叱っても叱っても約束を破る子どもにどう対応したらいい?臨床心理士の視点からお答えします。

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1度叱られことを何度もしてしまう子どもの心理

子どもは、いま、を全力で楽しんでいます。(「約束を破る子どもの心理」記事参照)前に叱られたことを忘れるくらい、今に熱中し、興奮しているといえます。そのため、1度叱られたことも、つい忘れてしまい、興奮が落ち着いてから「ついやってしまった」と思い出すということが繰り返されがちです。
他に子どもの心理として、叱られたことを重大に捉えていない、ということが考えられます。人は、過去の行動に対する結果自分にとって良いことが起こったのか、悪いことが起こったのか、によって次の行動を選択します。(「約束を破る子どもの心理」記事参照)望ましくない行動に対して「ダメだよ」とサラッと伝えた、だけでは、親子間の「次もやってはいけない」と思う度合いに差が出てきてしまっているのかもしれません。1度叱られたことを何度もしてしまう子どもへの対応としては2つ考えられます。

叱られたことを何度もしてしまう子どもへの対応

まず1つ目は、子どもが興奮する前に約束事を伝えるということです。そして、伝えるのはなるべく直前にしましょう。例えば、電車の中で何度言っても飛び跳ねてしまう子どもへの対応を考えてみましょう。
まず、興奮状態に入る前、ワクワクしているかもしれませんが、お家を出る前が良いタイミングでしょう。同じ目線で、向かい合って目を合わせましょう。そこで簡潔に電車内での過ごし方を伝えましょう。「電車に乗る時は、静かに座ります。お膝とお膝はくっつけます。お話しする時は小さな声でお話します。」このように、「〇〇しない」ではなく、「〇〇しましょう」のように、望ましい行動を簡潔に伝えることがポイントです。これを何度も繰り返すことで、子どもの中で約束事が定着していきます。

対策の2つ目は、やってしまった後すぐに叱り、子どもから気持ちを聞くことです。例えば、友達のおもちゃを何度も取ってしまう子どもへの対応を考えてみましょう。
タイミングはおもちゃを取った後すぐです。その場で子どもの手を止め、目線の高さ、視線を合わせて「友達のおもちゃを取ってはいけません」と真剣な顔で伝えましょう。大声や怒鳴る必要はありません。真剣な顔とトーンで、視線を合わせて伝えることで、子どもには十分に重大さが伝わります。そして次に、「どうしておもちゃを取ったの?」と子どもにその状況や気持ちを聞いてあげてください。「遊びたかったから」など気持ちを伝えてくれたら、「遊びたかったんだね。面白そうなおもちゃだもんね。でも、勝手に取るのはよくないね。」と共感を示しましょう。そして、「じゃあ、欲しい時はどうしたら良いのかな?」と次の望ましい行動を考えるようにうながします。子どもの気持ちに寄り添いつつも、良いと悪いのメリハリが自分でつけられるような関わりをしていくことが重要です。

これらの対応策は、どちらか1つやれば良い、ということではなく、必要に応じて組み合わせていただくのがおすすめです。例えば、児童館にいく前に約束を確認する。そしてもし起こってしまったらその場で注意する、といった組み合わせです。
毎日子どもと接する中で出来ること、出来ないこと、親御さんの気持ちのタイミングもあるでしょう。小さなことから、大きなことまで、その場の約束事をつくるよりも、日頃からおうちのルール、習慣として生活の流れをつくっていくことで、安定した生活が送りやすくなります。

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執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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