マミーサムって知ってる?育児中の手首や指の痛みについてクリニック理事長林裕章先生に伺いました

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普段でもよく耳にする腱鞘炎。これって実際にはどんな病状がでる病気なの?育児中の女性に多いといわれたり、慢性化しやすいといわれたりするけれど本当?そんな疑問について、林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生へお伺いしました。

赤ちゃんの抱っこや家事、スマートフォン操作を続ける中で、手首や指に「ピキッ」とした痛みを感じたことはありませんか。それは「腱鞘炎(けんしょうえん)」かもしれません。
腱鞘炎は手や指をよく使う人に起こりやすく、子育て中は抱っこ・授乳・おむつ替え・家事・スマートフォン操作で手首や親指に負担がかかり、特に産後の方に多くみられます。我慢していると、ペットボトルを開ける、ドアノブを回すといった日常動作までつらくなることがあります。今回は原因・治療・日常でできる工夫をわかりやすく解説します。

腱鞘炎とは?

手や指は、筋肉の力を骨に伝える「腱(けん)」というひも状の組織で動いています。その腱がスムーズに動くよう支えるトンネル状の部分が「腱鞘(けんしょう)」です。手や指を繰り返し使うと腱と腱鞘がこすれ合い、腱鞘が厚くなったり腱の表面が傷んだりして、痛み・腫れ・動かしにくさが出ます。これが腱鞘炎です。

代表的なものに、手首の親指側が痛む「ドケルバン病」と、指の曲げ伸ばしで引っかかる「ばね指」があります。日本整形外科学会も、ドケルバン病は妊娠出産期や更年期の女性、手をよく使う人に多いと説明しています。
産後のドケルバン病は、海外では「マミーサム」「ベビーリスト」という愛称で呼ばれるほど新米ママ・パパにありふれた症状です。育児中の親は1日に25〜30回も赤ちゃんを抱き上げるといわれ、その負担が積み重なります。「自分の使い方が悪いのでは」と気に病む必要はなく、育児を頑張っている証拠のような症状です。
最も多い原因は手や指の使い過ぎですが、それだけではありません。妊娠・産後・更年期などホルモン環境が大きく変わる時期は腱や腱鞘の状態が変化しやすく、症状が出やすくなります。とくに産後は、赤ちゃんのわきの下を親指と他の指ではさむようにして持ち上げる抱き方に注意が必要です。このとき親指が大きく開き、赤ちゃんの体重が親指の付け根の腱に集中してかかるため、負担が大きくなります。

腱鞘炎の治療方法

まず大切なのは、痛みの原因になっている動作をできるだけ減らすことです。手首を曲げたまま赤ちゃんを支えない、親指だけでスマートフォンを操作しない、重い荷物を片手で持たないなど、負担を減らす工夫が治療の第一歩です。
軽い痛みなら、ロキソプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の湿布や塗り薬で一時的にやわらぐことがあります。ただし市販薬は痛みをやわらげるためのもので、腱と腱鞘の負担そのものをなくすわけではなく、同じ動作を続けると慢性化することがあります。

妊娠中または妊娠の可能性がある方は、自己判断で湿布や痛み止めを使わないでください。NSAIDsは妊娠時期や薬の種類によって注意が必要で、妊娠後期には使用しないとされるものもあります。授乳中の方も、使用前に医師または薬剤師へ確認すると安心です。
整形外科では、サポーターや固定具で手首・親指を休ませるほか、痛みが強い場合は炎症を抑えるステロイド注射を行うこともあります。改善しない場合や再発を繰り返す場合には、腱鞘を少し広げる手術が検討されます。

固定具は一日中つけなくても、夜だけ手首をまっすぐ保つだけで痛みがやわらぐことがあります。寝ている間は無意識に手首を曲げがちで、夜間の固定がその負担を減らすためです。ドケルバン病へのステロイド注射はよく効き、多くは1〜2回で痛みが治まると報告されています。手術を恐れて受診をためらう必要はありません。
放置して自然に治ることもありますが、育児や家事で同じ負担が続くと改善しにくいことも少なくありません。痛みが長引く場合は、早めに整形外科で相談しましょう。

慢性化しやすいのはなぜ?

慢性化しやすい理由は、痛みの原因となる動作を毎日繰り返してしまうことにあります。完全に休ませるのは難しいので、負担のかけ方を変えることが大切です。
赤ちゃんを抱き上げるときは、手首だけで支えず、肘から手首までの前腕の広い面で支えます。わきの下をつかむのではなく、手のひらを上に向けておしり側からすくい上げると、親指1本に集中していた力が手のひら全体に分散します。左右の腕を交代しながら抱っこするのも、片側への負担の偏りを防ぐコツです。

授乳時は授乳クッションや枕を使い、赤ちゃんの体重を手首だけで支えないようにしましょう。抱っこひもを使う、家族に交代してもらう、重い買い物袋を片手で持たないことも役立ちます。スマートフォンは片手で親指だけの操作が長くなると負担がかかるため、両手で持つ・机に置く・音声入力を使う・長時間続けないなど工夫を。
痛みが強い時期に無理なストレッチやマッサージを行うと悪化することがあります。落ち着いてきたら、医師や理学療法士の指導のもとで無理のない範囲で動かしましょう。

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