慢性的な頭痛(片頭痛)の対応
慢性的な頭痛の場合、多いのが「片頭痛」です。片頭痛の原因は最近になって解明されてきており、「三叉神経」が原因と言われています。三叉神経は顔や頭の中の感覚を司る神経で、これはちょうど「火災報知器」のように危険を感じ取るアンテナの役割を果たしています。ふだんは静かに見張っていますが、
・寝不足や過眠・水分不足や低血糖(長時間の空腹)
・強い光・におい・気圧の変化
・試験や運動会前等のストレス
・チョコレートやチーズ、スナック菓子など特定の食べ物
といった刺激が重なると スイッチが急にオンになります。オンになると、三叉神経の端から『CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)』というタンパク質が放出され、硬膜で炎症がおきてズキンズキンと脈打つ痛みがおこると言われています。頭痛以外にも光や音に過敏になったり、吐き気が出たりするのは、この炎症で感覚が一時的に研ぎ澄まされるためと言われています。
片頭痛には遺伝的になりやすい体質がありますので、ご両親などが片頭痛持ちの場合は特に注意が必要です。とはいえ、発作の誘因をなるべく避ける、すなわち 「睡眠・食事・水分をととのえる」、「強い光や音を避ける」、「ストレスをこまめに発散する」 ことを徹底することで、頻度を減らすことができます。
どのような時に片頭痛になりやすいかを把握することも大切ですが、意外と本人は気づかないものです。外来では「頭痛日記」を付けてもらうことで、患者さんも私たち医師も把握できるように心がけています。前日に寝不足ではなかったか、特定の食事を食べた後にいつも起きていないかなどに注意をしていただけると良いかと思います。
軽い片頭痛で生活習慣のみで改善すればよいですが、繰り返すようでしたら病院を受診いただくのが良いと思います。片頭痛に対する痛み止めとしてはアセトアミノフェンやイブプロフェンというお薬を頓服していただくことが多いですが、飲みすぎにも注意が必要です。既往などによって他の薬と使い分けることもありますので、主治医の先生とご相談ください。また、片頭痛発作を予防するための薬も何種類かあります。月4回以上頭痛がある場合や日常生活に支障をきたしている場合は予防のお薬も効果的です。受診の際は頭痛外来に対応している小児科や脳神経内科・外科を受診ください。
頭痛は甘えではない
最後に、ご家庭で大切なのは、「頭痛は甘えではない」ということです。大人の片頭痛の患者さんでも同じですが、お子さんの場合特に、「仮病じゃないか」「学校を休みたいから言っているんじゃないか」という目線で見られてしまうことがありますが、これは大きな誤解です。頭痛の特徴が片頭痛と合致している場合はお子さんの訴えを肯定し、生活調整と早期の頓用治療で『つらさを短く完結させる』ことが大切です。
なお、慢性的な頭痛と思っていても、毎日のように頭痛が続いたり、悪化傾向にある場合や、手足の麻痺や歩行障害など神経症状がでてくるような場合は、頭の中の病気に注意する必要があります。脳血管の異常や脳腫瘍などのこともありますので、早めに脳神経外科を受診され、脳MRIなど適切な検査を受けることを推奨いたします。
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