【後編】勉強しなさい!と言ってもなかなか聞いてもらえない・・どうすれば?全米プロフェッショナルスピーカー協会理事信元さまにお伺いしました。

前回の話

勉強をしなさい!と言うけれど、なかなか聞いてもらえない・・・そんなときは、コミュニケーションの方法を見直してみるのもいいかも?今回は、全米プロフェッショナルスピーカー協会理事でもある、ブレイクスルー・スピーキングのリップシャッツ 代表取締役 信元夏代さんに娘さんとの体験を交えてお話しいただきました。前後編のうち、今回は後編です。



良い質問のカギは2点

良い質問とは、「相手が自分から進んでそのことを考えて答えたくなり、かつ、答えた先に気付きや行動がある質問」。軽すぎず重すぎず、相手から良い答えを引き出せる、絶妙な質問です。自分にとっても相手にとっても実りの多い質問です。

ここで、良い質問に対して、しっかりと回答が返ってくるためにカギとなるのは2点あります。
まず第一に、「気づきを与える」という点です。
最も気づきが得られるのは、普段から考えている内在化した質問の近くにあるが、盲点のようになっていて、そのような観点からは考えたことのない、というような質問です。

相手が子どもであっても、いつも言われていること(上図の一番内側の〇)を問われたら、「またか」と反抗的な反応しか返ってこないはずです。でも、全く接点がないようなこと(上手の一番外側の〇)を問われたら、「知らない」「自分には関係ない」とスルーされてしまうでしょう。いかに真ん中の〇を見つけるか、がカギです。

2点目は、質問をする前に、安全でオープンな環境をつくってあげる、ということです。せっかく良い質問をしても、「こんな風に答えたらまたお母さんに怒られるんじゃないか」と警戒してしまっては、気づきにつなげることはできません。
まずは、「(お子さんの名前)は、〇〇、って感じたんだね」「(お子さんの名前)は〇〇だと思ったんだね」、のように、子どもの気持ちを承認してあげましょう。そうすることで、「あなたの気持ちを受け止めたよ、ジャッジしないよ、だから安全でオープンだよ」というメッセージを送ってあげるのです。そして、会話の全体でも、子どもから出てきたことを、復唱したり、要約したりしながら、「受け止めた」というメッセージを伝えてあげましょう。

これを意識しながら、娘に積極的傾聴をした結果、こんな会話に発展しました。
娘が宿題を提出するのを忘れ(また・・・)、学校の成績の規定により、20ポイントが引かれたときの会話です。

自分からやるように(今のところ)


私 「宿題未提出だったね。どうした?」
娘 「この宿題があったって知らなかった」
(ここで普段なら私は、「知らなかったってどういうこと?ちゃんと確認しなさい(怒)」となる・・・が、ここはガマン!)
私 「知らなかっんだね。」(承認)
   「みんなも知らなかったの?」(自分自身から周りのクラスメートにフォーカスをシフトする質問)
娘 「ううん・・・」(この時点で、先生のせいなどではなく、自分が確認しなかっただけだ、と認識)
私 「みんなはどうやって宿題があるって知ってたの?」(解決方法に一歩近づける質問)
娘 「学校のアプリ見たら書いてあった」(ここを確認すればよいだけ、とう解決方法が簡単に出た)
   「でも先生は授業では言わなかった」(が、やはり自己防衛に走る)
(ここで普通なら私は、「あなたが聞いてなかっただけなんじゃないの?!(怒)」となるが、更にガマン!!)
私 「そっか先生は言わなかったんだね」(受け止めた)
  「でもアプリには書いてあったってことは、先生は、アプリにも書いてあることをわざわざ言ったら、2度も同じこと言うみたいな感じになるようね。知ってることをもう一回言われたら、どう感じる?」(考えを深め、自分事として考えてもらう質問)
娘 「やだ」
私 「だよね」(受け止めた)
   「じゃあ(娘の名前)は今晩からはどうする?」(行動につなげる質問)
娘 「アプリ見る」
私 「いいね!」(承認)
  「じゃあ、アプリを見るのを忘れないようにするにはどうしたらいいと思う?」(視点を横に広げ、オプションを考えさせ、自分の決定したことに責任を持たせる質問)
娘 「・・・うーん・・・携帯にアラートつける」
私 「携帯にアラート!いいじゃない」(承認)
  「じゃあ今やっとこう!」(行動につなげる)
娘(早速携帯のアラートを設定)

この会話からまだ1週間半ですが、自分から宿題を確認し、忘れないように提出するようになりました。今のところ・・・!!
「積極的傾聴」は、簡単なようで、実は難しいものです。
相手の話を聴きながら情報を整理し、どこの情報を更に掘ると最も気づきを与えられるのか、同時進行で脳内で分析しながら次にどんな質問をするのかを瞬時に選択していく、という力が必要です。自分自身の状態も整え(ホルモン!!)、自分の中の枠を外した思考を鍛えていくことも大切ですね。

[執筆者]

信元夏代
ブレイクスルー・スピーキング代表

[プロフィール]
ニューヨークを拠点とする事業戦略コンサルタント、プロフェッショナルスピーカー、グローバルプレゼンコーチ。
早稲田大学商学部を卒業後ニューヨークに渡り、伊藤忠インターナショナルの鉄鋼、紙パルプを経てニューヨーク大学でMBA取得。マッキンゼーでコンサルティングの経験を積み、起業。国際スピーチコンテストではニューヨークの強豪を勝ち抜いて地区大会5連覇、TEDxTalkへの登壇などを経てプロスピーカーに。全米で異文化コミュニケーションの基調講演登壇をしている。2021年6月には全米プロスピーカー協会ニューヨーク支部初のアジア人理事に就任。
戦略コンサルならではの分析力と現役プロスピーカーならではの実践力で、企業トップからママプレナーまで、ブレイクスルーを促す、「相手を動かすプレゼン術」を指導している。

ブレイクスルー・スピーキングホームページ
ブレイクスルー・スピーキング

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事