こんにちは!読書教育のYondemyです。
皆さんは、本屋さんや図書館でこれらの言葉を見たことはありませんか?
「5年生におすすめ」。「小学校中学年向け」。
ご自身のお子さんがその対象年齢に入っている時、思わず手に取られることが多いと思います。しかしこれらの言葉には、実は大きな落とし穴があるのです。今回は、誰も教えてくれない「○年生におすすめの本」という言葉の本当の意味についてお話しします。
誰のためにケーキを作る?
あなたがケーキ屋さんだとしましょう。それも、日夜美味しいケーキの作り方を考えている、ケーキが大好きな素敵なケーキ屋さんだとしましょう。
世の中の人間は二つのタイプに分かれます。ケーキが好きな人と、ケーキがそこまで好きではない人です。
さて、ケーキ屋さんのあなたは、どちらのタイプのために美味しいケーキを作ろうと思いますか?
ケーキが好きではない人のために、ケーキを作りますか?
それも素敵ですよね。まだケーキが好きではない人を、夢中にさせるようなケーキを作ろうと努力することはとても素晴らしいことです。
しかし、多くの場合、あなたはケーキが好きな人のためにより美味しいケーキを作ると思います。
多くの人は、買ってくれない人のために商品を作ろうとは思いません。
児童書は誰のために作られる?
それでは、児童書は誰のために作られるのでしょうか?
作者はどんな子どもたちを想定して、物語を編むのでしょうか?
作家になるような方はおそらく、小さい頃、自分も読書好きであったことが多いでしょう。
かつて読書が好きだった大人が、今読書が好きな子どもたちに向けて本を書いています。
そして児童書を読んでくれるのは、読書が好きな子どもたちです。
ここに、いくつかの問題もあると私たちは考えています。例えば、小学校三年生向けの本は、小学校三年生が主人公として書かれていることが少なくないのですが、そこで想定されている「小学三年生」の読者の大半は読書が好きな子どもたち、つまり、同世代の中で比較的「読むのが得意な子どもたち」ということになります。
その結果、読書が好きではない子どもたちが「小学三年生」向けの本を読むと、とても難しく感じることが少なくありません。
○年生向けのブックリスト
インターネットが普及した今の時代、検索すればいくらでも子どもにおすすめのブックリストは出てきます。
そこでは多くの場合、小学校低学年、中学年、高学年といったようにおすすめの本が数十冊ほど紹介されています。
しかし、私たちはそのブックリストが完全なものだと思っていません。
低学年向けとして紹介されてはいるものの、読書が苦手な低学年の子にはあまりにも難しすぎる本が紹介されていることはしばしば。
「主人公の年齢が小学三年生」という理由で、小学校中学年向けの本として紹介されていても、実際、目の前の小学三年生におすすめするのは難しいなあという本も珍しくはありません。
ブックリストを作る司書さんにしても、児童書を執筆される作家さんにしても、やはりよく目に入ってくる子どもは「本が好きな子ども」なのではないでしょうか。
本が苦手な子どもにも読んでもらいたい!という思いでブックリストを作ったとしても、どうしてもバイアスがかかり、やや難しいのでは?と思う本が多くチョイスされている。そのような傾向があります。
読書の課題
結局、年齢・学年で一概に「○年生にはこの本がおすすめ!」ということは難しいのです。人それぞれに体の成長の速度が違うように、「読む力の成長」にも個人差があります。
昔は背が小さかった子どもが、高校生になる頃には平均身長よりもずっと背が高くなることがあるように、読む力の成長が遅いからといって決して読む才能がないという訳ではありません。
ただ、その時その時のレベルに合った適切な本を、「読む力を育てるための栄養」として適切に摂取することができなければ、十分に成長することはできないでしょう。
本当は、一人ひとりに合わせて本をおすすめしたり、あるいは、自分で自分のレベルに合った本を選ぶ方法を教えたりする必要があるのです。
本が好きなお子さんであれば、ブックリストを参考にしてある程度難しい本でもグイグイと読みこなせていけることもあるでしょう。しかし、本が嫌いなお子さんが、難しくて興味のない本を押し付けられたら?
「読書は退屈でつまらないものだ」と感じたまま、大人になってしまうかもしれません。
読書は楽しいものです
読書は楽しいものです。全ての子どもたちが潜在的には読書好きだと私たちは考えています。幼稚園や保育所で、読み聞かせを始めた途端に、遊びを止めて子ども達が先生のもとに集まって行くあの風景を思い出してみてください。
しかし、その「本を読むことの楽しさ」を正しく伝えることは、簡単ではありません。
初めて自転車に乗った日のことを思い出してみてください。
ほとんど全ての人は練習をすれば自転車に乗ることができるでしょう。一方で、補助輪無しに自転車にいきなり乗れる人はいますか?
読書家として、本という、どんな世界にも羽ばたいていける乗りものを自由に乗りこなすことが出来るようになるためには、時として補助輪が必要なのです。そしてその役割は、かつて周りの大人たちに委ねられていました。しかし、それでは限界があるのもまた事実です。
私たちYondemyは、全ての子どもたちにとっての、”補助輪”になることを目指しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。