ヒートショックは若い女性も注意が必要って本当?急な温度差が引き金に。リスクを把握して正しい知識を身につけましょう。

ヒートショックになるのは、年配の方だけでなはない?どんな方がかかりやすいの?
そんな質問に、心臓血管外科専門医である、二子玉川女性のクリニックの佐賀俊文先生からお答えいただきました。

ヒートショックとは?


『ヒートショック』とは、気温や室温の急激な差が、血圧を大きく変動させることによって引き起こす症状、病気の総称です。
ヒートショックという言葉は医学用語ではなく、気温にかかわる身近に起こりうることを、メディアなどで伝わりやすく表現するための言葉です。そのため症状や病態の括りの幅が広いのが特徴です。
具体的には入浴中に急に血圧が下がることによる意識障害やめまい、悪心。また寒い場所に出た時の、急な血圧上昇に伴う頭痛や胸痛、背部痛を伴う血管疾患などが挙げられます。動脈硬化を起こすと血圧の変化に血管が対応できなくなり、重傷な病気を引き起こします。そのためヒートショックを発症する方の大半は動脈硬化が背景にあります。動脈硬化の原因としては年齢(65歳以上)、喫煙、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が挙げられます。
しかし一部では動脈硬化をきたしていなくてもヒートショックを発症する方がいらっしゃいます。生理周期で貧血の時期の方や飲酒を多量にした後の入浴中の血圧低下には、若い女性でも注意が必要です。
また脳出血や急性大動脈解離、急性心筋梗塞、致死的不整脈などは、親族内での発症率が高まる家族歴が非常に重要になっています。親族にこのような病気を発症された方がいる場合はヒートショックの予備軍である可能性があります。

ヒートショックの原因とは?

ヒートショックは前述したように、急激な温度差が引き金になります。具体的には冷えた脱衣所からの入浴や、起床後薄着で朝のお手洗いに向かったり、ゴミ出しに外出したりすることなどが挙げられます。
例えば冷え切った状態で急に熱いお風呂に入浴すると、手先や足先の血管が拡張して、体の中心から血液が末梢へ移動していきます。すると体幹部の血圧はスッと下がるため、急な血圧の低下によって脳への血流が低下し、意識障害やめまい、眼前暗黒感、悪心が出現することがあります。
寒い場所に出た時はその反対です。生体反応により、体温を逃さないように手先、足先の末梢の血管がキュッと閉まり、血液は体の中心に集まります。すると体幹の血圧が急激に上昇し、そのストレスによって心臓や大動脈、脳の血管が破れたり裂けたり、または詰まったりして血管疾患を引き起こします。

ヒートショックを起こさないために気を付けたいこと

まずはご自身にヒートショックのリスクがどれくらいあるかしっかり把握することが大事です。その上で基礎疾患、生活習慣病に対しての治療が必要かどうかも含めて、検診などで指摘を受けた点に関しては、しっかりと医療機関を受診しましょう。
喫煙は受動喫煙も含めて、動脈硬化の最大のリスク因子です。家族歴は血縁の方はもちろんのこと、同じような食生活や行動をしている同居している配偶者の既往も参考になります。
日常の行動に関しては脱衣所に簡単な暖房を設置するほか、朝、暖かい格好をしてから行動するなどの寒さ対策をしっかり行うようにしましょう。また深酒状態での入浴は控えるようにしましょう。
冬場はヒートショックをはじめとして、血管にまつわる急性疾患の発症率が大幅に上昇します。日常的な予防から対処法まで、正しい知識を身につけましょう。

[執筆者]

佐賀俊文先生
公立学校共済組合関東中央病院心臓血管外科部長/二子玉川女性のクリニック

[プロフィール]
杏林大学医学部卒業。日本外科学会外科専門医、心臓血管外科専門医、脈管専門医・指導医、血管内治療認定医。
心臓大動脈の治療から下肢静脈瘤などの末梢血管治療まで幅広くこなす。メスを握る手術とカテーテルによる治療の両刀を使いこなすハイブリッド外科医。

二子玉川女性のクリニック
https://www.futakotamagawa-josei.com

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