子どもが長時間背筋を伸ばして座っていられない。すぐに前のめりになってしまう。やっぱり、体幹を鍛えた方がいいのかな?そんな疑問について、たけうちファミリークリニック院長の竹内雄毅先生にお伺いしました。

気になる「体幹」のホントの話
クリニックの診察室で、お子さんの姿勢についてご相談を受ける機会が増えています。「うちの子、食事中にぐにゃぐにゃしてしまうんです」「スマートフォンを見ている時の猫背が気になって・・・」。こうした保護者の皆さまの悩みは、今や特別なものではありません。そして、その会話の中で必ずと言っていいほど登場するのが「体幹」というキーワードです。
この記事では、小児外科専門医の立場から、子どもの「体幹」と成長について、保護者の皆様に本当に知っておいていただきたいことを、医学的根拠に基づいて解説します。特別なトレーニングではなく、日々の生活の中で、お子さんの健やかな未来を育むためのヒントをお伝えできれば幸いです。
なぜ今、子どもの「体幹」が注目されるのか?
そもそも、なぜこれほどまでに子どもの「体幹」が注目されるようになったのでしょうか。その背景には、現代の子どもたちを取り巻く生活環境の大きな変化があります。
かつて子どもたちは、外で駆け回り、木に登り、友達と体をぶつけ合って遊ぶ中で、自然と体を上手に使う能力を身につけていました。しかし、現代ではどうでしょう。室内での遊びが増え、スマートフォンやタブレットに触れる時間が長くなりました。生活様式も変化し、畳の部屋でしゃがんだり立ったりする機会は減り、椅子とテーブルでの生活が当たり前になっています。
こうした変化は、子どもたちの身体に静かな影響を及ぼしています。最近では、しゃがむ、前屈するといった「基本的な体の動き」が苦手な子どもが増えている傾向にあります。特に、足の裏を床につけたまま深くしゃがめない子は、足首や股関節の柔軟性が十分に育っていない可能性があり、将来的に怪我をしやすい体になるリスクも考えられます。
つまり、「体幹が弱い」という問題は、単に筋肉だけの話ではなく、多様な動きの経験が減ったことで、体全体を協調させて動かす神経の発達や、関節の柔軟性が十分に育まれていない、という現代の子どもたちが抱える課題の表れでもあるのです。
「体を上手に使う力」が育つ時期と重要性
保護者の皆様から「体幹は何歳から意識すればいいですか?」と尋ねられた際、私は特定の年齢を挙げることはしません。なぜなら、子どもの成長は一人ひとり異なり、体を上手に使う力は、生まれてからずっと、段階的に発達していくものだからです。
「体幹」というと、腹筋や背筋といった筋肉をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、医学的には、体の中心部にあって姿勢を支え、手足をしなやかに動かすための「土台」となる機能全体を指します。この土台は、乳児期の寝返りやハイハイ、幼児期の歩行や走行といった一つひとつの運動経験を通じて、脳からの指令と体の動きが連動することで、少しずつ築き上げられていきます。
特に幼児期は、神経系が著しく発達する『ゴールデンエイジ』の入り口にあたります。この時期に、走る、跳ぶ、投げる、転がるなど、多種多様な動きを経験することは、脳のさまざまな領域を刺激し、体の動かし方を学習する上で非常に重要です。特定のスポーツで同じ動きを繰り返すよりも、さまざまな遊びを通じて全身を動かすことが、結果としてバランス能力や巧みさを高め、しなやかで強い体幹機能の育成につながるのです。
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