前回のお話
自閉スペクトラム症と中度知的障害をもつ4歳の女の子ゆみかちゃんを育てるママのあやこさんは、周囲からの悪意のない言葉に苦しみ親としての自信をなくしていましたが、療育施設で出会った同じ境遇の先輩ママはるさんに少しずつ心を開き、自信と笑顔を取り戻しました。今回は、そんなあやこさん達のその後のお話です・・・。
障害児のママは神様に選ばれたと言われて[その後]
「ぷくく・・・いいの撮れたね。現行犯!!」
「奮発して買ったブランドのリップですけどねコレ」
あやこさんの高級リップで自分の顔に落書きするゆみかちゃんの写真を見せながら笑い合うあやこさんとはるさん。
「でも以前はこんな時イライラして写真撮ろうなんて思わなかったなぁ・・・」
少し前の自分を思い返しながら呟くあやこさん。
「実はね・・・私、前はゆみかのことでダンナとケンカばかりしてたんです。口だけ立派なことに腹立っちゃって」
ご主人との関係にも変化がでてきたとあやこさんは話します。
「でも最近はイラつかずに言いたいことハッキリ言えるようになってきて・・・積極的にゆみかのお世話を頼んだら、お互いに『一緒に遊ぶの楽しい』って気づいたみたいで、今じゃパパ『ゆみかは嫁にやらん!』なんて言うようになったんですよ」
嬉しそうに話すあやこさんを見て、瀬戸さん元気になって良かった・・・と感じながら、はるさんは
「なーんだ」
と言って、
「ロクでもないダンナだったら正座させてみんなで囲んで説教してやろうと思ったのに・・・ざんねん。いいダンナさんじゃん」
「え、何それ面白そう。やりましょう!!アハハ」
冗談を言いながら楽しそうに話す2人。
「私・・・以前の自分じゃ信じられないくらい穏やかな気持ちです。それってきっと自分の中に余裕ができたからなんでしょうね」
顔を上げ、穏やかな表情で話すあやこさん。
「受け止めてくれる人ができたから。何より今は素直にゆみかが可愛い・・・」
ゆみかちゃんを抱きよせながらあやこさんは言います。
すると、
「おーい。あやさん、ゆみかちゃん。早くしないと始まるよー」
ゆかさんとナナちゃんが声をかけてくれました。
「わー待って待って。いま行くー」
慌ててゆみかちゃんを連れてグループ療育の部屋に向かうあやこさんは、はるさんを振り返って
「はるさん!私ここに来て本当に良かった」
そう言ったあやこさんの表情は心からの笑顔。
前を向いて笑えるようになったあやこさんを見て、
「忘れないで。あなたはひとりじゃない」
心の中でそう呟くはるさんでした。
植木千尋
ブロブフィッシュ似の主婦です
知的障害を伴う自閉症児を子育て&溺愛中