[前編]近年、子どもの近視が増えているって知っていましたか?医療法人社団久視会いわみ眼科理事長 岩見先生に伺いました!

近年、子どもの近視が増えているって知っていましたか?
今回は、近視が増えた理由や予防方法などについて、医療法人社団久視会いわみ眼科理事長 岩見久司先生に前後編にわたってお話しいただきました。

今回は前編です。

近視人口の増加と、近視が問題である理由について

小児の近視はもはや社会問題だと考えています。
アジアの先進国において1950年代は10%~30%台だったのが、21世紀に入ると、日本を含めて新成人の80%以上が近視になっているというデータがあります。1)
アジア人は遺伝的に特に近視になりやすいことも分かっています。

目の前後の長さ(角膜から網膜までの長さ)を眼軸長(がんじくちょう)と呼びます。
近視が進行すると眼軸長が伸びていくことが分かっています。
眼軸長が長くなるということは眼球の変形を意味し、強度近視に至るとそのリスクが跳ね上がります。

例えば強度近視と正視(近視遠視がない人)を比較すると、緑内障は数倍、網膜剥離は10~20倍、近視性黄斑変性は800倍以上、リスクが上がります。2)
近視の増加によって、2050年には世界人口100億人のうち、50億人が近視、10億人が強度近視、5億人が病的近視(=将来近視関連で失明のリスクあり)になるといわれており、全世界的にも大変危険な状況だと考えられています。

これらの合併症は子どものうちに生じることはないため、近視の対策は眼鏡をかけておけば問題ないと誤解されがちです。
しかし、成人してからこれらの合併症が生じるため、近視の進行はできるだけ抑えておくべき切実な問題で
遺伝子は100年前も変わっていないのに、なぜ近視が進行するのか?
それは、近視が進行する原因に遺伝的な弱さに加えてそれを悪化させる生活習慣があるからです。

近視はなぜ増加しているか

近視進行メカニズムのひとつとして提唱されている軸外収差理論というものについて説明します。3)4)

はじめに、ものを近くで見る習慣がついてしまうと、目の近くにピントが合って固まった状態になります。
これを調節緊張と呼び、純粋な調節緊張からくる近視を調節性近視(または仮性近視)と呼びます。
長期間の調節緊張が続くと、目の中の光を受け取る部分である網膜の周辺でピントが合わない状態が続きます。
これを遠視性デフォーカスと呼びます。遠視性デフォーカスが目に刺激を与え、眼軸長が前後に伸びていきます。

これが軸性近視です。

調節性近視は調節緊張が改善すると良くなりますが、軸性近視は眼球の変形を伴っているので治りません。
そのため、調節性近視の状態で改善する必要があります。
また、日光を浴びる習慣があると近視は進行しにくくなることが知られています。
台湾の研究では給食を屋外で取らせることで、近視児童の割合が減ったと報告されています。5)

逆に、屋外活動が少ないと日光を浴びる量が減少し、近視は進行しやすくなります。
そのことからも、生活習慣の改善をおこなうことが有効と考えます。

後編に続きます。

1)Morgan IG et al. Prog Retin Eye Res 2018
2)Haaman AEG et al. Invest Ophthalmol Vis Sci 2020
3)Smith EL et al. Invest Ophthalmol Vis Sci 2005
4)Diether S et al Vision Res 1997
5)Wu PC et al.Ophthalmology 2020




執筆者

岩見久司先生
大阪市立大学医学部卒
医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長
眼科専門医
医学博士
兵庫医科大学非常勤講師

経歴
1日100人を超す外来をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。
網膜の病気に将来繋がっていく可能性のある小児の近視が現在急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。
令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの方が持てるように啓蒙活動を展開中。

いわみ眼科ホームページ
https://iwami-eyeclinic.com

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