視力って測定値が正確じゃないの?裸眼の視力と眼鏡をした視力、どちらで判断すべき?そんな疑問に、 医療法人SCM 新川中央眼科院長 小川 佳一先生から前後編に分けてお答えいただきました。今回は前編です。
眼科医は視力をどこで見る?
皆さんは視力=近視の程度と思っていませんか?
視力という数字が出ると、どうしてもキッチリ・カッチリした値のように感じてしまいます。しかし視力検査は自覚検査といって「見えますか?見えませんか?」と聞いているだけの検査です。
その時の体調や集中力などによっても変わりますし、視力が同じだからといっても近視の程度は人によって違います。さらにお子さんの場合、「眼鏡に対するあこがれ」が出ている時などは本人が嘘をついているわけではないのですが、非常に低く出てしまうこともあります。
眼科医は裸眼視力をほとんど気にしていません。医学的には眼鏡をかけて一番視力が出ている時の矯正視力が1.0以上であれば正常とします。この最高視力を出すのに必要な眼鏡の度数(D)(ジオプター)が近視や遠視の程度ということになります。
ですから、皆さんも裸眼視力で評価するのは誤解や偏見のもとになりますので気を付けてください。
近視の決め方
近視や遠視というのは視力で決まるものではなく、ピントのずれ具合です。眼はカメラと同じ構造をしていますが、何もしない状態で網膜(フィルム)にピントが合っていれば正視といって眼鏡のいらない理想的な状態です。
ピントの位置が網膜よりも前にずれている人を近視、後ろにずれている人を遠視と呼びます。ピントと網膜のずれている距離が眼鏡の度数(ジオプター)です。
レンズからピントまでの距離は生まれてからあまり変化しないのですが、眼球のサイズは大きくなっていきます。乳幼児は眼球が小さいため軽い遠視のことが多いのですが、成長に伴ってだんだん遠視の量が減り、正視に近づいてきます。正視を通り越してさらに大きくなってしまったのが近視です。
成長の過程で眼が近視化していくのは当然で、背が伸びるのを抑えることができないのと同じように眼球の成長を止めることはできません。でも、やはり大きくなりすぎるのも困ります。
では、眼鏡をかけると近視が進むというのは本当でしょうか?
眼鏡をかけると眼球が成長するなんてないですよね。ですから少なくとも適正な眼鏡をかけていれば、近視の進行とは関係ないのです。
どうして眼球が大きくなるの?
眼球が大きくなる要因には遺伝的要因と環境要因の二つがあります。
背の高い両親のお子さんは背が高いことが多いのと同じで、近視のご両親のお子さんが近視になる確率は高くなります。こればかりはどうしようもありません。私たちができるのは環境要因の改善です。
昔からテレビの見過ぎが良くないと言われていましたが、どうなのでしょう。
実はそれほど関連性がありません。もちろんテレビの見過ぎは眼が疲れてしまいますから健康上はよくありません。
昔、近視はピント合わせの筋肉の問題と考えられていた時代があったために、言われていたことなのです。
ただ、テレビやタブレット・スマホなどデジタルデバイスの液晶画面はヒトの眼のピント合わせの機能に負担がかかるため、斜視を起こす可能性もあります。ほどほどにしたほうが良いのは間違いありません。
一般的にテレビを含めすべてのデジタルデバイスの使用時間は1日最大2時間以内、1時間の毎に15分以上の休憩をとることが推奨されています。
今回は、眼科医の視力の見方や、近視の仕組みについてお話ししました。
次回は近視の治療法や、ブルーライトについてです。
後編へ続きます。
執筆者
小川 佳一先生
新川中央眼科院長
札幌生まれ 平成8年旭川医科大学卒業
札幌医科大学眼科学教室で研修し、旭川厚生病院、苫小牧市立総合病院、道立江差病院、札幌医科大学付属病院を経て平成18年新川中央眼科を開業。
札幌医科大学では斜視弱視外来のスタッフとして斜視・弱視、先天性白内障などの小児眼科を担当。
専門の斜視・弱視、屈折矯正、白内障手術だけではなく、開業後、総合病院では少なかった「眼科不定愁訴」の訴える患者が多いことから、ドライアイやマイボーム腺の疾患に興味を持ちドライアイ研究会・LIME研究会に所属し積極的に治療に取り組んでいる。
新川中央眼科ホームページ
https://www.shinkawa-med.jp/