・」とオウム返しに返答するものです。
そして泥沼のバトルに進展します。
そんな時は、びっくりマーク(!)を意識しながら、敢えて「それでいいよ!」と優しく言ってあげましょう。
本人を包み込むように優しく接するのです。努力をすれば勝つようになるかもしれません。
努力をすれば最後まで完遂できるかもしれません。
また、いくら努力をしても負け続けて、また完遂できないかもしれません。
そんなことは子どもが一番感じています。
子どもから、「どうすれば勝てるの?」とか、「どうすれば最後までやり遂げられるの?」と尋ねられたら一緒に考えればいいのです。
また、「なんで泣くの?」、「なんで投げ出すの?」と言っても、ゆっくりと、そしてびっくりマーク(!)の付かない質問モードで尋ねると戦闘モードにはなりません。
そんな言葉の力も知って、基本的には「なんで」は封印すると、泥沼のバトルに進展することは避けられますよ。

選択枝はいくらでもある

人生は理不尽で不平等で不公平です。
そんなことを幼い子どもに説明しても有益ではありません。
しかし、社会に出れば多くの人はそれを痛感します。
だからこそ、僕はそんなことをぼつぼつと本人が会得(えとく)していくのは子ども自身の成長にとって大切だと思っています。
通知表の点数を横並びにするとか、運動会で手を繋いでゴールするなど僕にとっては論外です。
人には個性があります。
横並びではありません。
得意不得意もあります。
好き嫌いもあります。
そして選択枝はいくつもあります。

ある科目で成績が悪くても他の科目や領域で秀でることもあるでしょう。
走るのが遅くても他の運動や、運動以外の分野で活躍することもできます。
「これでは負けたね、他に勝てそうなもの探そうか?」とか、「これは最後までできなかったね。
なにか最後までできそうなものないかな?」とか言って、他の選択肢を探すのです。
また、子どもの成長に従って、苦手なものが得意になることもあります。

子どもにとって選択枝は無限です。
僕達が子どもの頃は、親を含めた先輩の意見がほぼほぼ当たっていました。
時代の変化がそれほど早くはありませんでした。成人前後までに手に職を付けて、その職を定年までの生業とすることができ、定年すれば年金をもらっていずれお迎えが来ました。
ところが現代の変化は激しく、先輩の箴言(しんげん)が正しい確率はどんどんと低下しています。
同じ職業で生き抜ける恵まれた人は多くありません。時代に則(そく)して変化する必要があるのです。、いろいろな選択枝があることを忘れないで欲しいと願っています。

親が見本を見せないとね

子どもに叱責しても、あまり良い結果にはならないと思っています。
自分が努力する姿勢を見せることが大切です。
僕は小学生時代に中耳炎があって水泳の授業はほぼ受けることができませんでした。
大人になっても金槌(カナヅチ)でした。
泳げないことにもの凄いコンプレックスがありました。
娘にはそんな思いをさせたくなくベビースイミングから通わせていました。
幸い娘は小学校に上がる前には4泳法が泳げました。
その娘が小学1年生の時に、「パパも一緒に泳ごうよ」と誘われたのです。

ここで僕は思案しました。
これから「勉強しろ!」と叱咤激励する機会も増えるだろうからまず自分が今できないことに挑戦する姿を見せようと思ったのです。
そこで水泳の練習を始めて、その後ランニング、自転車と挑戦し、娘が小学校三年生の時には日本で一番長い距離の佐渡トライアスロンAタイプ(スイム3.8km、自転車190km、フルマラソン42.2km)を14時間18分で完走しました。
娘はその前日のキッズトライアスロンを完走しました。
その後、娘には「勉強しろ!」と言うこともなく、無事に成人を迎えました。
一緒に頑張ったり、親の背中を見せることが、叱咤激励よりも大切で有効と思っています。

子育てはJust Fun! 楽しみましょう。

まだ子どもがいないときに、アトランタに長期間滞在しました。
オックスフォード大学博士課程を修了した先輩の自宅に住まわせてもらって、彼が教授を務めるエモリー大学で移植免疫学の実験をしたのです。
その時に、6歳と3歳の娘さんがいました。
僕がその娘さん達と遊んでいると、奥さんが「子育てはJust Fun!だよ」と教えてくれました。
その言葉は子どもができてからも脳裏を離れず、子育てを家内と一緒に楽しみました。
子どもは思うようには育ちません。自分が引いたレールの上を走りません。
ともかくこれからの世の中を生きられるように育て上げることが大切です。
これからの世の中は親も子どもも変化できることが最重要と思っています。
子どもとは戦闘モードは避けて、子育てをただただ楽しむことが大切と思える今日この頃です。

執筆者

新見正則先生
新見正則医院院長

[経歴]
1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。
2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。
20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。
現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。
最新刊『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonでベストセラーに。

新見正則医院ホームページ
https://niimimasanori.com/

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