子育て世代も他人事じゃない?白内障の手術について南大阪アイクリニック院長渡邊先生にお伺いしました。

白内障は手術でしか治せないときいたけど、どんな方法なの?
そんな疑問について、今回は白内障の手術内容について、南大阪アイクリニック院長の渡邊敬三先生にお伺いしました。

働き盛り世代が受ける白内障手術の重要ポイント


白内障は水晶体(レンズ)の中身が濁ってくることによって、視力低下やかすみといった症状が出現します。白内障の手術では見えにくさの原因となる濁った水晶体の中身を取り出せば、すっきりとした濁りのない状態になるのですが、水晶体はピントを合わせる役割(調節機能)を持っています。もし取り出すだけで手術を終えてしまうと、強度のピンボケ状態(遠視)になりますので、水晶体の代わりになるものが必要となります。これが眼内レンズです。水晶体は弾力性のある水晶体嚢という袋に覆われ、さらにその袋はチン氏帯と呼ばれる細い多数の糸のようなもので眼の中に固定されています。

実際の手術では、水晶体嚢の前の部分を丸く切り取り、中身を砕きながら吸い取り、水晶体嚢の中に眼内レンズを固定するという流れになります。クリームパンなどの中身のある丸いパンやドーナツをイメージして頂くと分かりやすいかもしれません。パンの前側を直径のおよそ半分くらいの大きさでくり抜き、中身のクリームをきれいに抜き出し、空間になった部分にレンズを入れるということです。
手術は基本的に日帰り手術となりますが、ご年齢や身体状況などを考え入院で行われる場合もあります。視力はおおむね翌日には回復しますが、進行した白内障や眼の組織が弱い方の場合には回復まで1週間程度かかる場合もあります。
手術費用は保険手術の場合には、1割負担の方で15,000円、3割負担の方で45,000円が目安となります。

眼内レンズの種類について

眼内レンズには単焦点レンズ、老視矯正(多焦点)レンズ、およびそれらに乱視矯正機能を付したものがあります。眼内レンズにはさまざまな種類と度数がありますので、皆さんの眼の状態や手術後の見え方の希望によって、眼鏡を使用せずに見える距離を選ぶことが出来ます。重要なポイントはこの見える距離の選択、眼内レンズの選択です。
この記事を読まれている皆さんはきっと子育てや仕事、家事に忙しい日々を送られていると思います。小さいころから眼鏡・コンタクトレンズ生活を続けている、眼鏡は使ったことはないけれど少し老眼が入ってきてスマホが見にくい、パソコンや書類にピントが合いにくいなど、皆さんには家での過ごし方、仕事、趣味に応じての不都合を抱えて生活をされてきた方もいれば、全く見え方で困ったことがなかった方もおられると思います。
白内障手術は今までの眼に関する悩み事を解消する大チャンスともいえますし、レンズ選択を誤ると悩みが増えてしまうこともあります。
皆さんの手術後の生活がより良くなるために眼内レンズの特徴を知り、自分に合った選択をして欲しいと思います。眼内レンズには単焦点レンズと老視矯正(多焦点)レンズがあり、大まかに言えば焦点深度(ピントの合う範囲の広さ)が違います。

単焦点レンズ:
広く普及しており、日本では90%程度の使用率になっています。単焦点レンズの場合には、焦点深度が浅い、つまりピントの合う幅が狭いので、どの距離にもっともピントが合うようにするかを決めることが重要です。
遠くに合わせすぎるとパソコンやスマホが見えない、近くに合わせすぎると、遠くやパソコンさえ見えない、といった不都合が出る場合があり、皆さんが裸眼で見えると便利だと思うことに優先順位をつけて、焦点距離を選ぶことが重要です。単焦点レンズの焦点深度について、担当医がそれ自体を認識していない場合、遠くにピントを合わせるか、近く(40センチ前後)にあわせるかの二者択一を求められてしまうことになり、皆さんの生活を快適にする機会が失われてしまうこともありますので、詳しい情報はわたしの運営している白内障ラボチャンネルなどの動画サイトも参考にしてみてください。
老視矯正レンズ:
単焦点レンズとの違いは焦点深度がより深い、つまりピントの合う幅が広いということです。レンズの種類には、遠くはとても良く見えるけれど、近くが見える距離は40-50cmまでといったものや、遠くから30cmまでみえますが、なんとなくスッキリ感が少ないものなど、さまざまな種類があります。老視矯正レンズを選択する場合には、手術代金とは別に眼内レンズ代(片目で20-50万円)が別途必要で、各種保険では賄われませんので、ご自分の生活にとって眼鏡やコンタクトレンズへの依存度を減らすことがどれほど重要かを考えて選択すると良いでしょう。
乱視矯正レンズ:
単焦点レンズと老視矯正レンズにはそれぞれ乱視矯正機能付きのレンズがあります。手術後に想定される乱視の残存量(残余乱視量)がおおよそ-1.0D(ジオプター)程度になる場合には乱視矯正レンズを使用する方がスッキリとした見え方になりますが、どの程度の乱視であれば乱視矯正レンズを使用するかは医師の判断によるところが大きいのが現状です。

老視矯正レンズや乱視矯正レンズは、要・不要、良し悪しは医師によっても見解が異なることが多く、情報を集めれば集めるほど、皆さんにとっては『何が本当なの?』と、不安になってしまうことがあるかもしれません。また眼鏡やコンタクトをすれば見えているけれど老眼がしんどくて眼科にいったら白内障はないのに白内障手術で老眼をとりましょうと不要な(リスクが高い)手術を勧められることがあるかもしれません。
白内障手術に関わる技術はとても速いスピードでアップグレードされていくことが混乱の一因であることは間違いありませんが、最新の正しい情報を元に手術を受けられれば、きっと満足度の高い手術が受けられると思います。
手術後の30年・40年の見え方に関わる大事な手術であるという認識をもって手術に臨んで頂きたいと思います。

執筆者

渡邊敬三先生
南大阪アイクリニック院長

畿大学医学部を卒業後、同眼科学教室に入局し、府中病院(現 府中アイセンター)(和泉市)にて勤務。オーストラリア・シドニーでの研究留学などを経て、帰国後は同大学病院眼科にて医学部講師として、白内障外来および角膜・ドライアイ外来を担当する。 2016年より南大阪アイクリニック院長として最新の技術や医療機器を導入し、多数の白内障手術を執刀している。診療のかたわら、オウンドメディア「白内障LAB」やYOUTUBEチャンネルにて白内障や白内障手術の情報を発信している。

南大阪アイクリニック
http://www.shoyokai.or.jp/

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