[40完]親が笑っていれば子どもにも安心が伝わる。障害児のママは神様に選ばれたと言われて|植木千尋の育児まんが

前回のお話
あやこさんは勘違いで八つ当たりしていたことをはるさんに謝りました。「人それぞれ感じ方は違うし、その人の痛みはその人にしかわからないけれど、あなたを知りたいし仲良くなりたい」とはるさんに言われたあやこさんは、嬉し涙を流しながら連絡先を交換しました。子ども達のグループ療育が始まると、あやこさんはゆかさんに誘われ見学することに。そのとき、誰かがはるさんに呼びかけて・・・。

障害児のママは神様に選ばれたと言われて[40]



「あっ茂木先生」
はるさんに声をかけたのは茂木先生でした。

「瀬戸さんとお話されたんですか?」

「以前の自分にそっくりで・・・ついおせっかいを・・・」

「いえいえ、初めてここを訪れた時のあなたを思うと感慨深いです」

はるさんが初めてこの場所に来たときのことを思い返しながらそう話す茂木先生。

「エヘヘ・・・その節はどうも」
「いえ本当に昔のあなたに今の姿を見せてあげたい」
ばつが悪そうなはるさんに茂木先生は笑顔を向けます。

「ところであの・・・茂木先生は障害児のママは神様に選ばれたって話聞いたことありますか?」

「・・・そうですね、たくさん・・・」
茂木先生はそう答えた後、ゆっくり話し始めました。

「でも大切なのは真偽ではありません」





「我々は親と子が幸せになる為の選択をしなければならない。でも、どんなことでも喜ぶ人もいれば傷つく人もいる。自分の答えを押し付けてはいけない。答えは人の数だけありますから」

「今の社会は子育てにとって大切な土台となるべき親のケアが見落とされがちです。本当は親にもそれぞれの接し方が必要で万能薬なんて存在しません」
茂木先生の話しをはるさんは穏やかな顔で聞いています。

「ここは療育の場ですが同時に前を向くきっかけになる場になってほしい。でも」

「必ずしも親がそれを受け入れられる心情とは限らない。バリアを解くには痛みを分かち合える存在が必要で・・・」

「『何を言われるか』より『誰に言われるか』が大切な時もあります。なので、障害児子育ての経験を持つ先輩は必要なんです。頼りにしてますよ」
「いやいやいやいや、私なんて」
茂木先生に頼りにしていると言われ照れるはるさんですが、

「でも・・・」


「その人を知るところから始めたいって思うんです」
そう言って微笑みます。

「ゆみかちゃん、じぶんのつくえをつかうんだよー」
グループ療育の部屋では、ナナちゃんが初めて療育に参加するゆみかちゃんに色々と教えてくれていました。

「あっゆみかちゃんのいいなーそれ」
ナナちゃんがそう言いながら見ていたのは・・・

ゆみかちゃんの机に貼られた名前シールでした。
そこには名前の下にゆみかちゃんの大好きなうさぎのおやこのイラストがついていました。

「うしゃぎのおやこ・・・」
嬉しそうに呟いて、すんなり自分の席に座ったゆみかちゃん。

その様子を見ていたまりこ先生は心の中でガッツポーズ!

「瀬戸さんもやがて今の痛みが誰かを癒す時が来るでしょう。それまでは瀬戸さん自身が笑えるように支えていたいのです」
茂木先生は、はるさんにそう話しました。

いつものように「うしゃぎのおや・・・」ママに言おうと振り返ったゆみかちゃんは・・・

嬉しそうな表情ですぐにくるっと前に向き直りました。
ゆみかちゃんが見たのは、楽しそうに笑っているあやこさんの姿でした。

「親が笑っていれば、子どもにもここは安心な世界だと伝わりますから・・・」

[完]
番外編へ続きます
番外編[その後]

植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中

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