
食卓ですぐ試せる6つの「ラクになる工夫」
肩の力を抜いて、できそうなものから試してみてください。
(1)テレビを消して、おもちゃを片づける。
子どもの脳は「あっちもこっちも気になる」状態がデフォルトです。入ってくる情報を減らしてあげるだけで、食事への集中がぐっと変わります。気が散る要因の少ない食事環境では、子どもの食のむらが軽くなると研究でも確認されています[9]。
(2)15~20分を「ごちそうさまの目安」にする。
「年齢×2~3分」が集中の目安なら、30分完食を目指す必要はありません。短くても「座ってられた!」という成功体験のほうが、次の食事へのやる気につながります。
(3)食事の2時間前からおやつとジュースをストップ。
空腹は最強の調味料。午前中にたっぷり体を動かして、お腹ぺこぺこで食卓に着く。これだけで食べっぷりが違ってきます。
(4)親が同じものをおいしそうに食べる。
研究で繰り返し効果が示されているのがこの「モデリング」。大人が「これおいしいねえ」と食べている姿は、「食べなさい」の100回分の説得力があります[10]。
(5)同じ食材でも切り方や調理法を変えて再登場させる。
茹でブロッコリーがダメでも、スープに入れたら食べた、ということはよくあります。見た目や食感が変わるだけで「別の食べ物」として受け取る子どもは多いもの。繰り返しの「出会い」にバリエーションをつけてあげると、受け入れの確率がぐっと上がります。
(6)小さな「できた」を一緒に喜ぶ。
自分でスプーンをすくった。苦手な食材を触ってみた。「すごいね!」の一言が、脳の報酬系を刺激して「食事の時間って楽しい」の回路をつくっていきます。
家族で一緒に食べるだけで、子どもの心は育つ
お行儀や栄養バランスの前に、もっと根っこのところで大切な事実をお伝えしたいと思います。
「家族で一緒に食べている」。ただそれだけで、子どもの心身の成長に大きなプラスがあります。
モントリオール大学のHarbecとPaganiがケベック州で生まれた子どもたちを追跡調査したところ、6歳時点の家族との食事体験の質が高い子どもは、10歳時点で身体面(全般的なフィットネス、清涼飲料水の摂取量の少なさ)および行動面(身体的攻撃性や反抗的行動の少なさなど)の両方で良好な状態を維持していました[11]。
14の研究を統合したシステマティックレビュー(Harrison et al.,2015)でも、頻繁に家族で食卓を囲んでいる子ども・青年は、摂食障害・アルコールや薬物の使用・暴力的行動・抑うつ感情や希死念慮が少なく、自己肯定感や学業成績が高い傾向が繰り返し確認されています[12]。毎日同じ食卓に集まること自体が、一体感を育て、互いの様子を確かめ合う貴重な機会になっている、というわけです。
親にとっても食卓の恩恵は大きいとわかっています。Utterらの研究(2018年)では、家族との食事頻度が高い親ほど自己肯定感が高く、抑うつ症状やストレスが低い傾向が示されました[13]。食卓は子どものための場であると同時に、親自身の心もそっと回復させてくれる場所でもある。
こう考えると、子どもが食事中に多少散らかしたり椅子から降りたりすることは、家族の食卓がもたらす恩恵全体から見れば、本当に小さなことです。そこにはごはん粒の汚れよりも、はるかに大きな「栄養」が流れています。
こんなときは専門家を頼ってみてください
遊び食べや立ち歩きの多くは、成長が自然に解決してくれます。
ただ、精神科医としてひとつだけお伝えしておきたいことがあります。背景に発達障害などの医学的な要因が隠れているケースもあること。そして、それに気づくことは「心配」ではなく「チャンス」だということです。
注意欠如多動性障害(ADHD)のある子どもは、食事場面で不注意や多動性、衝動性が目立つことがあります。自閉スペクトラム症(ASD)なら、感覚過敏による極端な偏食や、手順へのこだわりが食卓で現れることもあります。
ここで声を大にしてお伝えしたいのは、こうした特性があっても、その子に合ったアプローチを見つければ食卓は大きく変わる、ということです。ADHDなら食事環境の構造化——刺激を減らす、時間を区切る、手順を見える化する——だけで食行動がぐっとよくなる場合があります。ASDの感覚過敏も、段階的に食体験を広げるアプローチが有効です。「特性がある」は「食事が一生大変」を意味しません。「この子に合ったトリセツが見つかれば、食卓はもっと楽しくなる」のです。
相談の目安は3つ。
○5歳を過ぎても改善の兆しがない。
○食事だけでなく生活全般に困難が見られる。
○半年以上工夫を続けても変化がない。
こうした場合は、小児科や児童精神科に気軽に相談してみてください。早めに動くことが、お子さんと家族の食卓をもっと楽しい場所にする近道です。私のクリニックでも、相談をきっかけに食卓の雰囲気がガラッと変わったご家族を何組も見てきました。
おわりに
「今日も一緒に食べたね」、それだけでいい。
毎日のごはんの時間。正直、大変ですよね。手間をかけて作ったものをひっくり返されたり、床を拭いたそばからまた汚されたり。「もう勘弁してくれ」と思う日もあるでしょう。
それでも、この記事を通してお伝えしたかったのは、あの散らかった食卓のひとつひとつの場面に、お子さんの成長が詰まっている、ということです。
ごはん粒をつぶす指先で、脳の感覚回路がつながっていく。椅子から降りてまた戻ることを繰り返しながら、前頭前皮質が少しずつ育っていく。「いらない」と突き返した野菜に、何度目かのある日ひょいと手を伸ばす。
そしてなにより、一緒の食卓に座って、同じものを食べて、顔を見合わせて笑う。その時間そのものが、科学的にも支持された「子どもの心を育てる力」です。
完璧な食卓なんて、どこにもありません。ごはん粒が飛んでいても、牛乳がこぼれていても、「今日も一緒に食べたね」。それだけで、親としては百点満点です。
食べ物を握りしめた小さな手。その手は今日も確かに、未来に向かって伸びています。
※論文の検索、内容の推敲、ファクトチェック(事実検証)に生成AIを使用しています
参考文献
[1] 厚生労働省「平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要」(2016年)
[2] Coulthard, H. & Thakker, D. (2015). Enjoyment of tactile play is associated with lower food neophobia in preschool children. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 115(7), 1134-1140. doi: 10.1016/j.jand.2015.02.020
[3] Ruff, H.A. & Capozzoli, M.C. (2003). Development of attention and distractibility in the first 4 years of life. Developmental Psychology, 39(5), 877-890. doi: 10.1037/0012-1649.39.5.877
[4] Taylor, C.M. & Emmett, P.M. (2019). Picky eating in children: causes and consequences. Proceedings of the Nutrition Society, 78(2), 161-169. doi: 10.1017/S0029665118002586
[5] Sullivan, S.A. & Birch, L.L. (1994). Infant dietary experience and acceptance of solid foods. Pediatrics, 93(2), 271-277.; Birch, L.L., Gunder, L., Grimm-Thomas, K., & Laing, D.G. (1998). Infants’ consumption of a new food enhances acceptance of similar foods. Appetite, 30(3), 283-295. doi: 10.1006/appe.1997.0146
[6] Maier, A., Chabanet, C., Schaal, B., Issanchou, S., & Leathwood, P. (2007). Effects of repeated exposure on acceptance of initially disliked vegetables in 7-month old infants. Food Quality and Preference, 18(8), 1023-1032. doi: 10.1016/j.foodqual.2007.04.005
[7] Spill, M.K., Johns, K., Callahan, E.H., Shapiro, M.J., Wong, Y.P., Benjamin-Neelon, S.E., Birch, L., Black, M.M., Cook, J.T., Faith, M.S., Mennella, J.A., & Casavale, K.O. (2019). Repeated exposure to food and food acceptability in infants and toddlers: a systematic review. American Journal of Clinical Nutrition, 109(Suppl_7), 978S-989S. doi: 10.1093/ajcn/nqy308
[8] Satter, E.M. (1986). The feeding relationship. Journal of the American Dietetic Association, 86(3), 352-356.; Satter, E.M. (2007). Eating competence: definition and evidence for the Satter Eating Competence Model. Journal of Nutrition Education and Behavior, 39(5 Suppl), S142-S153. doi: 10.1016/j.jneb.2007.01.006
[9] Powell, F., Farrow, C., Meyer, C., & Haycraft, E. (2017). The importance of mealtime structure for reducing child food fussiness. Maternal & Child Nutrition, 13(2), e12296. doi: 10.1111/mcn.12296; Finnane, J.M., Jansen, E., Mallan, K.M., & Daniels, L.A. (2017). Mealtime Structure and Responsive Feeding Practices Are Associated With Less Food Fussiness and More Food Enjoyment in Children. Journal of Nutrition Education and Behavior, 49(1), 11-18.e1. doi: 10.1016/j.jneb.2016.08.007
[10] Harper, L.V. & Sanders, K.M. (1975). The effect of adults’ eating on young children’s acceptance of unfamiliar foods. Journal of Experimental Child Psychology, 20(2), 206-214. doi: 10.1016/0022-0965(75)90098-3
[11] Harbec, M.J. & Pagani, L.S. (2018). Associations Between Early Family Meal Environment Quality and Later Well-Being in School-Age Children. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 39(2), 136-143. doi: 10.1097/DBP.0000000000000520
[12] Harrison, M.E., Norris, M.L., Obeid, N., Fu, M., Weinstangel, H., & Sampson, M. (2015). Systematic review of the effects of family meal frequency on psychosocial outcomes in youth. Canadian Family Physician, 61(2), e96-e106.
[13] Utter, J., Larson, N., Berge, J.M., Eisenberg, M.E., Fulkerson, J.A., & Neumark-Sztainer, D. (2018). Family meals among parents: Associations with nutritional, social and emotional wellbeing. Preventive Medicine, 113, 7-12. doi: 10.1016/j.ypmed.2018.05.006
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