トゥレット症候群って知ってる?チック症との違いと家庭での対応を精神科医が解説

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突然声が出たり体が勝手に動いたりするトゥレット症候群。よく聞く「チック症」とは何が違い、どう付き合っていけばよいのでしょうか?症状の特徴や周囲の関わり方について、大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック院長飯島慶郎先生に伺いました。

多くは目のまばたきから始まる

「うちの子、目をパチパチさせるのが止まらないんです」
子どもの心を診ていると、この相談をよく受けます。続けてこう聞かれます。「叱ってもやめません。わざとやっているのでしょうか。私の育て方が悪かったのでしょうか」と。
先にお伝えします。わざとではありません。育て方のせいでもありません。
チックは、本人の意思だけで自由に止められるものではありません。ただし、短い時間なら抑えられることもあるため、まわりの目には「やめようと思えばやめられるはずだ」と映ってしまいます。子どもは、この誤解にいちばん苦しみます。
もうひとつ、よくいただく質問があります。「トゥレット症候群と言われました。ふつうのチックとは違うのでしょうか」。
先に結論をお伝えします。違いはあります。ただし、ご家族が心配しているような違いではありません。診断名だけで、治療法や今後の見通しが決まるわけではありません。ではどこが違うのか。その点こそ、この記事でいちばんお伝えしたいことです。後半で詳しくお話しします。

チックとは何か

チックとは、体が急にピクッと動いてしまったり、声や音が出てしまったりすることをいいます。まばたき、首を振る、肩をすくめる、顔をしかめる。咳ばらい、鼻をすする。こうしたものが繰り返しあらわれます。
体の動きとして出るものを運動チック、声や音として出るものを音声チックと呼びます。現れる場所や種類は、時期によって変わっていきます。
数週間から数か月の周期で強くなったり弱くなったりするのも特徴です。「落ち着いたと思ったら、今度は別の動きが出てきた」。ご家族はそう感じて一喜一憂しますが、これはチックによく見られる自然な経過です。波があるものだと知っているだけで、見守る側の気持ちはずいぶん楽になります。

チックの前に訪れる「むずむず感」

チックには、まわりから見えるものと、本人にしか感じられないものがあります。10歳前後になると、多くの子がチックの前に「前ぶれの感覚」を自覚するようになります。「むずむずする」「詰まった感じがする」「そこばかりが気になってくる」といった感覚です。この感覚に押し出されるようにチックが出て、出たあとは本人も少しすっきりします。
ここが大事なところです。我慢させると、この前ぶれの感覚がたまっていきます。そのため、学校で必死にこらえた子が、帰宅した途端に激しくチックを出すことがあります。抑え込んでも解決にはなりません。
家庭での声かけも、ここを踏まえると変わってきます。「気にしないで」でも「我慢しなさい」でもなく、「その感じがあるんだね」と受けとめる。それくらいの距離感がちょうどよいと感じています。

チックの種類

ここでいったん、チックそのものの形に戻ります。チックは、単純なものと複雑なものに分けて考えると理解しやすくなります。
単純な運動チックでは、顔や首、肩などが素早く動きます。小さい子のチックは、たいていこの動きから始まります。
複雑な運動チックは、いくつかの動きがつながって、何かをしようとしているように見えるものです。飛び跳ねる、体をひねる、物にさわる、自分の体を叩く。「変な癖がついた」と誤解されやすいのがこの種類です。
単純な音声チックでは、先に挙げた咳ばらいや鼻すすりのほか、「ん」「あ」といった短い音が出ます。複雑な音声チックになると、意味のある言葉が出ます。人が言った言葉をそのまま繰り返す、自分の言葉を繰り返す、汚い言葉を口にしてしまう、といった形です。

トゥレット症候群とは何か

チック症は、まず続いた期間で呼び名が分かれます。始まってから1年たっていないものは暫定的チック症、1年以上続いているものはまとめて持続性チック症と呼ばれます。
そして、その持続性チック症のうち運動チックが複数あり、音声チックも1つ以上あるもの(同時に出ていなくてもよい)が、トゥレット症候群です。
症状の重さや生活への支障、特定の症状があるかどうかは、診断名を決める必須の条件ではありません。
トゥレット症候群というと、先に挙げた汚い言葉が出る症状を思い浮かべる方もいます。そう思われるのは、テレビやインターネットで大きく取り上げられるためです。実際にこの症状が出るのは、トゥレット症候群のある人の10人に1人ほどです。
そして、ぜひ知っておいていただきたいのは、トゥレット症候群はチック症とは別の病気ではないということです。つまりチック症という連続した状態のうち、運動チックと音声チックの両方がみられるタイプのことです。

昔から知られていたチックのなかでも、症状の種類が多く目立つタイプに先に名前がつきました。それがトゥレット症候群です。症状の種類が少なく目立たないタイプは、後の時代になって単に「チック症」と呼ばれるようになりました。
実際、最近の研究でも、この二つは明確に分かれるのではなく、連続した状態であることが示されています。1,000人以上を対象に両者を比べた報告では、主な違いとして、チックの重さと、重なっている困りごとの多さが挙げられました。大規模な遺伝子研究でも、チック症に明確な境目は見つかっていません。研究者からは、両者をまとめて「チックスペクトラム症」と呼ぼうという提案も出ています。

精神の病気とは違うのか

よくいただく質問です。
世界保健機関(WHO)の国際的な疾病分類(ICD-11)では、トゥレット症候群は「神経系の病気」に分類されています。アメリカの診断基準でも、発達の過程であらわれる神経発達症のうち、体の動きに関わるものに分類されています。
心が弱いからでも、しつけが悪かったからでもありません。脳のなかで動きを調整する部分や、そこにつながる神経回路が関わっていると考えられています。遺伝も大きく関係しており、ご家族にもチックがあったり、こだわりが強かったり、落ち着きにくかったりすることがあります。
緊張や疲れで強くなることはあります。ただしそれは悪化の引き金であって、原因ではありません。ここを混同すると、「ストレスをなくせば治るはず」と考えたご家族が原因探しに疲れ果ててしまいます。これがいちばん避けたいことです。

どのくらいの子どもに見られるのか

チックは、子どもの5人から10人に1人にあらわれるといわれています。決して珍しいものではありません。
世界の研究をまとめた報告では、トゥレット症候群にあたる人の割合は全体で0.5パーセントほど、子どもと青年に限ると0.7パーセントほどです。子どもでは、およそ140人に1人にあたります。男の子に多く、女の子の3倍から4倍とされています。

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