子どもが勉強を楽しくないといってなかなかやらない・・・そんなときはどんな受け答えをしたらいい?今回は選択理論心理士でもあるつのだデンタルケアクリニック院長、角田智之先生からお話を伺いました。
子どもの「勉強したくない!」に何て答えればいい?
私は、歯科医師+選択理論心理士です。
選択理論心理学では、五つの基本的欲求を満たすために人は行動するといわれています。
[1]生存(病気したくない、長生きしたい、安心したい、リスクを冒したくない)
[2]愛・所属(愛し愛されたい、仲間と一緒にいたい、人とつながっていたい)
[3]力(周りに認めてもらいたい、仕事で卓越したい)
[4]自由(束縛されたくない、自由にやりたい)
[5]楽しみ(学びたい、趣味、人生を楽しみたい)
各欲求には、個人個人の強さのレベルはありますが、必ず持っているものとされています。
その中の、[5]楽しみの欲求にある、”学び、勉強”は本来人間が欲求として備えているものと考えています。
ですので、『勉強はしないといけないもの』ではなく、本来、人は『勉強したい』と考えられています。
以上を踏まえた上で、会話形式でロープレしてみたいと思います。
※小学3年生くらいのお子さんとママの会話で設定しています。
お子さん:どうして勉強ってしないといけないの?
ママ:勉強ってね、しないといけないものじゃないのよ。
お子さん:えー、じゃ、しなくてもいいの!?
ママ:そうよ。するのも、しないのも○○ちゃんが選べるのよ。
お子さん:じゃー、しなーい。
ママ:それも○○ちゃんが選んだことね。でもね、人間って勉強したい生き物なのよ。
お子さん:嘘だー、だって学校のみんな勉強キライって言ってるよ。
ママ:そうよね、○○ちゃんもそうだけど、なんでみんな勉強キライっていうのかな?
お子さん:だって、つまんないもん。遊んでた方が楽しい!
ママ:そうね、ちょっと考えてみて。もしかしたら、なんでキライかっていうのは、先生やママやパパに勉強しなさいって言われてるからじゃない?
お子さん:それもあるかも。
ママ:○○ちゃんもママも含めて、人はね”~しなさい”って言われるのが、すごく嫌なの。そう思わない?
お子さん:そうねぇ、確かに嫌かも。
ママ:そうでしょう。
お子さん:うん。じゃ、勉強しなくていいんだね!やったー!
ママ:そうね。でも、ちょっと考えてみて。もし、もしよ。勉強が楽しかったらする?
お子さん:えー、楽しくないもん。
ママ:そうね、じゃ、こないだ、学校で国語のテストの結果が良かったじゃない?
お子さん:そうだよ、国語好きだから、がんばったもん。
ママ:気分はどうだった?
お子さん:うれしかった。
ママ:テストの成績が良かった嬉しさと遊んでいるときの楽しさに違いはある?
お子さん:うーん、なんかテストの成績が良かった嬉しさは、なんか『やったー!』って感じで、遊んでるときの楽しさは、楽しい!って感じ。
ママ:その二つの嬉しさ、楽しさはどっちの方が気分良かった?
お子さん:うーん、テストの成績かな?
ママ:なんで?
お子さん:テストは先生やママやパパがほめてくれるし、自分でも『やったー』って感じ。
ママ:そうよね。人って勉強すると知らないことがわかる上に、ほめられない?
お子さん:嬉しいかも。
ママ:それは○○ちゃんが国語をちゃんと勉強したからじゃない?
お子さん:うん
ママ:もし、成績は別にして他の教科も勉強できたらどう?
お子さん:嬉しくなるかな?
ママ:かもね。でもね、その嬉しさは、なんで遊んでいるときの楽しさより少し大きいと思う?
お子さん:わかんない。
ママ:それはね、○○ちゃんががんばった分、神さまがくれたご褒美よ。
お子さん:そうなんだ。
ママ:ただ、神さまはがんばった人にしか、嬉しい気持ちのご褒美をくれないの。嬉しい気持ちが大きくなるとわかっていれば、がんばれる?
お子さん:そうだね。
ママ:みんなね、〜しなさいは嫌なのよ。だから、○○ちゃんが自分で勉強してみようと思わない限りは、だれも○○ちゃんに勉強させることはできないの。
お子さん:そっかー。
ママ:ただ頑張った分の嬉しさがくるから、いっぱい頑張ったら嬉しさも大きくなると思わない?
お子さん:そっかー、少し頑張ってみようかな。
ママ:そうね、それも良いかもね。
いかがでしたでしょうか?
これはあくまで一例にすぎませんが、少しイメージが掴めたのではないかと思います。
人は求めているものを得るために行動しますが、そのプロセスに生じる苦痛感情を回避する傾向があります。なので、その先にあるものを考えて、欲求充足したときに得られるものを想像することは有効な手段のひとつかと思います。
[執筆者]
角田智之先生
つのだデンタルケアクリニック院長
歯科医師
日本選択理論心理学会認定選択理論心理士
[プロフィール]
予防歯科と口腔外科、舌痛症診療を中心にした診療を行っています。予防歯科は唾液検査を実施し、患者さん一人ひとりにデータに基づいたオーダーメイド予防プログラムを提供することで、地域における歯科疾患の予防に努めています。
原因不明の舌の痛みを主症状とする舌痛症は心理的要因にて発症するといわれており、メンタルヘルスが大きく関わっていると考えられています。当院は、数少ない舌痛症を診療するクリニックであり、なかでも薬を使わず心理療法のみで改善することに力を入れています。オンライン診療も行っており、患者さんは全国から受診可能な体制を整えています。そのほか、メンタルヘルスに関する相談も行っています。
心理的側面からの身体への影響は計り知れないものがあり、少しでも心理療法を通して、困っている患者さんのお役に立ちたいと願っています。
つのだデンタルケアクリニックホームページ
http://www.tsunoda-dentoral.net/