我が子が周りの子と違う?まずはHSCについて知ることから。発達障害との違いについて精神科医飯島先生にお伺いしました。

子どもがHSCかもしれない・・・そんな時、親としてできることは?
そんな悩みについて、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック院長飯島慶郎先生からお話をお伺いしました。

「うちの子、どうも周りの子とちょっと違うみたい・・・」。そう感じて子育てに悩んでいらっしゃる方はいませんか? もしかしたら、そのお子さんはHSC、つまり「ひといちばい敏感な子」かもしれません。

HSCとは?


HSCは、Highly Sensitive Child の略で、生まれつき感受性が強く、周りの刺激にとても敏感な子どもたちのことを指します。アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱した性格概念です。彼女は詳細な研究の末、感覚情報に対する処理の深さや感度の高さ(≒敏感さ)が強い人達がいることを発見しました。そういった人たちを博士はHSP(Highly Sensitive Person)と名付け、特に子どもの場合をHSC(Highly Sensitive Child)と呼びました。博士の研究によると5人に1人はそうした気質を持っているとされています。

HSCの子どもたちは、周りの音や光、匂い、人の感情、空気の微妙な変化などに人一倍敏感に反応します。新しい環境や変化を苦手とし、たくさんの情報に圧倒されやすく、疲れやすいという特徴があります。このような特徴は、発達障害の特性と似ていると感じる方もいるかもしれません。特に、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)といった発達障害は、HSCと混同されやすいといわれています。
そこで、まずHSCと発達障害の違いを理解することから始めましょう。

(1)HSCと発達障害:その違いを見極める

HSCはあくまで「気質」つまり性格の特性であり、心理学上の概念です。対して発達障害は「脳の特性」によるものとして精神医学上の概念です。両者の出どころは全く別のものですが、似ているところも多く、お子さんを持つ親御さんの中には、発達障害との違いが分からずに不安を感じている方もいるのではないでしょうか?
確かに、HSCと発達障害には、以下のような共通点があります。

・周りの子と違うと感じられることが多い
・学校や社会生活で困難が生じる場合がある
・周囲の理解とサポートが必要である

しかし、HSCと発達障害は、その原因、特性、成長に伴う変化、そして対応の仕方が異なります。以下の表で、主な違いを比較してみましょう。

例えば、HSCは、周囲の騒音や光などの刺激に過剰に反応し、疲弊しやすいため、集中力が途切れたり、イライラしたりすることがあります。しかし、静かな環境では、本来の高い集中力を発揮することができます。
一方、ADHD(注意欠如・多動症)の発達障害を持つお子さんは、生まれつきの脳機能の特性により、集中力の維持や切り替えが難しく、周囲の刺激とは関係なく、注意が散漫になりやすい傾向があります。
また、HSCは共感力が高く、相手の気持ちを理解することに長けていますが、発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの場合、社会的なコミュニケーションや対人関係の構築に困難が生じるケースがあります。

このように、HSCと発達障害は、一見似たような行動を見せることがあっても、その根本的な原因や特性が異なるため、対応の仕方も変わってきます。
もし、お子さんに発達障害の可能性を感じたら、まずは専門機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。自己判断でHSCか発達障害かを見極めるのが困難なら、専門家の意見を参考にしましょう。
発達障害が除外された場合、次に大切なのは、お子さんのHSC気質を受け入れることです。

(2)HSCであることを受け入れる

お子さんがHSCだと分かったら、次はその概念をしっかりと理解し、お子さんを受け入れることが重要です。「うちの子はダメな子なんだ」「私の育て方が悪かったんだ」と自分やお子さんを責めるのはやめましょう。
HSCのお子さんを持つ親御さんなら、「周りが普通にできていることが、うちの子には難しい」「他の子と同じように接してもうまくいかない」という経験を、たくさんされてきたのではないでしょうか。
HSCについての知識を深めることで、お子さんの行動や言動を「理解」できるようになるでしょう。理解がうまれれば徐々に「この子はこういう子なんだ」「周りと違っていて当たり前なんだ」と、心から受け入れることができるようになっていくでしょう。

HSCを受け入れるということは、彼らの敏感さを理解し、尊重することです。「周りの子と同じようにできない」と叱ったり、無理強いしたりするのではなく、「この子には、こういうサポートが必要なんだ」と、子どものペースに合わせて、寄り添う気持ちで接することが大切です。
そして、HSCのお子さんを受け入れたら、次は彼らが安心して過ごせる環境を整えることが重要です。

(3) 安心できる環境を作る

繊細な彼らにとって、家の中はまさに「安全基地」です。刺激の多い外の世界で頑張っている彼らが、心からリラックスできる空間を作ってあげましょう。
静かな環境:
騒音や大きな音は、彼らにとって大きなストレスになります。静かな場所で過ごす時間を確保しましょう。読書をしたり、音楽を聴いたり、ゆっくりとお風呂に入ったり・・・。HSCのお子さんは静かな環境でこそ、本来の力を発揮することができます。必要であれば、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンなどのアイテムを活用するのもよいでしょう。
家の中だけでなく、外出先でも、子どもが落ち着ける場所を探してあげることが大切です。図書館や公園、静かなカフェなど、騒音の少ない場所を選ぶようにしましょう。
整理整頓:
ごちゃごちゃした空間は、視覚的な刺激となり、彼らを疲れさせてしまいます。スッキリと片付いた空間をつくることで、お子さんはリラックスして過ごすことができます。
子どもと一緒に、おもちゃを片付けたり、服を整理したりするのも良い機会です。身の回りを整理することは無意識的にも心の中を整理することに繋がります。整理整頓の習慣をつけることで、子ども自身も落ち着いて過ごせるようになるかもしれません。
シンプルな生活:
予定を詰め込みすぎず、彼らがゆったりと過ごせるように、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。習い事や遊びの約束も、子どもの様子を見ながら調整し、無理のない範囲で楽しむことが大切です。
心地よい服装:
HSCのお子さんは、服の素材や着心地にも敏感です。チクチクする素材や締め付けの強い服は避け、肌触りの良い、ゆったりとした服を選んであげましょう。服を選ぶ際には、子どもと一緒に、実際に触ったり、着てみたりして、心地よいと感じる素材やデザインを選んであげましょう。
安心できる環境を整えたら、次は子どものペースを尊重することが大切です。
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[執筆者]

飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。

島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

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