子どものメイクや髪染めは賛成?過剰にこだわる場合には認知の歪みが原因かも?ルッキズムと親ができる対策についてお教えします。

最近気になる話題の「ルッキズム」、どう対処すればいい?どのくらいから相談を視野にいれたらいいんだろう?
そんな悩みについて、メディアでもご活躍中の臨床心理士である大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さんにお伺いしました。

なぜ、外見で判断してしまうの?


まず、基本的なお話として、批判を恐れずにお伝えしますが、人間は本能的に外見で他者を判断する傾向があります。過去の研究では、生後間もない乳児ですら魅力的な顔の人を好むという結果が示されています。また、仕事ができるかどうかも瞬時に判断しているという研究もあります。

では、なぜ人は見た目で判断するのでしょうか?
それは生存に有利だからだといわれています。
例えば、左右対称の顔を本能的に魅力的だと感じるのは、遺伝的に健康な人ほど左右対称であるとされているためです。左右対称性が失われる原因には、病気や生活習慣の乱れなどが考えられます。無意識のうちに、左右対称の人の方が健康で、子孫繁栄に適していると感じてしまうのです。

では、何が問題なのでしょうか?
アメリカ精神医学会が発行するDSM-5によると、醜形恐怖症(身体醜形障害)は、他人には見えない、または非常に些細な外見上の欠点に対する過度な心配から、社会的な問題が生じる精神疾患です。以下のような行動が見られる場合、注意が必要です。
・必要以上に身体の美醜にこだわる
・他人と自分の外見を過剰に比較したり、批判する
・過剰なダイエットをする

外見が気になるのは普通のこと。でも過剰な態度には要注意。

最近では、SNSにおける写真や動画の影響で、子どもたちは幼い頃から外見に対する敏感さが増しています。これにより、「もっとキレイになりたい」「痩せなければならない」といった思い込みが強まる傾向が見られます。
こうした思い込みが強くなると、子どもは自分の外見に対して過剰に批判的になることがあります。例えば、「自分は他の子より劣っている」「痩せていないと友達ができない」といった極端な思考におちいることもあります。このような認知の歪みは、現実を歪めてとらえることから生じ、自分や周囲に対して不合理な思い込みを持つ原因となります。

成長期において、子どもがメイクや髪染めに興味を持つのは自然なことです。子ども時代は「自分は何者なのか」を探し求める過程であり、メイクや髪染めはその手段の一つです。しかし、認知の歪みが深まると、外見に対する過度なこだわりが生じ、例えば外出に何時間も準備をかけたり、逆に外見が気になりすぎて外出できなくなったりすることもあります。また、過度なダイエットに走る場合もあります。このような認知の歪みが加速すると、最終的には醜形恐怖症(身体醜形障害)に発展する可能性もあります。早めに気づき、適切な対応を取ることが大切です。

親ができる対策としては、まず子どもの話に耳を傾けることが重要です。「そう感じることもあるよね」と共感を示しながら、内面的な価値にも目を向けさせるようなサポートを心がけましょう。一方的にメイク道具を取り上げたり、叱るのではなく、寄り添う姿勢が大切です。

以下のような兆候が見られた場合は、専門家に相談することを検討しましょう。
・外見に関する過度な批判や不安を常に口にする
・食事を極端に制限したり、過度な運動をしている
・鏡を頻繁に確認したり、他人との外見の比較に苦しんでいる
・外見に対する強い不安やこだわりから、学校や友達との関係に支障が出ている

外見に対する不安や悩みが日常生活に影響を与えている場合は、医師や臨床心理士・公認心理師といった専門家への相談を検討しましょう。カウンセリングを通し、認知の歪みを軽減し、健康的な自己認識を取り戻す助けになります。

執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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