「受験の朝になると必ずお腹が痛い」「発表会の前にトイレから出てこない」―そんな子どもの様子に、心配になったことはありませんか?

実は、強い緊張や不安からお腹の調子を崩してしまう子どもは少なくありません。この症状は「気のせい」ではなく、れっきとした「体と心のつながり」による反応。とはいえ、どう接していいのか分からず戸惑う保護者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、ストレスやプレッシャーによって起こる子どものお腹の不調について、原因や対処法、治療法、そして親としての寄り添い方まで、わかりやすく解説します。「うちの子もそうかも・・・」と感じたら、まずはここから一緒に理解を深めていきましょう。
受験や発表会でお腹が痛くなる子どもが増える理由とは?
誰でも緊張するとドキドキしたり、手に汗をかいたりしますよね。実はそれと同じように、腸も緊張に敏感に反応しやすく、腹痛や便意につながることもあります。一時的な緊張による腹痛であれば、心配しすぎる必要はありませんが、同じような症状が繰り返されたり、学校に行けなくなるほどつらい場合は、「機能性消化管障害(FGIDs:Functional Gastrointestinal Disorders)」という慢性的な胃腸の不調が関係していることもあります。
機能性胃腸症とは、検査をしても特に異常が見つからないのに、お腹の痛みや下痢・便秘などが続く状態をいいます。小学生や中学生でも見られ、日本では中学生の2〜5%、高校生の5〜9%がこの症状に悩んでいるという報告もあります[※1]。特に、まじめで頑張り屋さん、あるいは内向的な性格の子ほど、こうした不調を抱えやすい傾向があります。また、家庭内での会話の少なさや、親の期待、周囲との比較などが、知らず知らずのうちに子どもの負担になっていることも。「またお腹が痛いの?」「行きたくない理由を作ってるだけでは?」と決めつけず、まずは子どもの感じている「つらさ」に寄り添うことが、解決への第一歩になります。
機能性消化管障害(FGIDs)とは?
検査では異常が見つからないのに、腹痛や下痢、便秘、胃の不快感などが続く―それが「機能性消化管障害(FGIDs)」と呼ばれる状態です。子どもが「お腹が痛い」と訴えても、血液検査やレントゲン、内視鏡検査で異常が見つからないと、「気のせいでは?」「さぼりたいだけでは?」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、機能性消化管障害(FGIDs)はれっきとした病態であり、「脳と腸のコミュニケーションの不調(脳腸相関の乱れ)」や、「腸の神経が過敏になる」ことが原因で起こると考えられています。小児は特に生活や環境の影響を受けやすく、たとえば、進学や発表会、友人関係、家族の会話、さらには成績や受験といった心理社会的なストレスが、強く影響します。また、子供は症状をうまく言葉にできず、「なんとなく気持ちが悪い」「朝は食べたくない」「学校に行きたくない」など、曖昧な表現になりやすいことも特徴です。
主な機能性消化管障害(FGIDs)の種類と特徴
機能性消化管障害(FGIDs)はさまざまなタイプがありますが、代表的なものに「機能性ディスペプシア(FD)」「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」「過敏性腸症候群(IBS)」の3つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1) 機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)
機能性ディスペプシア(FD)は、胃の痛みや食後の不快感、胃もたれといった「みぞおち周辺の症状」が続く病気です。検査では潰瘍や炎症などの異常は見つかりませんが、「食後すぐにお腹いっぱいになる」「朝ごはんが食べづらい」といった訴えが特徴です。子どもでは、胃のムカムカ感や食欲不振として現れることが多く、「食べたくない」とだけ訴えることもあります。FDの一部は、次に紹介するNERDと重なることがあります。
2) 非びらん性胃食道逆流症(NERD:Non-Erosive Reflux Disease)
非びらん性胃食道逆流症(NERD)は、逆流性食道炎に似た症状があるにもかかわらず、内視鏡では炎症が見られないタイプの疾患です。胸やけやのどの違和感、胃酸が上がってくるような「呑酸(どんさん)」といった症状が見られます。子どもでは「のどがおかしい」「気持ち悪い」といった曖昧な表現をすることもあり、咳や食欲不振が初発症状になることもあります。
3)過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)
最もよく知られているのが、過敏性腸症候群(IBS)です。IBSは、腹痛に加えて下痢や便秘、あるいはその両方を繰り返すことが特徴の病気です。排便によって一時的に痛みが軽くなることも多く、「朝だけお腹が痛い」「学校に行く前にトイレにこもる」といった形で症状が現れることがあります。IBSには「下痢型」「便秘型」「混合型」などのタイプがあり、症状に応じた対応が求められます。子どもでは登校への不安や緊張が大きな誘因となることが多く、学校生活に支障をきたすケースも少なくありません。
機能性消化管障害は、「検査で異常がないから問題ない」のではなく、「検査で異常が見つからないけれど、つらい症状がある」状態です。思春期の子どもにとって、ストレスをうまく処理する力はまだ発展途上。だからこそ、「体の症状として出る」ことがあるのです。「またお腹が痛いの?」と否定せず、まずは疾患への理解を深め、親子で共有する姿勢が、改善への第一歩になります。
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