前回のお話
あやこさん、はるさん、ゆかさんの3人の笑い声を聞きながら、療育施設の保育士まりこ先生は以前はるさんが「あんまりかわいそう扱いされると可愛いはずの我が子なのに愛する自信をなくしてしまう。子ども達に君は可愛いんだよってこと、ママに愛されてることを伝えてあげたい」と言っていたことを思い返していました。はるさんとゆかさんに「可愛いよ!」と言われたゆみかちゃんは照れながらも嬉しそうで・・・。
障害児のママは神様に選ばれたと言われて[39]
「朝日さん、お子さん男の子だったんですね。ごめんなさい。私、勘違いして八つ当たりまでして・・・上から目線なんてひどいこと言った」
自分の勘違いでこれまではるさんの言動に苛立ちを覚えきつく当たってしまったことを謝罪するあやこさんに、
「ううん。吐き出してくれてありがとう。瀬戸さんの気持ち・・・私もなったことあるから」
はるさんは穏やかに言いました。
そして、
「実は私も瀬戸さんが羨ましいんだよ?私はママって一生呼ばれないかもしれないから」
ふふっと笑いながらはるさんにそう言われ、
「あっ・・・」
ハッとするあやこさん。
はるさんは続けて、
「でもね。私やタイを見てかわいそうって思う人がいるのと同時に、五体満足でいいよねって羨む人もいるかもしれない。人それぞれ本当に感じ方は違うから」
「明らかに普通からはみ出した苦しみを持つ子。困っていることが理解されずに苦しむ子。本当にみんなそれぞれで・・・。
その痛みはきっとその人にしかわからない。瀬戸さんの痛みも瀬戸さんにしかわからない。でも・・・」
「あなたを知りたいし仲良くなりたいと思うんだけど・・・どうかな?」
はるさんの言葉が嬉しくてあやこさんの目から涙が溢れます。
そして、
「私とID交換してもらってもいいですか?『はるさん』・・・」
と、はるさんに言いました。
あやこさんに初めて『はるさん』と呼ばれたはるさんは、一瞬驚いてからにっこり笑顔になって、
「よろこんで・・・」
と答えました。
そのとき、
「さぁみんなー、わかばグループ始まるよー!」
まりこ先生がみんなに声をかけました。
「お母さん達は終了時間まで待っててくださいね~」
子ども達が部屋に入っていくと、
「ちょっと休憩できる~」
「私おやつ持ってるよ」
保護者たちはしばしの休息。
「あ・・・」
療育初日のあやこさんが戸惑っていると、
「瀬戸さん今日初めてでしょ?うしろで見学しましょ!」
ゆかさんが声をかけてくれました。
みんながグループ療育の部屋に入っていくと、
「朝日さん」
誰かがはるさんに声をかけました。
続きます
植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中