1.進路を決定するのは、自発的であることがモチベーション維持に深く関わる
私が人生で初めて受験をしたのは、もう25年も前の話、高校受験の時になります。当時はインターネットやS N Sが普及しておらず、片田舎であり図書館や本屋にも疎遠であったため、進路の情報を集めることも一苦労でした。
結果、私の人生初の進路決定はまさに担任教師の言いなりでした。現在の学力で合格しそうな高校をピックアップしてもらい、地元の公立高校1本に絞って受験しました。
この時私には2つの安心感がありました。一つは、学力的に合格はほぼ間違いないということ。もう一つは、地元なので同級生や先輩方も普段から慣れ親しんだ仲の友人ばかりだったという安心感です。自分の将来の進路なんて全く頭にはありませんでしたし、知るよしもありませんでした。「将来のことを考えるのは杞憂で面倒なことだから後回しにしよう」という気持ちが強かったのです。
自発的に進路を選んでいない私にとって、高校生活はあまり刺激のない空虚なものに成り果てました。高校を卒業後、あてもなく上京した私にとっても空虚な日々の連続でした。しかしそんな私の空虚な生活が一変する出来事が訪れます。それは、人生で初めて自発的に自分の進路を決定したということに他なりません。
きっかけは下宿先で足を怪我し、病院を受診し医師の診察を受けたことです。そこで初めて私の中で医師になりたいと思う気持ちが芽生えたのでした。自発的に「何かになりたい、何かを目指したい」と思ったのは、この時が初めてでした。
何かの目標に向かって初めて自発的に行動し始めた私は、以前の空虚な私とは違い、将来のことを考えるのが杞憂で面倒だなんて微塵も感じなくなりました。
もちろん受験勉強は大変で苦労した記憶があります。しかし人生で初めて自ら目標を立てて挑んだ受験は、私にとって大きな挑戦であり、高いモチベーションを保つことができました。
これが能動的に決定した進路ではなく、受動的に誰かから決められているものだとしたら、少なくとも私は相変わらずつまらない日々を送り、モチベーションが維持できなかったと感じます。
受験は幸い運よく合格することができましたが、仮にこの結果が不合格であったとしても、私は納得してその結果を受け入れることができていたと思います。それもおそらく、私が自発的に端を発したからに他なりません。
医師の中には、自発的に医師を志した人ばかりではありません。ご両親が医院を開業しており、それを継ぐために医師を志したという人も中には存在します。その人達の進路に対するモチベーション維持はとても大変だったとよく聞きます。
常に「本当はもっとやりやいことがあるのに、これで良いのだろうか?」と自問自答しているのです。私は何の柵もなく自ら医師を目指すことができ、幸いにも現在まで自分のやりたいことを仕事にできているので、今でもとても幸せに感じています。
何かを志すときに、その動機なんて何でもいいと私はいつも思っています。しかしそれを叶えるためにはモチベーションの維持は非常に重要です。
いつか誰もが、遅かれ早かれ自分の進路を決定しなくてはなりません。その時、「本当に最後までそれを納得してやり遂げることができるか?」とぜひ考えてみてほしいのです。それが自分で決めたことであれば、きっと最後まで諦めずにやり切ることができるでしょうし、結果に対して納得して受け入れることができると思います。