セミリンガル(ダブルリミテッド)とはどんなもの?どうして母国語が大切なの?
今回はそんなお話を、自身もオックスフォード大学留学経験がある、新見正則医院院長、新見 正則先生にお伺いしました。
なぜ母国語が大切なの?
初等教育で一番大切なものは国語(母国語)と思っています。母国語を読んで論理的な思考を経て文章の内容を理解する能力、そして自分が論理的な文章を書き下ろす才能が大切です。また、言葉から感情をくみ取り、行間の意味もわかることが大切なのです。
つまり言葉を生きるための手段以外に、教養を養うための才能に加えることが大切なのです。
二つの外国語で、論理的思考ができて、かつ適切に感情を語れればバイリンガルと呼ばれます。頭の中にまったく別の母国語による思考回路があるということです。
喩えるとコンピューターが2台備わっている状態です。
幼少期から複数の言語に接していると、本当の意味でのバイリンガルになれます。また、ある程度年齢を重ねても、若ければバイリンガルへの道も閉ざされてはいません。
セミリンガル(ダブルリミテッド)とは?
そんな特殊な環境で運良く生きられるひとにはバイリンガルへの道が開かれます。
ただ、そんな特殊な環境でも運悪く、どの言語も中途半端になることがあります。
日常会話、つまりサバイバル会話はできるけれども、論理的展開が苦手で感情の機微を表現できないということです。
学校で友だちとの会話はなんとかできても、授業についていけないなどがわかりやすい例です。それをセミリンガルや、ダブルリミテッドと呼びます。
親が子どもにできること
親として必要なことは、子どものためにひとつの言語を母国語としてしっかり鍛えてあげることです。
幼いときは、本を一緒に読んだり、会話したりする時間をたくさん用意してください。ある程度大きくなれば、ひとりで書籍を読む練習を課してください。
いろいろな話題について討論をすることも大切です。感情の変化を語ることも言語の練習になります。
母国語の能力が、他の教科を勉強するためにも、将来社会で生き抜くためにももっとも大切な才能です。
いま、セミリンガルで困っている場合は、両方を完璧にすることよりも、どちらかを母国語に決めて、軸足を決めて、その言語を母国語になるようにしっかりと学ぶことが大切です。
最初からバイリンガルを目指すと中途半端になりかねません。しかし、セミリンガルの環境から、本当のバイリンガルになる可能性は少なくありません。
僕は33歳から5年間、オックスフォード大学博士課程で免疫学の勉強に励みました。
英語ですべてを勉強しましたが、所詮、日本語で考えて、それを英訳していました。
僕の母国語は日本語だからです。もちろん、慣れると自然と日本語を介さずに英語で考えることもできました。
しかし、そこには母国語の日本語がベースにあるのです。
娘には子どもの頃から英語に親しむ環境を整えました。幸い高校在学中に英検は凖1級、そしてIELTSは6.5点を取りました。
しかし、所詮日本での環境にて、まず娘には「国語が一番大切だよ!」というメッセージをいつも送っていました。
日本語で語り合い、討論し合い、そして日本語を書き下ろすことも教えました。
そして娘に複数の外国語に接してもらうために、まず自分が中国語の勉強を始めました。
そんな親の姿をみて娘は中国語も自然と学んでいました。中国語は受験とは無縁ですが、幸いにも中国語検定であるHSKの4級を高校在学中に取得しました。
娘はバイリンガルにはほど遠いです。日本語が母国語の可愛い女の子です。彼女の将来に、英語や中国語も役に立つことを願っています。
執筆者
新見正則先生
新見正則医院院長
[経歴]
1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。
2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。
20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。
現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。
最新刊『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』はAmazonでベストセラーに。
新見正則医院ホームページ
https://niimimasanori.com/