ものに近づいて見る癖を見たら受診のサイン。子どもの近視を進行させる調節緊張についていわみ眼科理事長岩見先生にお伺いしました。

子どもの視力って一度悪くなるとどんどん悪くなるって本当?そんな疑問について、医療法人社団久視会いわみ眼科理事長 岩見久司先生にお答えいただきました。

視力が悪くなるって、そもそもなんで?

子どもの視力検査は3歳半健診から始まります。見えていても低年齢のため検査に答えられないこともあり、小学校に上る前に1.0までたどり着くようになります。視力検査は輪っかの切れ目(ランドルト環)を当てるものですが、定義としては5m開けた距離から点と点の境目が分かるか(二点弁別閾/にてんべんべついき といいます)を判断する検査です。その境目がぼやけて分からないのが視力低下ですが、子どもの視力が出ない理由は、ピントが合っていないことが多いです。そして子どもたちの視力が下がっていくのは主に近視が進行していく事によります。

近視進行のメカニズム
近視が進行する背景は遺伝と環境です。近視は非常に増加しており新成人で近視が8割を超える割合になっているとされています。
出典元:Morgan IG et al. Prog Retin Eye Res 2018
増加している原因は近年の環境の変化が多いです。近くを見すぎること、屋外活動の減少がこれに当たり、コロナ禍のステイホームがこれに拍車をかけました。
近くを見すぎることはピントを調節する目の筋肉が常に緊張している状態を招きます。これを調節緊張と呼びます。調節緊張が目に刺激を与え、近視を進行させるといわれています。特にこの暑い夏休みでは、外に出ずに本・漫画・スマホ・タブレットなどを見続けて過ごしているお子さんが多いのではないでしょうか。

近視が近視を呼ぶ?
近視になると、自覚はなくとも体が見えにくいと感じていきます。そうすると、子どもたちは無意識にものに近づいて見る癖がついてきます。猫背やストレートネックにもなってきます。仮に眼鏡やコンタクトレンズで遠くが見えるようになっても、そういった姿勢はなかなか治りません。
さらに、眼鏡やコンタクトを持っていない、あるいは度があっていないとき、ますます近づいてものを見る傾向が強くなります。そしてそれが先にお話しした調節緊張を招き、近視進行のリスクが増加します。
私が昨年度の市内の小学生で取ったデータでは、小学校高学年でB判定以下が出ている割合は裸眼のお子さんで3割程度、眼鏡を掛けているお子さんで7割以上でした。近視が始まったお子さんほど近視が進みやすいのは、決して眼鏡をかけているからではなく、対象に近づいて見る癖があるからです。

近視を進ませないためには
まずは眼科を受診し、眼鏡やコンタクトレンズが必要であれば適切に処方を受けることが大切です。これらの道具が必要になるのは、近づかないとものが見えないため姿勢の改善が難しくなるからです。
そのうえで生活習慣指導として、過度に近くを見る作業を避け、なるべく屋外で活動することです。また、ものを見る姿勢は成長期のお子さんの適切な骨の発育にも大変重要です。実際、近視で通院されているお子さんに、側弯症を指摘されていることが多いような印象があります。学校健診でひっかかった際もですが、視力低下のサインとして目を細めることや過度にものに近づく行為も眼科受診のタイミングです。一緒に歩いていて、遠くの看板などが親と同じように見えているかを確認するのも良いでしょう。
近視が増加している現状はありますが、積極的に介入していくことで近視進行を和らげることはできます。お子さんの健やかな発育のために、我々親世代の意識が変わっていくと良いなと思います。

執筆者

岩見久司先生
大阪市立大学医学部卒
医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長
眼科専門医・レーザー専門医
医学博士
兵庫医科大学非常勤講師

経歴
1日100人を超す外来をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。
網膜の病気に将来繋がっていく可能性のある小児の近視が現在急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。
令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの方が持てるように啓蒙活動を展開している。
ドクターズ・ファイル https://doctorsfile.jp/h/189711/df/1/
いわみ眼科チャンネル(youtube)https://www.youtube.com/@dr.iwami911eye

いわみ眼科ホームページ
https://iwami-eyeclinic.com

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