前回のお話
はるさんの言葉で自分の本当の気持ちに気づくことができたあやこさんに、はるさんは自身のことを話し始めます。障害児を育てていて綺麗な言葉に苦しめられることもあるけれど、人の数だけ価値観があるから今は親切心はありがたく受け取っているというはるさんも、そう思えるまでにずいぶん時間がかかったと話します。そして「あなたはひとりじゃないよ」とあやこさんの手を取りながら言いました。
障害児のママは神様に選ばれたと言われて[36]
「あれ、はるさん今お迎え?今日早いねー」
あやこさん達が療育施設に到着すると、一人の女性がはるさんに声をかけてきました。
「あっはるさんだー。ねーママ、ナナ、はるさんとあそびたーい。ねーねーねーねー。いいでしょ?」
その女性の隣に居たのは、以前ここで会ったときにはるさんと一緒に居たナナちゃん。
(あれはナナちゃん・・・と、もしかしてナナちゃんのママ?)
ナナちゃんをはるさんの娘だと思っていたあやこさんは、そうではなかったことに気づきます。
「ゆかさん、こちら今日から未就学児グループに入る瀬戸さんとゆみかちゃん」
はるさんはナナちゃんのママにあやこさんを紹介します。
「あ・・・よろしくお願いします」
「高橋ゆかです。よろしくお願いします。」
「ナナもっナナもじこしょうかいするー!」
みんなで挨拶を交わしていると、
「ゆみかちゃんゆみかちゃん、あのね!ナナ今日ね!」
ナナちゃんがゆみかちゃんに話しかけます。
それを見てはるさんは
「ナナちゃん、友達になるのマッハだね」
とにんまり。
「あ・・・ゆみか・・・迷惑かけちゃ・・・」
あやこさんがそう言いかけると、
「ありがとうございます。ナナと遊んでくれて嬉しいです」
と、少し申し訳なさそうにゆかさんが言いました。
「そういえば、瀬戸さんはもうはるさんと話してみました?息子さんが小学生だから私もよく相談させてもらってるんです」
「え・・・息子さん?」
ゆかさんの言葉にあやこさんが驚いていると、
「瀬戸さーん」
あやこさんを呼ぶはるさんの声。
「ウチの息子、はじめましてですね。朝日大生、小学4年生。自閉症と重度の知的障害で特別支援学校に通ってます」
はるさんが息子の大生くんを連れてきて紹介してくれました。
「みんなみたいにグループ療育できなくてさ。まだ個人療育なんだ」
よだれで濡れた大生くんの服を気にしながら、はるさんが話します。
「うぅー」
「あ、ごめん。発語なくて挨拶できないんだ~」
大生くんのことを色々教えてくれるはるさんの話しをあやこさんは黙って聞いていました。
その後、ゆかさんに話しかけたあやこさん。
「・・・あの高橋さん、失礼だったらごめんなさい。ナナちゃん問題がないように見えますが・・・なぜ療育に?」
「ああ、そうですよね。ウチはパッと見ではわかりにくい子で・・・」
続きます
植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中