子どもの盗み癖が発覚したら?年齢ごとに異なる特有のサインを見過ごさず理解することが大切です

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借りたものを返さない:愛着の問題が影響している場合
自他の区別がついていない、自分の物の管理も難しいなどが問題の背景にあると考えられます。意図的にやっているというよりは、無意識にしています。指摘されても、それがそんなに重大なことなのか?という程度の受け取り方しかしていません。

誰かのものを盗ってくる、万引きをする:心に抱えた課題が影響している場合
他者のことを羨ましく思う気持ちが根底にあるような羨望や妬みから、特定の子の持ち物を盗ることがあります。ある1人の子と限らなくても、似たようなタイプの子(盗っている本人のコンプレックスに関連する特徴を有している子)の物を盗ることがあります。対象はランダムで特定の物を盗ることもあります。物に執着する時は、その物自体に個人的な意味づけがあることが多いです。しかし、本人には自覚がないことが多いため、理由を聞いても説明ができません。

私が関わったケースで、母親がとても神経質なタイプで幼少から汚れることに対して厳しく躾けられていた女児が、小学校中学年になって突然、消しゴムを盗り溜める癖が出現したことがあります。初めは落とし物を拾ったことがきっかけでしたが、そのうち人のもの、先生のもの、お店のものとエスカレートしていきました。「ちょっとした汚れも気になる=消しゴムで消す」が彼女の無意識の中で繋がり、止められなくなっていたようです。さらに、悪いことをしている自分も「汚れ」であるので、盗ることをやめられなくなっていました。保護者面接をする中で、母親から幼少期の躾の話が語られ「厳しくしすぎた」と反省され、娘との緊張関係を改善しようと意識を変えられてから、娘さんの盗り癖は解消されていきました。

中学生以降の子どもの「盗み」について

ここまでは、小学校低学年くらいまでの子どもや、高学年以降であっても「初めて盗った」状況を想定した内容です。盗み現象にも気づいてもらえなかった・・・など、子どもの心の声に応えないまま思春期を迎えると、非行などにつながるような盗みを繰り返すことにつながります。
・スリルや刺激を求めて・・・
・習慣、癖になって・・・

習慣・癖になると、改善は一筋縄ではいきません。玉ねぎの皮を剥くように、何度も何度も繰り返し、少しずつ減少していくものだと理解しておいた方が、大人も希望が持てます。
盗み癖がエスカレートすると、他者に指示して盗みを強要したり、盗んだ物を売って現金化したり・・・と犯罪に触れるところまで進展します。これらの現象は突発的に生じるのではなく、長い歴史があることを理解する必要があります。置いてけぼりにされた心の声に気づいてくれなかった親・大人・社会への攻撃でもあると考えられます。

盗みが発覚した場合、中学校であれば、指導を担当する先生や担任が対応に当たられ、高校であれば退学となることがほとんどです。このタイミングは子どもたちが盗み癖を断ち切るチャンスなので、対応を学校や警察だけに任せ、一方的な指導で終わるのではなく、心の奥に沈めた触れ難い感情が存在していることを認識した上で関わっていただきたいです。子どもは誰でも「親」を待っています。子どもが外で問題行動を起こす時というのは、家庭内では解消できないと子どもが思っている問題を、子どもたちが社会に助けを求めていると思って対応しましょう。親としては「家の恥」と感じるかもしれませんが、社会の力を借りながら、家庭の問題に向き合ってみましょう。親であるあなたにとって、必要なことでもあるはずです。

しかしながら、必死に心の声を沈めてきた子どもにとって、また思春期の子どもたちにとって、一番の理解者であってほしい保護者だからこそ知られたくないという両面の気持ちも持っています。わかってもらえなかった時の痛みを考えると当然ではあります。家族だけでは立ち行かない状況もあって当然なので、その時には、話し合いの場に子どもに寄り添える親族(祖父母、おじ、おば、いとこ)や学校の先生にも立ち会ってもらうことをお勧めします。

また、抱えた痛みの解消や親子関係の改善のために、カウンセリングを受けることもお勧めします。盗み癖が解消されても、子どもが獲得してきたストレス対処法や親子関係の理解や改善まで到達できていなかったら、社会人になった時・親になった時などに似た現象が再燃することがあります。
子どもの未来のために、心の声を大事に拾いあげてください。

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