前編の話
自分の話がうまく伝わらない・伝えられないと悩む子どもにどんなアドバイスができる? そんな悩みに、一般社団法人インナークリエイティブセラピスト代表 佐藤城人さんに前後編に分けてお答えいただきました。今回は後編です。
結論から話すとスッキリする
前回、一文が長くなると、分かりにくくなるとお話をしました。
ではなぜ、一文が長くなるのでしょう?大きな要因は、時系列で説明するから(結果から話そうとしない)です。
物事を説明する際、順序良く時系列で説明する方法と、結論から説明する方法。この2つに大別できます。
話が得意な人は時系列タイプでも、聞いている人を退屈させず、話している間に盛り上げることができるでしょう。しかし、「それで、結論はなに?」「結局、何が言いたいの?」と、家族や友だちから言われた経験があって、話すことが苦手な場合は、結論から話すほうがいいかもしれません。
例文で比べてみましょう。
Aー1 学芸会の演劇ですが、ずっと裏方ばかりだったから、舞台に出ることがなかったので、〇〇はストーリーがハッピーエンドで終り、登場人物が多く、大勢が参加できます。だから、私は賛成です。
Aー2 学芸会の演劇ですが、私は〇〇に賛成です。なぜかというと、ストーリーがハッピーエンドで終わり、登場人物が多く大勢が参加できるからです。
*たんに「賛成です」ではなく、あえて主語の「私」も加えてあります。
Aー1の例のように延々と話してしまうと、周囲はどのように受け止めるでしょう?
内心、「早く終わらないかな、何が言いたいんだろう?」と思うことでしょう。
再度、Aー1とAー2を見比べてください。接続詞の違いはなんですか?Aー1の時系列タイプは「だから」を用いています。
これに対して、Aー2の結論タイプは「なぜならば」です。会議や討論会など結論を先に述べた方が良い場面では、「なぜならば」を用いること。これがポイントです。
*「なぜならば」は少し硬い言葉です。そのため「なぜか(どうしてか)というと」「その理由は」などに言い換えるのもOK です。
この他、自信がない人の場合、説明が長くなる傾向があります。全部説明しないと分かってもらえないのではないのか、という不安感からです。
自分の感想や行動など、できる範囲からでいいので、短く言い切る断定口調を意識してください。これだけで自信が強まり、自己肯定感も高まります。
・荷物の方、お預かりします → 荷物をお預かりします
・とてもよかったかな、みたいな → とてもよかった
・渋谷とかで、映画とか観たりとかして → 渋谷で映画を観た
太字部分を言い切りの形にしてみました。この違いです。お子さんの自己肯定感も高めるためにも、言い切ることを意識なさってください。
誤解を防ぐために、事実と解釈を分ける
例文をお読みください。
Bー1 学校で太郎君に挨拶をしたら無視された。
この例文を、事実と解釈に分けてください。
事実は「学校で太郎君に挨拶をした。太郎君から返事がなかった」です。ラストの「無視された」は、あくまでも本人の解釈です。
この例文のように、事実と解釈を同じ文に混ぜると、聞いた相手が解釈=事実のように受け止めてしまいます。これが誤解やミスコミュニケーションを招きます。
この場合の対処法もシンプルです。
・主語と目的語を加えること
・一文を短く区切ること
心掛けることは、この2つでOKです。
上記のBー1の例文であれば、
Bー2 学校で太郎君に挨拶をした。しかし、太郎君からは返事がなかったよ。
このようにまず、事実だけを話して解釈と一旦区切れば、誤解は生まれませんね。
さいごに
「子どもは社会を映す鏡」といいます。話し方に悩む子どもが増えたとすると、大人の私たちも「話し方に悩む人が増えた」ということです。
まず、親がお手本を示すことが大事ではないでしょうか。その際、気をつけたいことがあります。相手への思いやりを意識してください。話し方に正しさはありません。
「正しさ」「分かりやすさ」ばかりを求めてしまうと、息苦しい社会になります。
話し方にまごつき、言い間違えた人がいるとします。その際、
・「間違えるな!」と怒鳴る
・「お互い様だよね」と許す
あなたは、どちらを選びますか?この選択が人間関係を形成するのだとしたら?
そして、言葉を用いる際は、正しさだけではなく、「美しさ」「心地よさ」という価値基準もある、このように私は考えています。
執筆者
佐藤城人(さとうしろと)
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会 代表
心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範
経歴
過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出合う。
各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5,000名様の悩みをサポート。
近年はヤングケアラーはインナーチャイルドの予備軍と位置づけ、お子さまや親御さまの支援にも力を入れている。
2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。
カウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
https://in-ct.org/