子どもの姿勢が悪いのは視力のせい?猫背解消法を眼科医岩見理事長が解説

アイコンイメージ

左右の近視が大きく違う「不同視」

右目はほとんど近視がないのに、左目だけ強い近視。
このように左右の目の度数が大きく違う状態を「不同視」と呼びます。

不同視が強くなると、単に「片方の目だけ見えにくい」という問題では済まないことがあります。左右の目を一緒に使う「両眼視」や、立体的に物を見る力にも影響することがあります[7]。
さらに、不同視や斜視などのある子どもでは、日常生活や心理面との関連も報告されています。

斜視や不同視のある5~11歳の子どもを調べた研究では、目に関する生活の質と、読書速度、身体能力についての自己評価、友達から受け入れられているという感覚、フラストレーションや心配などとの関連が報告されています[8]。
「片方の目が見えているから大丈夫」とは、必ずしも言えないのです。
不同視になっても、左右差を小さくできる可能性があります。

一方で、近視性不同視については、治療によって左右差を小さくできる可能性も分かってきました。
その一つが、夜眠っている間に特殊なコンタクトレンズを装用する「オルソケラトロジー」です。
オルソケラトロジーには子どもの近視進行を抑える効果があります。そして近視性不同視では、より近視の強い眼の「眼軸長」、つまり目の奥行きの伸びがより強く抑えられ、左右差が小さくなることが複数の研究で報告されています[9~11]。
60人の近視性不同視の子どもを対象とした無作為化比較試験では、1年間で眼軸長の左右差が、眼鏡群ではほとんど変わらなかったのに対し、オルソケラトロジー群では0.47mmから0.35mmへ縮小しました[9]。

108人を調べた別の研究でも、約1年間のオルソケラトロジー使用で、眼軸長の左右差が0.54mmから0.46mmへ、近視度数の左右差も1.38Dから1.25Dへ小さくなっています[10]。
さらに2026年には、オルソケラトロジーを使用した9,978人、延べ7万9,409回の診療データを解析した大規模研究が報告されました。不同視が大きい子ほど、近視の強い眼の眼軸伸長がより強く抑えられ、左右の眼軸長差が縮まる方向に働くことが示されています[11]。
私自身も学会で、近視性不同視の女の子に片眼からオルソケラトロジーを開始し、経過とともに眼軸長の左右差が小さくなった症例を報告しました[12]。

もちろん、一人の症例をすべての子どもに当てはめることはできません。しかし、海外から報告されている研究と同じ方向の変化を、実際の診療でも経験しています。
すべての不同視にオルソケラトロジーが適しているわけではありません。それでも「左右差がついてしまったから仕方がない」と考えず、成長期のうちに眼科で評価する意味があります。

姿勢が気になる子こそ、外で遊ぼう

「姿勢を良くするには、体幹を鍛えればいいのでしょうか?」
こう聞かれることもあります。
もちろん筋力は大切です。しかし、「体幹さえ鍛えれば姿勢が良くなる」というほど単純ではありません。

まずは座りっぱなしの時間を減らして、体を動かすこと。体が硬い子であれば、無理のない範囲でストレッチを取り入れる。それだけでもよいでしょう。
そして眼科医としては、ぜひ外遊びを勧めたいところです。
屋外で過ごす時間を増やすことには、子どもの近視発症を減らすエビデンスがあります。中国で行われた無作為化試験では、学校で毎日40分の屋外活動を追加すると、3年間の近視発症率が低下しました[13]。

「良い姿勢のために特別な筋トレをさせなくては」と難しく考える前に、座っている時間を少し減らして外で体を動かす。
子どもの体にも目にも、取り入れやすい対策です。

「姿勢が悪い!」と叱る前に見てほしいこと

もちろん、すべての姿勢の悪さを家庭だけで直そうとする必要はありません。

○いつも同じ方向に大きく体が傾く。
○左右の肩の高さが明らかに違う。
○背中の形に左右差がある。
○痛みがある。
○体の柔軟性が極端に低い。

こうした場合には、単なる癖だけではなく、整形外科的な問題がないか、小児科や整形外科などで一度評価してもらいましょう。必要に応じて理学療法士などによるストレッチや運動指導を受ける方法もあります。整体などのケアを利用する場合にも、医学的な評価の代わりにはしないことが大切です。
そして、

●本やタブレットに以前より顔を近づける。
●テレビを見る位置がどんどん前になる。
●片目をつぶって見る。
●いつも同じ方向に頭を傾ける。
●学校の視力検査で左右差を指摘された。

こんな様子があれば、「姿勢の問題」と決めつけず、眼科で視力をチェックしてください。

子どもの姿勢を良くするために大切なのは、「背筋を伸ばしなさい」と何度も叱ることではないと私は思います。
まず、ちゃんと見えているか。
次に、足がつく椅子になっているか。食卓で勉強するなら、その食卓と椅子が子どもの体に合っているか。
そして、目と本との距離を保ち、できるだけ正面から見られているか。
途中で体を動かしているか。外で遊ぶ時間はあるか。
大人が「良い姿勢を取りやすい環境」を作ってあげることが大切です。
そして時々、背中だけではなく、子どもの目と本との距離も見てみてください。
その姿勢は、成長していく体だけでなく、成長していく「目」からのサインかもしれません。

【主な参考文献】
[1]文部科学省.学校環境衛生管理マニュアル「学校環境衛生基準」の理論と実践[平成30年度改訂版].「机、いすの高さ」「理想的な学習姿勢」.
[2]Song Y, et al. Near-work activity duration and myopia in children: An updated systematic review and meta-analysis. Biomed Rep. 2026;24(5):58.
[3]Gifford KL, et al. IMI – Clinical Management Guidelines Report. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019;60(3):M184-M203.
[4]Logan NS, et al. IMI Accommodation and Binocular Vision in Myopia Development and Progression. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021;62(5):4.
[5]Lee CW, et al. Prevalence and association of refractive anisometropia with near work habits among young schoolchildren: The evidence from a population-based study. PLoS One. 2017;12(3):e0173519.
[6]Lee CW, et al. Risk factors for anisometropia in schoolchildren: A population-based, longitudinal cohort study. Ophthalmic Physiol Opt. 2023;43:1500-1509.
[7]Zhuang CC, et al. Accommodation and Binocular Vision in Children with Myopic Anisometropia. J Ophthalmol. 2024;2024:6525136.
[8]Birch EE, et al. Associations of Eye-Related Quality of Life With Vision, Visuomotor Function, and Self-Perception in Children With Strabismus and Anisometropia. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020;61(11):22.
[9]Zhang Y, Sun X, Chen Y. Controlling anisomyopia in children by orthokeratology: A one-year randomised clinical trial. Cont Lens Anterior Eye. 2023;46(1):101537.
[10]Lu W, Jin W. Clinical observations of the effect of orthokeratology in children with myopic anisometropia. Cont Lens Anterior Eye. 2020;43(3):222-225.
[11]Huang K, et al. Longitudinal rebalancing of axial length asymmetry in anisometropic children under orthokeratology: a large-scale cohort study. Cont Lens Anterior Eye. 2026;49(3):102666.
[12]岩見久司ほか.片眼のオルソケラトロジー開始により眼軸性不同視の改善が得られた一例.第78回日本臨床眼科学会.2024.
[13]He M, et al. Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015;314(11):1142-1148.

※記事の作成にあたり、校正の補助として生成AIを使用しました。ファストチェックは医師が確認しています。

この記事をSHAREする

この記事をSHAREする