2.進路の選定それに向かって努力することに対して、周囲の環境やサポートは極めて重要である
将来の進路を決定するにあたり、環境因子というのは非常に大きな要素です。
前述した通り、私は進路を決定するにあたり圧倒的に情報が不足していました。医師になりたいと考えることは簡単です。しかし具体的にどのくらいの学力があれば医師になれるのか、どうやって勉強すれば良いのかなど、当時の私には知る由もありませんでした。
近所や周囲の友人にも医師になった人はいませんでしたし、私には良き相談相手がいませんでした。今思い返すと、これはとても孤独でストレスフルなことだったと思います。まさに「五里霧中」といったところです。
医師を志すことが難関で、しっかりと勉強しなくてはいけないということを人生のもう少し若いうちから知っていれば、早めに長期的なプランを立てることだってできたはずですし、自分で決めた目標を修正することもできたはずです。
私はこの時初めて「周囲に同じ医学部受験を目指している同級生がいればどれだけ心強いか」と思いました。そのような同級生と人生の早い段階で出会うには、もう少し早いうちから勉強して、そんな同級生がたくさんいる学校に進学していればよかったとも考えました。
具体的な進路や目標が定まっているかどうかはさておき、中高生の段階から進学校を受験し勉学に勤しむというのは、ある意味このような問題を解決するには理にかなった方法です。
というのも、早い段階で学力的に同レベルの同級生、先輩、後輩と共に生活することで自分一人だけ情報弱者に陥ることを未然に防ぐ可能性が高いですし、全員同じ方向を向いているので、少なくとも向こう数年は学業に対するチベーションを高く維持できます。切磋琢磨する優秀なライバルの存在もまた、自身のレベルアップには欠かせない要素です。
もちろん、勉強以外にも同じことがいえます。例えば将来プロスポーツ選手になりたいと思った子どもが一人黙々と練習するよりも、地元のスポーツチームに入ってライバルや仲間と共に精進した方がレベルの高い練習ができますし、仲間やチームプレイの大切さに気づくことができます。
幼少期からの身体づくりのノウハウを知っている大人や、プロスポーツ選手になるためのノウハウを知っている大人と触れ合う機会もあるかもしれません。私が経験した「無知であるが故のストレス」は多少なりとも改善されるはずです。
私は決して「子どもには幼少期からエリート教育をさせるべき」と言っている訳ではありません。あくまで進路決定に関する「五里霧中」を、人生の早い段階から解消してあげられるような環境づくりが重要ということです。
その方法は進学校に通わせる以外にも無数の選択肢があります。さまざまな選択肢の中から、子どもにとって有益な環境整備をしてあげることこそ、大人にとって重要な役割であると考えます。