子どもがはしかにかかったかも?予防法や対処法についてクリニック理事長林裕章先生にお伺いしました

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今流行している「はしか」ってどんな病気?感染力が強いと言われているけれど、どれくらい強いの?治療方法は?そんな疑問について、今回は林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生へお伺いしました。

はしかは、医学的には「麻しん」と呼ばれる感染症で、原因は麻しんウイルスです。
最初は発熱、咳、鼻水、目の充血など、風邪とそっくりな症状で始まります。ここで「ただの風邪だろう」と判断してしまうのが最大の落とし穴です。発症から2〜4日たつと、いったん熱が少し下がったように見え、その後再び39℃以上の高熱と全身に広がる赤い発疹が出てきます。発疹が出る少し前、口の中の頬の粘膜に「コプリック斑」という白い小さな斑点が現れることがあり、これははしかに現れるほぼ特異的な症状です。合併症には肺炎、中耳炎、脱水、脳炎などがあり、決して「発疹が出るだけの軽い病気」ではありません(※1)。

はしかの怖さは驚異的な感染力

2026年は、国内のはしか報告数が急増しています。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)によれば、2026年4月15日時点の国内累積報告数は299例で、前年同時期(78例)の約3.8倍。すでに2025年通年の報告数(265例)を上回っています。患者の中心は10〜20代で、ワクチン2回接種が未完了か接種歴不明の方が約半数を占めています(※2)。「海外の話」ではなく、日本国内の問題です。

はしかが特に怖いのは、感染力がとびぬけて強いことです。基本再生産数(R0、免疫のない集団で1人から平均何人にうつるかを示す指標)は12〜18で、インフルエンザ(1〜3)の約10倍、新型コロナ初期株(2〜2.5)の6〜7倍に当たります(※3)。

しかも飛沫感染や接触感染だけでなく「空気感染」もします。麻しんウイルスは空気中で最大2時間程度生存します(※1)。感染者がその場を離れた後の部屋に、免疫のない人が入っただけでもうつる可能性があるということです。
だからこそ厚生労働省も「手洗いやマスクだけでは麻しんを予防することはできない」と明言しています(※4)。中心になる予防策はあくまでワクチンです。

特効薬がないはしかは「かからないように防ぐ病気」と考える

意外と知られていませんが、はしかの原因である麻しんウイルスを直接やっつける特効薬はありません。治療は解熱、水分補給、安静などの対症療法が中心です(※1)。だからこそ、「かかってから治す病気」ではなく「かからないように防ぐ病気」と考える必要があります。

予防の柱はMRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)です。日本では1歳の1年間に1回(第1期)、小学校入学前の1年間に1回(第2期)、合計2回が定期接種です(※4)。2回接種でワクチン有効率はおよそ97〜99%とされ、世界的にも信頼性の高いワクチンです。ご家庭でまずできる一番大切な行動は、母子健康手帳でMRワクチンを2回受けているかを確認することです。

見落とされがちなのが大人の接種歴です。世代によっては定期接種として2回受ける機会がなかった方がいて、今回の流行で患者の中心が10〜20代になっているのもこの背景があります。(※2)。医療・保育・教育関係者、海外渡航予定の方、妊婦さんと同居しているご家族などは、接種歴が不明であれば、抗体検査や追加接種についてかかりつけ医にご相談ください。妊婦さんご本人はMRワクチン(生ワクチン)を接種できないため、ご家族が代わりに免疫を持っておくこと(コクーン戦略)が、お腹の赤ちゃんを守ることにつながります。


【コラム】
「2回接種でも16人感染」をどう読むか
2026年4月、新宿区の小学校で集団感染が起き、感染した18人のうち16人がワクチン2回接種済み、1回以下が2人と報じられました(※5)。「ワクチンは意味がないのでは」という声がSNSで広がりましたが、医学的にはむしろ逆で、ワクチンが効いている証拠と読むべき数字です。
ポイントは「分母」です。日本のMR2回接種率は約95%(※4)。仮に5年生100人中、接種済み95人・1回以下5人だとすると、感染率は接種者17%、未接種側40%。率に直せば、未接種側は接種者の2倍以上ハイリスクということになります。接種率が高い集団では、感染者の絶対数は接種者のほうが多くなるのは、数学的に見た必然です。シートベルト着用率99%の社会で、交通事故死者の多くが「着用者」になるのと同じ構造で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)も古くから注意喚起してきた論点です。

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