爪を噛んだり、指しゃぶりしたりするとどんなデメリットがある?そんな疑問に、医療法人社団龍生会Teoデンタルオフィス理事長 小松 裕先生からお話をお伺いしました。
爪を噛むクセや、指しゃぶりをすることは、さまざまなデメリットがあります。
歯科医療においても爪を噛むことや指しゃぶりをすることにはとてもリスクがあります。
歯科医院を訪れる患者さんは赤ちゃんから高齢の方までさまざまな年齢層の方が来院されます。
そして、爪を噛む人は新生児、幼児、小児から成人までいますし、指しゃぶりは中学生まで、相談されることがあります。
成人では、爪がなくなり、噛めなくなるまで噛んでしまう人がいます。
実際に爪を噛む方や指をしゃぶる方にはどのようなデメリットがあるの?
(1)歯並びが悪くなり、上顎骨の変形が起き、出っ歯になってしまう。
上顎骨の変形は歯列矯正治療で治せなくなってしまうほどの人もいます。子どもの骨は柔らかいので継続した力を加えると変形してしまいます。(首長族の首を長くする原理と似ています)
(2)爪がなくなることで、物がつかめなくなり、袋を開けることができなくなる。
機能的不全が起きます。
(3)爪指が傷つき感染症や指から出血が絶えずしている。痛みもでる。
(4)爪噛み、指しゃぶりは口腔内の感染、特に口蓋扁桃のアデノイドの病原体の感染により肥大が誘発され、アデノイド増殖症になる可能性が高くなる。
*アデノイド増殖症は、アデノイド顔貌やロングフェイス症候群ともいわれものです。口蓋扁桃のアデノイドが感染で肥大して、鼻呼吸ができなくなり、口呼吸をします。口呼吸により、直接アデノイドに冷気や大気中の汚染物質が触れることにより、さらにアデノイドの炎症と肥大が悪化・継続して成長期の子どもの顔の形成に悪影響を与えます。
(5)指しゃぶりにより指にタコができ、指の形が悪くなる。
(6)成人の方の場合、爪がなくなってしまうまたは、ほとんど生えてこなくなることもある。(退行性変化)
なぜ、指しゃぶりをしてしまうの?
人はお母さんのお腹の中にいる時から、指しゃぶりをしています。これは産婦人科での3Dエコーで見ることができます。
乳幼児の指しゃぶりはこの名残りで、リラックスするためにしているといわれています。
爪噛みもリラックスやストレス発散するためにしているといわれています。動物は物を噛むことでリラックスになることもあります。ネズミは木の枝を噛むことでストレス解消していることが実験でわかっています。
新生児や2歳ぐらいまでの乳幼児の指しゃぶりは、問題ないですが、2歳になったらそろそろ指しゃぶりをやめさせたいです。
改善するにはいろいろありますが、年齢により対応が変わります。
(1)指に苦いマニキュアを塗る。
2.3歳児はおしゃぶりにする。2歳児ぐらいになるとおしゃぶりはとても効果があります。口呼吸の改善にもつながりとても良いものです。
(2)睡眠時にする場合は、手袋をする。
(3)子どもの場合は砂場遊び、泥遊びなど手を使い手が汚れる遊びをする。
中学生以上の方は手が汚れる土いじりなどの園芸、農作業、指を大切にするピアノなどのお仕事や趣味をする。
(4)指しゃぶりをすると歯並びが悪くなる絵本などを読んであげるなどをして、指しゃぶりのデメリットを伝える。
(5)指しゃぶりや爪かみをすると指が腫れて痛くなることを体感して、説明してあげる。(我が子はこれでうまくいきました)
(6)爪を噛みたくなったら、ガムなどを噛むようにする。中学生以降も爪噛みする人に有効です。
爪の役割とは?
爪は指先を保護する目的があり、ドアに指を挟んでしまったり、指に物がぶつかったりした時に骨折や切断のリスクから守ってくれています。
爪がなくなると指に力が入らなくなり、物がつかめなくなり、袋を開けることもできなくなります。
指先はその人の性格や生活を表すものと見られてしまうことがあります。名探偵シャーロックホームズは指先でその人の人柄を当ててしまいます。
また女性にとって指先はとても美しく見える部分の一つ。綺麗な爪や指でありたいものです。
私たち歯医者は指先にはとても気を使います。治療において、できるだけ器具で行っていますが、グローブを装着して口腔内に手指を入れなくてはいけない場合もあります。ですから衛生的で綺麗な指先を心がけています。
爪噛みや指しゃぶりを完全になくす方法はありませんが、小学生以上の方の改善はデメリットの理解と爪の大切さを理解してもらうことが1番だと思います。
執筆者
小松 裕
医療法人社団龍生会ティオデンタルオフィス理事長
松本歯科大学卒業
鶴見大学臨床研修医
2011年ティオデンタルオフィス開業
かみ合わせ治療を中心に成人矯正から小児矯正、インプラント、レーザー治療、親知らず抜歯、口臭の改善、歯科金属アレルギーなど総合的歯科診療に取り組んでいます。
小臼歯は機能的に大事な働きをしている歯であり、小臼歯を抜歯しない矯正治療をしています。
歯並びの気になるお子さまも、無計画な経過観察するのではなく、顎関節や顎骨など悪い方向に成長しないように治療の必要性を見極めて、症例に応じて適切な時期に必要な治療の介入をしています。
患者様が将来、できるだけ歯のことで困ることがないよう、目先の事や見た目だけ優先した治療をしないよう患者様を家族の一員のように考えて治療しております。
ティオデンタルオフィス
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