「ママ」
ある日、まだ小2だった長男に突然真剣な顔で呼ばれ、「何?」とこちらも真剣に振り返ると。
「おれ・・・強くなりたいんだ」
と、どこぞの少年漫画の主人公のようなセリフ。
マンガのようなセリフに、ちょっと吹き出しそうになりましたが、本人は至って真剣。
隣にいた主人はその気持ちがわかるらしく、うんうん頷きながら、
「じゃあ、何か武道を習おうか」
ということに。
ボクシング・柔道・剣道などもありましたが、子どもが通える距離に道場があり、私がK-1好きだったこともあって(?)、長男は空手を習うことになったのでした。
礼儀や姿勢、そして何より先生のかっこよさ
まずは、親子で一度道場へ見学に。
そこには、「セイッ!」という子供たちの気合の入った掛け声でいっぱい。
小さな道場で、小学生の部は5人ほどでしたが、それぞれきびきびした動きが本当にかっこいい!
長男はキラキラした目で見つめていました。
何よりも、お世辞にもイケメンとは言い難い(すみません)先生(50代ぐらい?)の動きの美しさは格別。
静と動というか、動くときのスピードと空気を割くようなビュッという音、そしてその後全くぶれることなく静止する姿が素敵!!
「よく来たね、こんにちはー」
と、にこにこ挨拶してくださった時とは別人のようで、初見の私でも黒帯の方の強さと迫力を感じることができました(道着からちらりと見えた、バッキバキの腹筋もすごかったです!)。
すっかり空手に魅せられた長男は、その場で入門決定。
週2回、道場に通うこととなったのです。
最初の数回は私も一緒に行きましたが、まず教わるのは姿勢を正すこと。
練習中も、練習後の黙想の時間も、いつも背筋をピシッとすることを指導されます。
しょっちゅうフラフラしたり、飛び跳ねたりして、なかなかじっとしていられない当時の(若干今もですが・・・)長男は、最初は注意されてばかりでした。
そして、礼儀を重んじるというのも空手の特徴です。
年齢は関係なく、先に習っていた人は「先輩」で、組手の相手をしてもらうときも必ず「ありがとうございました!」と礼をします。
いつもはやさしい笑顔の先生も、指導はしっかり。
教わった通りに出来なくても怒ることはないですが、私語やフラフラした態度には厳しい指導が入ります。
ほとんど怒ることのない小学校の先生を甘く見て、問題児化しつつあった長男には、空手の先生との関係がとても良い影響を与えてくれました。
彼にとって、初めての両親以外に「怖い」と思える存在ができたのです。
空手教室に通うようになり、少しずつ小学校での生活にも良い影響が見えてきました。
(相変わらず、小学校の先生からの電話は鳴り続けてましたが・・・)
親もドキドキ! 試合は家族全員が緊張!!
空手といえば、帯の色が気になりませんか?
最初はみんな白帯ですが、級が上がるにつれて帯の色も変わり、最終的には黒帯へ。
子どもの通う、新極真会では小学生は茶帯までですが、長男は「いつか黒帯を目指したい!」とやる気十分。
級が上がるには、審査を受ける必要があるのですが、通常は審査と試合は同日行われ、両方に参加する子が多いため、初めての審査の日は、長男にとっては初めての試合の日にもなりました。
初試合、親も手に汗握りながら応援しましたが、結果は惨敗。
頭のガードを外すと長男は大号泣で涙も鼻水も垂らしながら悔しがっていました。
(審査は筆記試験・体力試験・型の演技などによって行われ、試合の勝敗は関係ないため、無事に進級することはできました)
しかし、その日から家でも型の復習をしたり、主人相手に組み手をしたり。
長男は、より練習に真剣に取り組むようになりました。
そして、学年が上がり、小1になった長女も兄に影響され一緒に空手を始めることに。
もともと保育園時代にダンスやお遊戯が好きだった長女にとって、空手の型を覚えるのはその延長のような感じらしく、とっても楽しそう。
型にそってポーズを決めるのは、先に習ってた兄よりも得意な感じでした。
でも、組手になると急に勢いがなくなるそうで、「相手がいると怖いのか、なかなか難しいようです」と、先生もちょっと心配していました。
組手や試合形式の練習の方が、熱が入るというタイプが多いそうですが、長女は逆とのこと。
まぁ、女の子だから仕方ないかな・・・。
なんて思いつつ、2人とも審査と試合をおこなうことに。
親としては心配しつつも、ついに長男と長女の審査日&試合の日がやってきました。
試合直前、それぞれに目標を聞いてみると・・・。
長男「今まで習ったことを出し切って、今日は勝つ!」
2試合目ということで、前回ほどの緊張もなく、親から見ても良い目をしている長男。
試合前におこなう審査も、気合十分!
なんだか成長を感じ、これだけでちょっぴりジーンとしてしまいます。
片や長女は、審査はよいのですが、試合への参加はまだ難しかったかなという気も。
今回は、長男はトーナメント形式、初出場の長女は1試合のみの予定。
勝っても負けても1試合だけとはいえ、審査だけの参加にしてあげればよかったかなと思いつつ、抱負を聞いてみると・・・
長女「相手を泣かせたい」
と、何とも強気な発言。表情は意外にも、闘争心のかたまりのような感じ。
・・・え?
キミ、対戦形式の練習、大の苦手なんじゃなかったっけ?
親も戸惑いの中、まずは長男の1回戦がスタート。
出だしは順調。
冷静に突きや蹴りをいれつつ、相手からの攻撃はガードし、あまり受けていません。
そのまま試合時間は経過し、長男は判定勝ち!
技がびしっと決まったとはいえませんでしたが、習ったことをきっちりこなし、勝ちきったという感じでした。
初めての勝利に、本人よりも親が大興奮!!
試合をカメラで撮っていたのですが、判定の瞬間はめちゃめちゃぶれてしまいました(笑)
「1本取りたかったけど、勝てて良かった」
と、本人もホッとしたようでした。
そして、長女の試合。
その前の試合で、まともに相手の蹴りを受けてしまった女の子が試合中に倒れてしまったこともあり、主人は気が気ではないよう(すぐに意識は戻り、大事には至らなかったようです)。
勝ち負けよりも、とにかく怪我がないように祈っていたのですが・・・。
試合開始直後、なんと長女の回し蹴りが炸裂!
この蹴りに相手の選手が泣いてしまい、試合続行が不可能に。
結果、1本勝ち。
これには、横で見ていた先生と共にびっくり。
「長女ちゃんは、試合が苦手なタイプだと思っていたんですが、違ったんですかね~?」
「・・・そうみたいですね(いつもは猫かぶっていたな・・・)」
予言通り相手を泣かせた長女は、余裕の表情で観客席に戻ってきました。
感想を聞くと、
「楽しかった! あっという間に終わっちゃったよ」
となんとも頼もしい!
普段は同じ道場の友達ということで、あまり本気でできなかったとは本人の弁。
また、蹴ったり突いたりすると、自分も痛いので、練習時は加減していたとのこと。
試合は全く知らない子と対戦になるので、思いっきりできたと笑う長女に、主人はびっくりしたようでした(笑)
いやぁ、女は強いですね~!!
その後、長男は2試合目で今度は判定負けとなってしまい、やはり最後は悔し泣きとなってしまいましたが、充実した1日となったようです。
応援する親の方も、興奮したり、緊張したりと、帰るころにはぐったり・・・。
でも、子どもの成長や、意外な一面を発見する、貴重な経験ができました。
空手を習い続けて感じたこと
空手という習い事を通じて、長男も長女も、とにかく姿勢が良くなりました。
また、目上の人に挨拶を自然にできるようになったなとも感じます。
長女は相変わらず組手は苦手にしているようですが、型は本当にキレイにできるようになりました。
長男は、以前はクラスメイトとケンカをした時にすぐに手が出てしまうタイプでしたが、空手の技をケンカで使うことは先生から禁止されているそうで、手を出す機会が著しく減少していきました。
『本気を出せば、空手で鍛えている自分は相手よりも強い』
と思えるようになったことで、精神的に余裕が出たことも大きいようです。
現在となっては、後輩の面倒を見ている様子がうかがえます。
「強くなりたい」
という本人の希望で始めた空手ですが、予想よりもいろいろなものを子供たちに授けてくれたようです。
チャリダー主婦
中学2年生の息子と小学6年生の娘のワーママ