前回の話
合格発表の日の様子は第1話に書いた通りですが、合格と分かった後は、合格者登録をして入学までにやるべきことを洗い出したり、後期試験用に予約していたホテルをキャンセルするなど(キャンセル料が発生するまで3時間しかなかったので焦りました)、急ぎのことをこなしていきました。
地方公立塾なし娘の東大合格物語【13完結】大切なのは「勉強し続けられる学習体力と学習習慣」
そんな中で娘が学校に連絡すると、学校から、合格体験記の原稿を依頼されたようでした。
娘の高校では、毎年、合格した先輩方の勉強法や後輩に向けたアドバイスをまとめた合格体験記が発行されます。
東大は、入学前のオリエンテーションがたくさんあります。オンラインで受けるものから、3月下旬に上京して対面で受けるものまで毎日のように予定が組まれていて、引っ越しの準備も同時進行だったのでかなり忙しい時期ではありましたが、娘も先輩方の合格体験記を読んでモチベーションを上げたり励まされたりしてきたので、快諾したようでした(いつ書いたのかわかりませんが、メールで母校に原稿を送ったようです)。
慌ただしく引っ越して、大学の授業が始まってしばらくした頃、我が家に、娘の母校から合格体験記が届きました。
「合格体験記が届いたんだけど、そっちに送る?」
「次に帰省した時に読むから、送らなくていいよ。」
「じゃぁ、こっちに置いておくけど、ぽやんのところ、読んでいい?」
「・・・別にいいけど(笑)。」
というやりとりをし、娘の体験記を読ませてもらいました。
娘は、自分の勉強のしかたで上手くいったこともいかなかったことも正直に書いていて、最後は、支えてくれた先生方や家族、友人たちに感謝を述べ、後輩たちにエールを送っていました。
特別ドラマチックに書かれているわけでもなく、どちらかというと感情を抑えた、淡々とした書きぶりが娘らしいなと感じる文章でしたが、最後にこんなことを書いていました。
要約するとこんな感じです。
「大学入試(一般受験)のための受験勉強は、膨大な学習量を長期間続けなければならないので、やる気の有無に頼って勉強しようとすると、できない日も多くなります。だから、やる気の有無に関係なく、習慣の力で勉強したほうが良いと思います。一般入試で難関大に挑もうと思っている後輩のみなさんは、ぜひ、早くから、その日のノルマを達成するまで勉強し続けられる学習体力と学習習慣を身につけてください。」
私はこの文章を読んだとき、親バカですが、ちょっぴり涙が出てしまいました。
地方暮らしで、モチベーションを維持できるような塾もなければ情報も不足している環境で、よく勉強し続けたなぁという想いがわいてきてしまって・・・。
今思えば、確かに娘は、「今日はやる気が出ないから勉強できない。」ということがなかったなぁと思います。
もちろん、疲れている日や、気分が乗らない日もあったはずです。でも、中高の6年間、まったく勉強しなかった日というのが記憶になく、むしろ、「ちょっと休んだら?」と声をかけていたほどです。
我が家は、東大を意識したのは高校に入ってからで、小さい頃から東大受験のために勉強してきたわけではありませんでした。小さい頃は体が弱くて入院したりもしていたので、それどころではなかったんですよね。幼児教育は皆無でしたし、受験と名の付くものは高校受験しか経験がなく、英検等に取り組み始めたのも、他の東大受験生に比べたら、遅かったと思います。
それでも東大に現役合格できる力がついた理由があるとすれば、
・A4 裏紙や手帳を使ってのスケジューリングを身につけ、「その日のノルマを達成するまでやる」という家庭学習が習慣化していたこと
・学年1位をきっかけに、「自分は勉強で進路を開く」と娘自身が決めたこと
・高校は地域のトップ校に入り、心理的に東大が近くなったこと
ということくらいでしょうか。
でもこの方法も、娘にはフィットしたというだけで、万人がうまくいく秘策というわけではないと思います。(実際、同じように育てても、息子はルーティンより新鮮さを好むタイプだったので、娘とは異なる勉強法でした。)
ただ、私自身も、やる気の有無にまかせていてできなかったことも、習慣化したら達成できたという経験があるので、娘の言った「やる気の有無より習慣の力で」という言葉は、一理あるなと思っています。
「東大に合格すること」は、誰にとってもベストであるとは限りません。
でも、娘にとって、東大受験は人生最大のチャレンジだったので、自分でスケジューリングをして勉強し、望む結果を手にできたことは、大きな自信になったと思います。
スロースターターなところも、継続力があるところも、秘めた負けん気も、自分が持っているものすべてを総動員して、真っ向勝負で挑んだからこそ、納得の受験になったと思っています。
そして、これからの人生で難題に直面した時も、娘はこの受験の体験を糧にして、自分なりの方法で、きっと乗り越えていけると、信じています。
完
※ストーリーは実話を元にした創作マンガです。
[脚本]Maman [作画]dechi [編集・監修]ママ広場編集部
Maman
夫と大学生の息子・娘の4人家族。
学習教材制作業の傍ら、子どもの学習習慣の作り方や学習計画の立て方を伝えながら、スケジューリング(時間管理)とジャーナリング(書くこと)で幸せな親子を増やす発信を続けている。