どうして勉強しなくてはいけないの?と聞かれたらあなたはどう答えますか?今回は株式会社J-エデュケーション代表取締役、寺田昌嗣さんにお答えいただきました。
どうして勉強しなくてはいけないの?と聞かれたらどう答えますか?
お子さんから、こういう純粋な、あるいはちょっとネガティブな気持ちで反抗したくなる気持ちからの疑問を投げかけられると困りますよね。
教育学を研究しながら子どもたちへの学習指導に携わっている身としては、こんなふうに考えています。ご自身の言葉に置き換えながらお子さんに語ってみてください。
○○ちゃん(あなたのお子さん)の大好きな芸能人とかスポーツ選手って誰がいる?
そういう人たちってね、多分「才能」もあったと思うの。○○ちゃんもそうなんだけど、子どもたちは皆、誰でもたくさんの宝物を神様からもらって生まれてくるんだよ。
でもね、どんな宝が眠っているかは、いろいろ体験していく中でしか分からないの。
もし○○ちゃんが「これが好き!」って思うものと出会ったら、それを一生懸命に練習すると思うんだよね。そして、さっき挙げてくれた芸能人とかスポーツ選手も、たくさんたくさん練習してきたんだよ。
動画クリエーターさんとか漫画家さんとかだったら、いっぱいいっぱい本を読んで勉強してるんだって。スポーツ選手もね、本をたくさん読むんだってさ。
そうやって本を読んだり、勉強したり、練習したりしていくと、自分の中に眠っていた宝が表に出てきて輝き出すんだよ。勉強とか練習って、昔から「その子の中に眠る宝物を掘りおこす作業」って言われてきたんだ。
何で勉強しなくちゃいけないかっていうと、子どもの頃にいっぱい脳みそを鍛えて、いっぱい言葉とか考え方を入れておかないと、何か、例えば歌とか踊りとか芸術とかスポーツとか・・・そんな何かを学ぶ時に、それが理解できなくなっちゃうからだよ。だって、体育でも音楽でも先生たちは言葉で説明するでしょ。やってみせるけど、言葉で説明もするよね。
社会に出て活躍するための練習とか勉強って、もっともっと難しい話とか説明があるんだよ。
それを理解できると、自分の中の宝が輝き出すし、もっともっと世の中のたくさんの人たちに喜んでもらえるようなものになるの。
だからね、学校の勉強って、自分の中の宝がまだ分からない人が、どんな宝が眠っているか見つけるためにするものでもあるし、いつか自分の中の宝に気づいた時に、ちゃんと輝かせられるように練習したり、自分で勉強したりできるようになるための練習でもあるんだ。
○○ちゃんは、まだ自分の中の宝が何か分からないかも知れないし、分かっていてもテレビで見ている芸能人たちみたいに、世の中の人に喜ばれたり、すごい仕事をしたりできないでしょ?
だから、いつか自分の中の宝を見つけたときに、ちゃんと輝かせられるように、今から準備をしておくんだよ。それが学校とかおうちでの勉強だって思って。
いかがでしょうか?
日本では「教育」というと「先生が子どもに与え、授けるもの」と考えられがちです。
しかし、英語のeducationという言葉は、ラテン語で ex-ducere という言葉からきていて、これは(人の内側に眠っている宝を)「外に(ex)-引き出す(ducere)」という意味なんです。
子どもたちの中に眠る宝は、親から受け継いだDNAと、家庭や社会で経験したこととが相俟って、次第に明確な輝きのある形になっていきます。
親としては、その眠れる宝を信じて「応援」に徹してみてはいかがでしょうか。
ご自身の経験からも分かると思うのですが、子どもは納得していないことを厳しく言われたところで反発するか、効いたふりをするだけで終わります。むしろ、子どもの中の「お父さん、お母さんに喜んでもらえるから頑張ろう、応援してもらえるから応えよう」という気持ちを引きだしてやるのが効果的です。
そのがんばりは、やがて勉強の楽しさと結びつき、高学年に上がる頃には「勉強が楽しいから勉強しよう」に変わっていくものですし、そう変わるように導いてやるのが親の務めだと思って間違いありません。
それから、子どもが「勉強って楽しい!」と思う原動力のとても重要な要素として「がんばった分、できるようになった」という経験が必要です。
「同じ漢字をノートに何度も書き写す」とか「国語の教科書を機械的に音読する」などは学習効果の上がらない典型的な悪い勉強法です。そういう勉強をしていると、どうしても「疲れるだけで、テストでいい点が取れない」みたいなネガティブな反応になりがちです。
一度、親子で大型書店の「勉強法書籍コーナー」などに出向いて、やって楽しそうな勉強法の本を探してみるのもいいかもしれませんね。
[執筆者]
寺田 正嗣
[プロフィール]
1970年、福岡生まれ。名古屋大学(法)卒。元福岡県立高校教諭。
現在は教育事業を営む傍ら、九州大学大学院(博士課程)に在籍し読書教育と学習法の研究に勤しむ。
教職在職期間は8年と短期間ながらユニークな授業が評判となり、全国紙一面に授業が紹介されている(1998年元旦・朝日新聞全国版)。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究してきた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。
その効果の高さから、進研ゼミの特集号の監修をはじめ雑誌等の取材も多い。また速読法は私立大学の通年授業として採用された実績もある。
著書には10万部のベストセラー書『フォーカス・リーディング』等がある。
株式会社J-エデュケーション
https://www.kotonoba.jp/