子どものスマホ依存が増えてるって本当?スマホ依存の現状と子どもに及ぼす影響について精神科医飯島先生にお伺いしました。

子どもがスマホを眺める時間が長くなってきた・・・注意をすると怒りだす・・・そんな悩みを抱えていませんか?
今回は、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科出雲いいじまクリニック院長飯島慶郎先生にアドバイスいただきました。

はじめに

「先生、うちの子、夜中までスマホ見てるんです。どうしたらいいでしょう・・・」
こんな相談を受けることが、最近本当に増えてきました。私は不登校専門クリニックを運営する精神科医の飯島慶郎です。先日も中学2年生の女の子のお母さんから、夜遅くまでSNSを見続けて朝起きられない、という相談を受けました。実は、これはとても珍しいケースではありません。
スマートフォン依存は、まだ正式な病名とはされていませんが、その深刻な影響から、世界中の研究者たちの間で大きな注目を集め、活発な研究が行われています。今回は、日々の診療で見てきた経験と、最新の研究成果をもとに、子どものスマートフォン依存について、特に親御さん方に知っていただきたいポイントをお話ししたいと思います。

スマホ依存の現状 ~驚くべき使用時間~

「先生、うちの子のスマホの使用時間、普通なんでしょうか?」
外来でよく受ける質問です。実は、多くのお母さん親御さんが思っている「普通」より、実態ははるかに深刻です。
総務省の最新の調査を見てみると、10代の子どもたちのスマホ使用時間は、平日でなんと3時間以上、休日になると5時間近くにもなります[1]。睡眠時間を除けば、起きている時間の4分の1以上をスマホに費やしているということですね。これは全年代の中で最も長い時間で、2番目に長い20代と比べても、休日では約47分も長くなっています。
「でもじゃあ、他の国の子どもたちはどうなんだろう?」
と思われるかもしれません。実はアメリカでも似たような状況です。13~17歳の約90%がスマートフォンを持っていて、その70%が1日に複数回SNSを使用、さらに16%は「ほぼ常時」使用しているそうです[2]。
特に気になるのは、ある大規模な調査で明らかになった数字です。なんと、子どもと若者の約4人に1人(23.3%)がスマホ依存の傾向を示しているのです[3]。私の外来でも、実感として近い数字を感じています。
このような状況を見ると、「このままでは・・・」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。では、スマホの長時間使用は、子どもたちの脳にどんな影響を与えるのでしょうか?次は、その点について詳しく見ていきましょう。

スマホが子どもの脳に与える影響~知っておきたい6つのこと~

「先生、子どもの脳の発達に悪影響はないんでしょうか?」
これは本当に大切な質問です。実は先日、中学1年生のお子さんのお母さんから「最近、宿題に集中できなくなった」という相談を受けたところでした。
スマホやタブレットが子どもの脳「自体」に与える影響について、最新の研究でいろいろなことがわかってきています。少し専門的な話になりますが、できるだけわかりやすく説明させていただきますね。
(1)考える力への影響
脳の中でも特に大切な、いわば「脳の司令塔」である前頭前野の働きが変化してしまうことがわかっています[4]。簡単にいうと、「計画を立てる」「じっくり考える」「我慢する」といった大切な能力に影響が出る可能性があるんです。
(2)注意力への影響
確かに、スマホを使っていると素早く反応する力は良くなります。でも、自分の意思で「これに集中しよう」という力が弱くなってしまう傾向があるんです[5]。宿題に集中できなくなるのは、もしかしたらこれが関係しているかもしれません。
(3)読書とスマホ、その違い
これは特に興味深い発見なんです。スマホの使用時間が長いと、言葉を理解する脳の部分の働きが弱まってしまう一方で、読書をする時間が長い子どもさんは、言葉を理解したり、考えをまとめたりする脳の部分の働きが活発になるんです[6]。
(4)やる気スイッチへの影響
脳の中の「やる気スイッチ」ともいえる部分の活動が変化してしまうことがわかっています[7]。「やらなきゃいけないな」と思っても、なかなか行動に移せない。そんな状態の原因の一つかもしれません。
(5)言葉の発達への影響
特に小さいお子さんの場合、スクリーンの見すぎは言葉の発達に影響を与える可能性があります[8]。その一方で、お子さんと一緒に本を読む時間を持つことは、言葉の力を伸ばすのにとても効果的なんです。
(6)脳全体へ広がる影響
最新の研究では、考えることや感じること、見ることなど、さまざまな脳の働きに広く影響が出ることがわかってきました[9]。特に気になるのは、「考えをまとめる力」への影響です。

このように、スマホの過剰な使用は子どもの脳の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に成長期の子どもたちの場合、その影響は大人より大きくなることが懸念されています。
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[執筆者]

飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。

島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

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