「爪を噛むと歯並びに影響が出るって本当?」
歯並びに影響を与える行動について気になる方も多いのではないでしょうか。今回、あかまつ歯科クリニックの院長、赤松佑紀先生にお話を伺いました。
歯並びに影響を与える癖や行動、疾患にはどんなものがある?
歯並びに影響を与える癖や行動、疾患には、以下のようなものがあります。
指しゃぶり:小さい子どもが指をしゃぶると、前歯が前に出てしまうことがあります。これにより、開咬(前歯が噛まずに開いている状態)や出っ歯になるリスクが高まります。
舌の突き出し癖:舌を前に突き出す癖があると、前歯が押し出され、開咬や歯並びの乱れが生じることがあります。
口呼吸:口で呼吸する癖があると、顎の発達や歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。特に上顎が狭くなることがあります。
頬杖をつく:頬杖をつく癖があると、顎に偏った力がかかり、歯並びが歪む原因になることがあります。
爪を噛む:爪を噛む習慣は、歯に不要な力をかけるため、歯並びや咬み合わせに影響を与えることがあります。
硬いものを頻繁に噛む:氷や鉛筆などの硬いものを頻繁に噛むと、歯や顎に負担がかかり、歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。
歯ぎしり:歯ぎしりや食いしばりの癖があると、歯がすり減ったり、歯並びに影響を与えることがあります。
アレルギー性鼻炎:アレルギー性鼻炎により鼻が詰まり、口呼吸が習慣化すると、上顎が狭くなり、歯並びが乱れる原因となることがあります。口呼吸によって舌が適切な位置に置かれなくなるため、歯や顎の発達に影響を与える可能性があります。
慢性副鼻腔炎:慢性副鼻腔炎などの耳鼻科疾患があると、鼻呼吸が困難になり、口呼吸が増えることがあります。これにより、顎や歯列に悪影響を与える可能性があります。
扁桃腺肥大やアデノイド肥大:扁桃腺やアデノイド(咽頭扁桃)が肥大すると、気道が狭くなり、口呼吸が増えることがあります。これにより、前歯が前に押し出される(出っ歯)や、顎の成長が不均衡になることがあります。
耳鼻科関連の炎症や感染:耳や鼻の慢性的な炎症や感染は、咀嚼や飲み込みの習慣に影響を与えることがあり、それが歯並びに影響を与えることがあります。
アレルギーによる口腔内の炎症:アレルギーが原因で口腔内に炎症が起こると、舌や頬の筋肉の緊張が変わり、これが歯並びに影響を与えることがあります。
爪を噛む習慣による影響と改善方法
特に「爪を噛む習慣」については、以下の影響が考えられます。
歯の摩耗や損傷:爪を噛むことで前歯に過剰な力がかかり、歯が摩耗したり、欠けたりするリスクが高まります。
歯の移動:爪を噛むと、前歯に持続的な圧力がかかり、時間とともに歯が移動して歯並びが悪くなることがあります。
噛み合わせの問題:繰り返し爪を噛むことで、歯の位置や噛み合わせがずれてしまう可能性があります。これにより、噛む力のバランスが崩れ、顎関節に負担がかかることもあります。
歯周組織への影響:爪を噛む際に歯茎や周囲の組織に傷がつくと、炎症や感染のリスクが高まります。
爪を噛む癖は、歯や口腔全体の健康に悪影響を与える可能性があるため、できるだけ早くこの習慣をやめることが推奨されます。
爪を噛む習慣を改善するために以下の方法が考えられます。
(1)意識して行動をコントロールする
・爪を噛むきっかけとなる状況や感情(ストレス、不安、退屈など)を特定し、そのトリガーを避けるか、他の方法で対処します。
・手を使う活動(ストレスボールを握る、ペンを回すなど)を増やし、爪を噛む衝動を抑えることができます。
(2)爪に意図的な変化を加える
・爪に専用の苦味成分が含まれたマニキュアを塗ると、爪を噛む際の味が不快になり、習慣を断つ助けになります。
・爪を短く切ることで、噛む爪が少なくなり、習慣を減らすことができます。
(3)ストレス管理
・瞑想、深呼吸、ヨガなどのリラックス法を取り入れることで、ストレスや不安を軽減し、爪を噛む衝動を和らげることができます。
(4)ポジティブな強化
・爪を噛まなかった日数をカレンダーに記録し、一定期間を達成したら自分へのご褒美を用意するなど、ポジティブな強化を取り入れます。
・周囲の人に協力を頼み、爪を噛みそうになったら注意してもらうのも効果的です。
(5)専門家のサポート
・爪を噛む習慣が深刻な場合、カウンセリングや行動療法などの専門家のサポートを受けることも考慮しましょう。
習慣を変えるには時間がかかることがあるので、焦らずに取り組むことが大切です。
歯科医院でのアプローチは、爪を噛む習慣の深刻さや原因に応じて個別の対応になるため、今回は割愛いたしますが、爪噛みの週間が続くようでしたらまずは歯科医に相談して、最適な治療法や対策をご相談ください。
執筆者
赤松佑紀
あかまつ歯科クリニック院長
博士(医学)
顎咬合学会認定医
一般社団法人一隅会理事
朝日大学卒業後、京都府立医科大学歯科で研修医として入局。
その後、京都府立医科大学大学院感染免疫病態制御学大学院に進む。
そして大学院後、京都府立医科大学大学院医学研究科歯科口腔科学助教(併任)と京都府立心身障害者リハビリテーション病院 歯科医長として過ごし、地元神戸であかまつ歯科クリニックを開業。
メディカルトリートメントモデルと呼ばれる歯科医療モデルで、予防歯科を基盤として全ての診療に幅広く従事している。
現在は、全国的に予防歯科医療を広めていくために、一般社団法人の理事として奮闘している。
あかまつ歯科クリニック
http://akamatsu-dental.jp