【精神科医が解説】依存?それとも夢中?子どもの「生活の支障」を見極める4つのポイント

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スマホやゲームを取り上げる前に、家庭でできる4つの関わり

なぜ、崩れ始めている生活のほうを見るべきなのか。それには、依存の成り立ちが深く関係しています。
依存は、意志が弱いから起こるのではありません。依存の成り立ちを説明する考え方(もともとは大人も含めた依存全般のものです)では、その行動を繰り返すうちに「やりたい」気持ちが強くなる一方で、「止める」力が追いつかなくなっていく、と説明されます。「やりたい」が「止める」を上回り続けるうちに、その行動は抜け出せない習慣として定着してしまうのです16)。

ヨーロッパ12地域の11歳から15歳およそ4万4千人を2021〜22年に調べた研究で、依存の症状として最も多かったのは、嫌なことから逃げるために使うこと(逃避)と、頭がそのことでいっぱいになること(とらわれ)でした17)。見るべきは時間の長さではなく、まず「逃げるために使っているか」だ——私はそう考えています。
そして、逃げたい気持ちの背景には、落ち込みや不安があることが少なくありません。子どもと若者を追跡した31の研究のまとめでも、気持ちの問題とネットの使い方のこじれは、多くの場合、互いに強め合っていました18)。

ここまで来ると、「取り上げる」ことの難しさが見えてきます。子どもにとってゲームがつらい現実からの逃げ場になっている場合、ゲームを取り上げるだけでは、心の逃げ場そのものを奪ってしまうことになるからです。
誤解のないようにお伝えします。制限をしてはいけない、という話ではありません。寝る時間になったら終わりにする、食事のあいだは手放す——生活を守るためのルールや枠組みは、設けてかまいません。避けたいのは二つだけです。罰として取り上げてしまうこと、そして代わりの居場所を用意しないまま、いきなりすべてを奪ってしまうことです。守るべき枠組みを整えることと、逃げ場ごと取り上げることとは、まったく別の話なのです。
では、家庭では具体的にどう関わっていけばよいのでしょうか。すべてを一度にやろうとする必要はありません。どれか一つ、できそうなことから始めてみてください。

一つめは、ゲームの背景にある「子どものつらさ」にまず目を向けることです。
学校、友だち、勉強、体調、家の中のこと。犯人探しではなく、手を貸せるところを探すためです。本人に「何がつらいの」と尋ねても、答えは返ってこないでしょう。見るのは、変わった時期のほうです。ゲームが増えたのはいつからか、その前後に何があったか。クラス替え、部活、テスト、体調を崩した時期。思い当たる出来事があれば、それが見当をつける手がかりになります。

二つめは、叱る前に、ゲームの中で何が楽しいのかを聞くことです。
話してくれるうちは、まだ見えている部分が多いということです。話しかけても返事がない、聞こうとすると怒られる、というご家庭も多いと思います。無理に聞き出さなくてかまいません。「何をしているの」ではなく「それ、面白そうだね」と、横で一度見せてもらうところから始め直してください。会話が減ったというだけでは、依存の証拠にはなりません。

三つめは、ルールを一緒に決めることです。
決めるのは「何時間まで」ではなく「何を守るか」。寝る時間、食事、宿題との順番です。すでにルールがあって守られなくなっているなら、罰を足すのではなく、ルールのほうを作り直してください。話し合いができなくても構いません。守れなかったものを親御さんのほうで見直し、守れる範囲まで小さくする。いくつも決めて全部が破られるより、寝る時間ひとつが守られるほうを選んでください。

四つめは、ゲーム以外の楽しみを、できる範囲で残しておくことです。
ここでいう楽しみは、勉強や運動といった「理想的な過ごし方」でなくても構いません。たとえばマンガを許容するなど、ゲームに比べて依存性の低い楽しみに、少しずつ目を向けさせていくのも現実的な工夫です。小学生なら親御さんが一緒に楽しめればいちばんですし、中高生なら親が一方的に押しつけるのではなく、本人が決めて親は相談相手に回るのが理想的です。ゲームの外にも居場所がある、とお子さんが感じられれば十分です。

最後に、親御さんご自身のことです。親のうつなどの気分の病気と子どものデジタル依存の関係を調べた19の研究のまとめでは、小さいながらも確かなつながりが見られます19)。どちらが先かまでは分かりません。これは「親のせい」という意味ではありません。疲れているときには、疲れるだけの事情があります。ただ、家の中に少しでも余裕があるほうが、子どもはゲームやネット以外の世界にも居場所を見つけやすい——私は診療のなかでそう感じています。だとすれば、親御さんご自身が休むことも、遠回りのようでいて、対策のうちです。
とはいえ、休んでくださいと言われて休める方は多くありません。ゲームに熱中している姿であれ、スマホを手放せずSNSのやりとりに気をとられている様子であれ、お子さんのことを考えない時間が、一日のどこかに少しでもあれば、それで十分です。ゲームの世界もSNSのつながりも、見守る親御さんにとっては同じように大きな心配事になります。眠れない、気分が晴れない日が続いているなら、お子さんより先に、親御さんご自身が相談に行っていただいてかまいません。

依存症の治療は、大人より思春期の子どものほうが効果が出やすい

睡眠、学校、家族、ゲーム以外の楽しみ。この四つのどこかが崩れたまま数か月が過ぎている。あるいは、日々の乱れが前より大きくなっている。そう感じられるなら、家庭だけで抱えないでください。当てはまる数ではなく、続いている長さを見てください。これは診断の基準ではなく、相談を考える目安です。診断には12か月という目安がありますが1)、相談はそれを待つ必要はありません。

まずお伝えしたいのは、適切な治療によって確かな改善が期待できるということです。ゲーム行動症の治療を調べた21の対照試験(のべ1,360人)を束ねた分析では、依存の症状もゲームの時間も減り、落ち込みや不安も改善しました。依存の症状とゲームの時間については、3か月後にも効果が続いていました20)。研究ごとのばらつきは大きく、長期の検討はまだ少ないものの、手を打てば変わる——その点ははっきりしています。さらに注目すべきなのは、治療の効果が大人よりも思春期の子どものほうが大きかったという事実です20)。

親が関わることにも根拠があります。中高生向けの教育プログラムを調べた6件の分析では、親が参加するプログラムでも、依存の傾向を減らす効果が見られました21)。
「本人が行きたがらないのですが」——私の外来では、これがいちばん多いご相談です。ご本人が行く気にならないうちは、まず親御さんだけで相談に行っていただいてかまいません。学校でも、精神保健福祉センターでも構いません22)。親が先に行っても、順番としておかしくありません。
治療には、考え方や行動の癖を整える認知行動療法や、家族で取り組む家族療法などがあり、効果は同じくらいと報告されています20)。薬については、依存そのものへの効果はまだ研究の途上です20)。

私の診療では、落ち込みや不安が重なっているときに、そちらへの治療として使うことがあります。
相談先は、近いところからで大丈夫です。私がまずお勧めするのは学校です。担任の先生、スクールカウンセラー、養護教諭は、お子さんの学校での様子をいちばんよくご存じです。朝起きられない、眠れないといった体の不調があるなら、かかりつけの小児科や内科でもかまいません。そのうえで、公の窓口として、各都道府県と政令指定都市の精神保健福祉センターに依存の相談窓口があります22)。ゲーム行動症を診療している医療機関でも、相談に応じているところがあります22)。

男子はゲーム、女子はSNSと向かう先が違う

「男女で依存の現れ方に違いはあるのか」という点についても、触れておきたいと思います。
ゲーム行動症に限れば、男の子に多いことは確かです。世界の研究を合わせると男性が女性のおよそ2.5倍3)、日本で10歳から29歳を対象に行われた全国調査でも、男性7.6%に対して女性2.5%でした4)。

ところが、ゲームに限らずインターネット全体の依存を見ると、様子が変わります。厚生労働省の研究班が2017年度に全国の中高生6万4千人を調べた調査では、依存が疑われる割合は、中学生で男子10.6%に対して女子14.3%、高校生で男子13.2%に対して女子18.9%と、女子のほうが高くなっていました23)。少し前の調査ですが、男女でどちらに多いかを見る手がかりにはなります。
何が違うのか。向かう先です。ブラジルの小児科外来の中高生180人の研究では、依存の重さに男女差は見られず、男子はゲーム、女子は友だちとのやりとりに多く使われていました24)。日本のある地域の中学生529人の調査でも、男子はゲーム機、女子はSNSでした25)。男の子はゲーム、女の子はSNS——ただしこれは傾向の話で、逆の子もふつうにいます。「うちは女の子だから」も「男の子だから」も、安心してよい理由にはなりません。

SNSについても、見分ける基準はゲームと変わりません。自分でコントロールできているか、睡眠や日々の生活より優先されていないか、という点です10)。思春期の子どもたちを調べた大規模な調査でも、使い方がコントロールできなくなって生活に影響が出ている子は4.5%に見られます26)。
女の子の場合、私が診察室で気をつけて聞くのは、友人関係への不安です。SNSでは、「見ていないと仲間外れにされるのではないか」という不安から、スマホを手放せなくなってしまう例をよく見ます。

お子さんがSNSに向かっている場合も、見方は同じです。「ゲームの中で何が楽しいか」は「誰とやりとりしているか」に、「ゲーム以外の楽しみ」は「日常の中で直接会える友だちがいるか」に置き換えてください。一つだけ違うのは、SNSの向こうには相手がいることです。取り上げれば、友だち関係ごと切れてしまうことがあります。時間を制限する前に、いま何が起きているのかを聞いてみてください。友だち関係のもつれが続いているなら、まず学校に声をかけるのが早道です。

最後に、2025年ごろから診察室で増えてきたご相談について触れておきたいと思います。
それは、会話ができるAIに、悩みを相談し続けているお子さんのことです。研究はまだこれからで、確かなことは言えません。ただ、見分け方はゲームやSNSと同じだと私は考えています。AIに悩みを話すこと自体は、悪いことではありません。人に言えないことを言葉にできている、とも言えます。見るべきなのは、相談できる相手がAIだけになっていないか、日々の暮らしに支障が出ていないかです。AIとのやり取りは外から見えにくいため、画面をのぞき込んで確かめたくなるかもしれません。しかし、中身を詮索するよりも、人に話をしなくなっていないか、睡眠が乱れていないかといった日々の様子を見てあげてください。そのほうが変化に気づきやすく、親子の信頼関係も壊さずにすむかもしれません。

おわりに

依存かどうかは、何時間やっているかでは決まりません。自分で止められるかどうか、日々の暮らしのほかの部分に支障が出ていないかで決まります。
何かに夢中になれるということは、その子の力です。睡眠、学校、家族、ゲーム以外の楽しみ。この四つは、点数をつけて合否を出す項目ではなく、時間の長短にとらわれる代わりに、目を向けていただきたい大切なポイントです。生活が大きく崩れていないなら、いまは慌てなくて大丈夫です。ただ、依存は「ある」「ない」にきれいに分かれるものではなく、グラデーションのように連続しています6)。嫌なことがあるたびにゲームやスマホへ逃げ込む様子が続くなら、少し注意深く見守ってあげてください。
そして、その状態が数か月続いているなら、それは家庭だけで抱える範囲を超えています。一人で判断しようとせず、学校やお住まいの地域の窓口など、どこかひとつ外に声をかけてみてください。子どものうちに相談できることには、意味があります。

参考文献
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※本記事の執筆にあたり、論文検索および構成の整理に生成AIを活用していますが、医療情報としての正確性は専門医が確認・監修しています。

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