言うことを聞かない子に「捨てるよ!」と言うのは、しつけとして逆効果になることがあります。教員歴十数年でJADP認定上級心理カウンセラーでもあるオンライン教育相談ボーダレススター代表の貞盛秀明さんが、「捨てるしつけ」の逆効果とリスクを徹底解説。子どもとの信頼関係を守り、今日から使える対応方法を提案します。

「何度言ってもゲームをやめない」「片づけないなら、もう捨てるからね」。
ご家庭からのご相談を受けていると、この「捨てる」という言葉がしつけの場面でよく使われていることに気づきます。私が小学校の教員をしていたころにも、保護者の方から「昨日、とうとうゲーム機を捨てました」と打ち明けられたことが何度かありました。
先にお伝えしておきたいのは、そう言いたくなる気持ちはもっともだ、ということです。何度も伝えて、それでも届かない。手持ちの札を使い切ったあとに出てくるのが、あの言葉です。責める話ではありません。
ただ、しつけの手段として見たとき、「大切な物を捨てる」はうまく機能しにくい方法です。理由を三つに分けてお話しします。
罰は「やめさせる」ことはできても、「代わりにどうするか」を教えられない
罰には、その場の行動を止める力はあります。しかしそこで子どもが学ぶのは「怒られないためにどうするか」であって、「どう振る舞えばよかったか」ではありません。
こども家庭庁がまとめた「体罰等によらない子育てのために」でも、叩いたり怒鳴ったりすれば恐怖心から一時的に言うことを聞くことはあっても、子どもがどうしたらよいかを自分で考えたり学んだりしているわけではない、と説明されています。物を取り上げて捨てる行為も、子どもの側から見れば構造は同じです。
教室でも同じことが起きます。忘れ物をした子を厳しく叱れば、その子はしばらく忘れ物をしません。ただ、多くの場合はその日だけです。持ち物をそろえる手順そのものを一緒に組み立てないかぎり、行動は変わりません。
子どもに残るのは「理由」ではなく、「奪われた」という感情
大人は「悪いことをしたから捨てられた」という因果関係を理解してほしくて罰を与えます。ところが子どもの記憶には、理由よりも先に感情が残ります。大切にしていた物がなくなった瞬間の衝撃と、その相手が親だったという事実です。
しかも、多くの場合その物は子どもにとって「自分の一部」です。集めていたカード、描きためた絵、遊び込んだおもちゃ。何を失ったかを、大人は正確には把握できていません。捨てた側が思っている以上に、その出来事は大きく残ります。
なお、2022年の民法改正で、しつけを理由とする「懲戒権」の規定は削除されました。あわせて、体罰だけでなく、子どもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないことが定められています。手を上げなければよい、という時代ではなくなりました。
いちばん大きな副作用は、相談してこなくなること
私がもっとも心配しているのはここです。
先ほどの国の資料にも、子どもが保護者に恐怖心を抱くと信頼関係が築きにくくなり、必要なときに悩みを相談したり心配ごとを打ち明けたりすることが難しくなる、という指摘があります。
困ったときに大人へ相談できる力は、学力よりも先に子どもを守ってくれるものです。友だちとのトラブル、お金の話、インターネットで出会った相手のこと。どれも、早く話してもらえるほど手が打てます。「言ったら取り上げられる」と学習した子どもは、その手前で口を閉じます。目の前の一回のしつけと引き換えに失うものとしては、あまりに大きい。
代わりにできる、四つの手順
では、どうするか。ご家庭で今日から試せる形にすると、次の四つになります。
○ルールは「事前に」「一緒に」決める
親が決めて通告する形にすると、子どもにとっては他人のルールです。「平日は何分までにする?」と本人に言わせてください。多少甘い数字が出てきても、そこから交渉すればかまいません。自分で口に出したルールは、守れなかったときの話し合いの土台になります。
○予告する。そして選ばせる
いきなり「やめなさい」ではなく、「あと十分で終わりね」と予告します。そのうえで「今すぐやめる?キリのいいところまでやってからにする?」と、二つとも大人が困らない選択肢を出す。子どもは自分で選んだ形を取れると、驚くほど素直に動きます。
○声かけは短く、主語を「私」にする
「なんで何回言ってもわからないの?」は、人格への評価として届きます。「約束の時間を過ぎているから、お母さんは心配になる」と、主語を自分にして、事実を一つだけ伝える。長く言うほど内容は薄まります。
○振り返りは、落ち着いてから
その場で反省させようとしても、興奮しているあいだは言葉が入りません。数時間後や翌日に、「昨日のあれ、どうしたらよかったと思う?」と聞く。責める場ではなく、次の作戦会議として開くのがコツです。
もう捨ててしまった、という場合
すでにやってしまった方もいると思います。私は、取り返しがつかないとは考えていません。やることは三つです。
まず、謝る。「あのやり方はよくなかった」と、親のほうから言葉にします。
次に、埋め合わせをする。まったく同じ物は戻らなくても、一緒に選び直す、代わりの時間を作るといった形で構いません。
そして、約束を作り直す。「次に同じことが起きたら、捨てるのではなくこうする」と、先ほどの手順で決め直します。
大人が間違いを認めて謝る姿は、子どもにとって最良の見本になります。失敗しても関係はやり直せる、と体験として学べるからです。
家庭の工夫だけで抱えないでください
ここまでお伝えした方法は、あくまで日常の範囲での工夫です。何を試しても行動が変わらない、家庭の中で怒鳴り合いが日常になっている、保護者の方自身が限界を感じている。そうした場合は、学校のスクールカウンセラーや自治体の子育て相談窓口、必要に応じて医療機関など、外の専門家に早めにつないでください。相談は、手に負えなくなってからするものではありません。
子どもは、育つ環境を自分で選べません。だからこそ、選べる側の私たち大人が手立てを持っておく。「捨てる」以外の札を三枚持っているだけで、家庭の空気はずいぶん変わります。
参考
・こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」(令和2年2月)
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/taibatsu
・法務省「民法等の一部を改正する法律について」(懲戒権に関する規定等の見直し)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html
※本記事は一部生成AIを活用して記事のチェック・校正を行っています。最終的な内容確認およびファクトチェックは、実績のある専門家が実施しています。
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