子どもの頃にどんな習い事をしていましたか?今回は医療法人社団 光志会 奥原歯科医院理事長、奥原 利樹先生から意外なお話をお伺いしました。
こんな幼少時代を過ごしました
「いったいどのような学校で、どんな教育を受けさせたら子どもたちは幸せになれるのだろうか?」親なら必ずぶつかる悩みだと思います。
私は長男で一人目の子どもです。地方の公立小、中、高を出て一年浪人後国立の歯学部に入学。現在は歯科医師10人、総スタッフ50名を越える医療法人の理事長として、また現役の歯科医として毎日笑顔で忙しい日々を過ごしています。
今日は私がどのような幼少期を過ごし、どんな習い事をして今のポジションにたどり着いたのか?体験談のレベルですがお話したいと思います。
まず私の性格ですが、幼少期ものすごい引っ込み思案で人前に出て発言したり、子どもっぽくはしゃぎ回って馬鹿をしていた思い出はほとんどありません。保育園に通っていた時には保育士さんのエプロンにしがみついて後ろに隠れている位の子どもでした。
竹を割ったように自分の思ったことを言えて、どこのグループでも中心でリーダーとして輝いている母はいつもそんな私をイライラして見ていたようです。加えて自分は「おねしょ」が治らず小学校4年くらいまでしていました(笑)
あまりにものをしゃべらないのでママ友から「特別支援学級に入れた方がいいのでは?」と言われ、母も色々と悩んでいたようです。
家系的にもいとこのほとんどが大学には進学せず、大工や美容師のような職人や技術職になっており、大学に進学したのは私が初めてでした。
両親も共働きで、学校から家に帰って来た時に電気がついていたのは年に数回くらいしかなかった気がします。小学校時代は4つ下の妹の保育園のお迎え(当時は子どもでもOKでした)、食事の準備、洗濯等など、今でいうヤングケアラー状態で、家の経済状況もあり高校卒業まで学習塾と名の付く所には一度も通った事がありません。
子どもの頃に唯一やっていた習い事
唯一通わせてもらったというか、通わせられていたのが「そろばん塾」です。
小2から小6まで通っていました。そこは近所の退職したおじさんが安い授業料で教えていたのでほぼ毎日、学童感覚で通っていました。
今から思えば、頭の中にそろばん玉がインプットされ、右脳(感性)が発達したのは後の人生でとても役に立った気がします。
なので小学校時代にした勉強は「そろばん」と「学校の宿題」だけです。本を読むような環境の家でもなかったので、本を読んだ記憶もほとんどないです。ただ真面目な性格だったのか?それしかやることがなかったからか?漢字のドリルとか計算ドリルなど出された「宿題」だけは全てもれなく提出していました。
中学校でも学校の授業と宿題だけで80点位は取れていたので、地元の公立2番手校に進学しました。この80点というのはそろばんの合格点であり、この点数がクリアできればいい!という概念が頭にしみついていたのでそれ以上の欲もありませんでした。
習い事も大事ですが、今もなお役立っていると感じるのは・・・
今歯科医師となり幼少期を振り返ってみると、一番役に立っており自分のアドバンテージと感じるのはその当時に料理、洗濯などの家事(お手伝い)をやらされていたことです。
医師や歯科医師になることが最終目標でしょうか?自分は違う気がしています。
学習塾や各種習い事をさせて進学校に入れ受験テクニックを叩き込めば、医師になることは可能だと思います。
ただ社会に出て必要なものは学歴ではなく「気遣い」や「やりくり」「手際の良さ」ではないでしょうか?
「お手伝い」をさせる事は決して無駄な事ではありません。
お友達の成長と比べて焦り、競うように複数掛け持ちで塾通いをさせ、ご両親も疲れ果て子どもにもあたってしまう・・・今のご時世自分の教育の価値観を貫く事はとても難しいと思います。ある程度周りと合わせる事も必要でしょう。
ですがもし許されるのなら、日曜日だけでも「お手伝い」をさせる日をつくってあげて欲しいと思います。一番のおすすめはお父さんやお母さんと一緒に下ごしらえから洗い物まで一連の「料理」の流れを経験させることです。これは「やりくり」「手際の良さ」を身に着ける一番の方法だと思います。
加えて高校になって物理、化学を学ぶときに非常に役に立ちます。そして自分で考える訓練にもなります。「漬物にするとなぜ水が出てくるのか?」「卵はなぜ焼くと白く変性するのか?」「どのように洗い物を並べたら一番早く水切れするか?」など。
「洗濯ものを干す」これも非常に有効です。「どのようにしたらしわができず、均等に太陽光に当てられるのか?」「雲の流れで天気を予想する」などすべて自然科学と直結する生きた教材になります。
幼少期「おとなしい」ことは決して悪い事ではありません。大人の気持ちが先読みできてしまい、気遣い故に「言葉を選んでしまっている」のかもしれません。
思慮深い性質は大器晩成型の可能性が高いと感じます。
ご両親には是非とも大学受験を突破することをゴールにせず、その先の子どもの充実した人生も視野に入れて「教育」というものを考えていただけたら幸いです。
最後に余談ですが、自分は「そろばん」以外の習い事は何もしていませんが、今はピアノ、ギターの引き語り位はできますし、作詞作曲したり、時々ライブでセッションしたり、本の執筆なども行ったり毎日充実した日々を過ごしています。
[執筆者]
奥原利樹先生
医療法人社団 光志会 奥原歯科医院 理事長
[プロフィール]
1963年長野県松本市生まれ。1989年広島大学歯学部卒業。
1996年埼玉県所沢市に奥原歯科医院を開業。その後医療法人を立ち上げ2007年に現在の自社ビルに移転し開業27年目。
一般診療のみならず、20年前から居宅、施設、精神科等への訪問歯科診療(往診)も積極的に行っている。
「1本1本の歯に対する患者さんの気持ちに徹底的に寄り添う」姿勢を守り続け、現在はチェアー12台、歯科医師10名を含む総スタッフ50名の医療法人社団光志会理事長として、
また現役の歯科医師として現場で若いドクターの教育に診療に奮闘中。
長女(歯科医師、大学院在籍)長男(国立大学歯学部在籍)の二児の父でもある。2021年よりSDGs、CSRを実践するため、障がいを持つ方の就労支援や「福祉マーケット」の定期的な開催、運営にも力を入れている。
著書「やっぱり、歯科医って素晴らしい!!」Discover21
「歯科医志望者が絶対に知っておくべき32のこと」幻冬舎
奥原歯科医院 ホームページ
http://www.koushikai17.or.jp/