【精神科医が解説】依存?それとも夢中?子どもの「生活の支障」を見極める4つのポイント

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SNSやゲーム、AIへの没頭は依存なのか単なる熱中か。生活に支障が出る境目について、精神科医であり臨床心理士・公認心理師でもある出雲いいじまクリニック院長の飯島慶郎先生に伺いました。「スマホ中毒」や「デジタル依存」の視点から、生活の異常事態を見抜く4つの判断基準に迫ります。

うちの子がゲームやSNSへ依存しているのではないか?診察室で、毎週のようにいただくご相談です。心配するお気持ちとともに、「自分の育て方が悪かったのではないか」とご自身を責めておられる親御さんも少なくありません。
何時間やっているかでは、依存かどうかは決まりません。
何かに夢中になることと、医学的な意味での依存は別のものです。この記事は、お子さんを採点するためのチェックリストではありません。時間の長さではなく、日々の暮らしのどこに目を向ければよいのか。家庭で見守るための大切なポイントを、ご一緒に確かめていきたいと思います。

医学でいう「依存」とは、どういう状態なのか

2019年、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類の第11版(ICD-11)に、「ゲーム行動症」が正式な病名として入りました。ギャンブルと同じ「行動の依存」の仲間に入っています1)2)。
その定義に含まれているのは、三つの特徴です1)。一つめは、ゲームを始める時間ややめる時間、どのくらいやるかを自分で決められなくなっていること。二つめは、食事や睡眠、学校、友だちや家族と過ごす時間よりも、ゲームを優先してしまうこと。そして三つめは、困った問題が起きているのにやめられないどころか、かえってゲームが増えてしまうことです。
しかも、この三つがあるだけでは依存とは診断されません。学校や家庭、友人関係など、生活の大事な部分にはっきりした支障が出ており、その状態が通常は12か月以上続いていることが条件とされています1)。
これらを見ていくと、WHOの基準には「1日に何時間なら依存」という数字がどこにもないことがわかります1)。
医学が基準にしているのは、時間の長さではありません。自分で止められるかどうか、そして生活の大事な部分に支障が出ていないかどうかです。また、期間の目安が12か月とされているのも大切です。夏休みに入って急にゲームが増えた、新しいゲームが出て今は夢中になっている、というような一時的な熱中は、定義の上でも依存ではありません。

ゲームをしている子どもの9割以上は依存ではない

ゲームをしている子どもの大半は、実は依存ではありません。WHO(世界保健機関)も、ゲーム行動症が起こるのはゲームをする人のごく一部だと述べています1)。世界17か国・53の研究をまとめた分析ではおよそ3%3)、日本で2019年に10歳から29歳を対象に行われた全国調査でも2)、5.1%(男性7.6%、女性2.5%)でした4)。調べ方で多少の幅はありますが、多くの研究で「数%」というあたりに落ち着きます。

一方で、こども家庭庁の2024年度の調査では、中学生が平日にインターネットを使う時間は平均およそ5時間、高校生では6時間を超えています5)。この二つを並べるだけでも、「何時間以上なら依存」と時間の長さだけで一律に区切ることの無理が見えてきます。もし時間を基準にしてしまえば、ごく平均的な中学生までもが依存に当てはまってしまうからです。

ドイツの中学3年生3万6千人あまりを調べた分析でも、依存の症状は白黒できれいに分かれるのではなく、グラデーションのように連続していました6)。この研究では、どこからを依存とするかの境界を設けるなら、学校に行けなくなるといった、日々の生活に現れた具体的な支障を手がかりにすべきだと指摘されています6)。アメリカ精神医学会の基準(DSM-5)にも研究用の細かい項目がありますが7)、時間ではなく生活の支障を見るという考え方の根底は同じです。

「ニュースなどでもっと高い数字を見たことがある」と思われるかもしれませんが、先ほどの数%はあくまでゲームに絞った調査のものです。SNSも含めたインターネット全体を調べるともう少し高い割合が出てきます(この男女差やSNSの数字については、後半で詳しくお話しします)。
そして、「大半は依存ではない」ということは、「見なくてよい」という意味ではありません。この記事を開いてくださったということは、何か気になることがおありなのだと思います。心配なお気持ちを無理に打ち消す必要はありません。ただ、目を向けるところを「時間の長さ」から「日々の生活に支障が出ていないか」へと、少し移してみてほしいのです。

「夢中になっている子」と「依存に近い子」は、何が違うのか

では、夢中になっている子と、依存に近い子は、何が違うのでしょうか。
実は研究の世界でも、「熱中」と「依存」は別のものとして測り分けられてきました。大人のゲーマーを調べた2007年の研究でも8)、フランス語圏の268人を調べた研究でも9)、熱中と依存にはつながりが見られるものの、統計の上では別のものとして分かれています。子ども向けの調査ではありませんが、この二つが別々に測れることを示した研究です。

もっと大きなデータもあります。29か国およそ15万5千人の思春期の子どもを対象にした、2017年から2018年のアンケート調査です10)。SNSを「たくさん使っている子」と「依存の症状がある子」を分けて調べました。結果は対照的でした。たくさん使っている子は、どの国でも「頼れる友だちがいる」と感じていて、生活の満足度もむしろ高いくらいでした。ところが依存の症状がある子は、どの国でも、心の状態、学校、家族、友人関係のどれをとっても、幸福度が低くなっていました10)。
これはSNSの研究ですが、ゲームでも見分けるポイントは同じだと私は考えています。「長く使っている」と「依存している」は別のものです。時間の長さそのものが害になるわけでもありません。35万人分のデータをまとめた研究では、使う時間が長いほど幸福度はわずかに下がるものの、その差は多くても0.4%と、ごく小さなものでした11)。ただし、「影響が小さいこと」と「何時間使っても大丈夫ということ」は違います。長い時間の裏で睡眠がおろそかになっているなら、それはもう時間の長短ではなく、日々の暮らしそのものが崩れているという別の問題です。

そうした生活の支障は、ある日突然やってくるものではありません。中国の12歳から18歳およそ6千人のアンケートでは、答え方から四つのグループに分かれました12)。健康なゲーマーが57%、「コントロールが効かない」だけの子が26%、生活の優先順位まで崩れた子が10%、依存と見なされる答え方の子が7%です。一時点の分類で、この順に進むと確かめたものではありませんが、「やめられない」だけの子では、まだ生活の優先順位までは崩れていないことがわかります。ここが見分けるときの手がかりです。そして優先順位が崩れる前にこそ、家庭でできることがあります(具体的な手立ては、後半で詳しくお話しします)。

家庭での様子に置き換えると、こうなります。
夢中になっている子は、ゲームの外にも楽しみがあり、決めた約束はだいたい守れ、ゲームの話を親にします。依存に近づいている子は、ゲームの外の楽しみが消え、約束が守れなくなり、ゲームのことを隠すようになります。ただし、親にゲームの話をしなくなるだけなら、思春期には珍しくありません。三つが同じ時期にそろって変わってきたかを見てください。頭の中がゲームのことでいっぱいになる、嫌なことがあるとそこへ逃げ込む、家族と衝突する、約束してもまた元に戻ってしまう——2005年に整理された、依存に共通する特徴にも、こうした振る舞いの変化が挙げられています13)。

時間ではなく、生活のどこに支障が出ているかを見る

では、具体的に日々の生活のどこを見ればよいのでしょうか。
10歳から29歳を対象にした日本の全国調査(5千人あまり・大人も含む)には、続きがあります2)。「意図していたより、しばしばゲーム時間が延びた」と答えた人は、1日1時間未満の層でも49.7%2)。つまり「ついつい延びる」は、時間が短い人にも同じように起こります。一方、減らしたい・やめたいといつも思っている、と答えた人の割合は、使用時間が長くなっても増えませんでした2)。時間が長い人ほど困っている、というわけではないのです。
では、時間とともに増えていったものは何か。それは、成績が下がること、朝起きられない日が年に30日以上あること、昼夜が逆転する日が年に30日以上あること、という「生活に出た結果」でした。1日6時間使う層では、それぞれ3割弱、4割弱、5割にのぼります2)。

日本のある地域の中学生853人を2014年に調べた別の研究でも、ネット全体の使い方に依存の傾向が強い子は、平日も休日も寝る時間が遅く、平日の睡眠時間が短くなっていました(休日は起きる時間も遅くなります)14)。一時点の調査なので、どちらが原因かまでは分かりません。
これらを踏まえて、家庭で見守っていただきたいポイントを四つに整理します。ドイツの研究が指摘する「生活に現れた具体的な支障」を、日々の暮らしの言葉に置き換えたものです6)。

一つめは、睡眠です。
寝る時間が遅くなっていないか、朝起きられているか、昼夜が逆転していないか。
二つめは、学校です。
遅刻や欠席が増えていないか、成績が下がっていないか。
三つめは、家族です。
決めた約束が守れているか、会話が続いているか、隠し事や暴言が増えていないか。
四つめは、ゲーム以外の楽しみです。
以前好きだったことへの興味が失われていないか。

ただし思春期には、依存とは関係なく好きなものが入れ替わります。習い事をやめた、部活を引退したというだけなら、心配いりません。気になるのは、空いた時間に何も入ってこず、すべてがスマホやゲームで埋め尽くされているときです。
ただ、ここで一つ心に留めておいていただきたいことがあります。この四つは、「四つとも当てはまらなければ安心、一つでもあれば依存」と白黒で採点するためのものではありません。もし崩れているところがあれば、そこから生活を立て直す手がかりにしてほしいのです。生活の支障はある日突然ではなく、少しずつ進んでいくものです。前の月と比べてどちらに向かっているか。その変化の向きこそが、見分けるためのいちばんの手がかりになります。

お仕事の時間帯によっては、お子さんが何時に寝ているか直接は見られないご家庭もあると思います。夜を見張る必要はありません。朝起きられているか。学校から連絡が来ていないか。休みの日に少し話ができるか、その会話にゲーム以外の話が出てくるか。私の経験では、これで四つとも見えます。見られない時間があることを、負い目に思われる必要はありません。
参考までに、依存が進んで受診に至った人たちの実態もご紹介しておきます。
ネット依存の専門外来を受診し、ゲーム行動症の診断の基準を満たした189人(大人も含む)の調査では、受診前の半年のうち半分以上の日に朝起きられなかった人が80.4%、昼夜が逆転していた人が62.4%、学校や仕事を休んでいた人が50.8%。成績や仕事のパフォーマンスの低下は56.6%、家族への暴力や暴言、物を壊す行動は54.5%でした15)。受診した人たちのデータで、いま記事を読んでくださっているご家庭のお子さんの話ではありませんが、依存が進むと生活のどこに支障が出てくるのかが、はっきりと示されています15)。
「ただ夢中になっているだけでも、生活に支障が出てきたら注意すべきか」というご質問をよくいただきます。私の答えは、「見るべきなのはゲームではなく、崩れ始めている日々の生活のほうです」というものです。ゲームを叱ってやめさせようとする前に、まずは崩れ始めている日々の暮らしを立て直す。そこが一番大切なところです。

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