【前編】子どもが約束ごとやゲームのルールをつくっても破ってしまうときは、どうしたらいい? 臨床心理士の視点からお伝えします!

子どもと約束したのに、うまく守ってくれなくて困ってしまう、どうすればいいの?そんな悩みに、臨床心理士である、大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さんから前後編に分けてお話を伺いしました。今回は前編です。

約束ごとやルールをつくっても破ってしまうのはどうして?

子どもは情緒や感情の発達が未熟です。
色々な失敗や悔しい思いを何度も経験したり、不安が生じてもそれを乗り越えて楽しい経験をしたりすることで精神の発達が促されます。まさに、約束ごとを守ったり、ゲームのルールを守るということはこころの成長発達にとって欠かせないトレーニングのひとつです。
子どもは快・不快、気持ち良い・悪いが行動を決める基準です。約束やルールを守る際には、必ず「めんどくさい」「やりたくない」「嫌だ」「悔しい」といった“ネガティブ感情”が生じます。ネガティブ感情は非常に強力で、「しない」「守らない」という行動に非常に強く働きかける力を持っており、精神発達が未熟な子どもは約束やルールを破ってしまいがちといえます。
しかし、前述の通り、約束ごとやルールを守ることは子どもの精神発達においては必要不可欠です。大人は子どもが継続してこころのトレーニングが出来るように、約束ごとやルールを破ってしまった時の対処方法の工夫と徹底が大切です。

約束の守り方とルールのつくり方

まずはルールのつくり方から工夫してみましょう。
子どもが小学校入学前の小さいうちは、親が主導して約束ごとやルールをつくってあげると良いでしょう。子どもが好きなこと、意欲を持って取り組んでいることや、小学校入学時以降は、子どもと共同でルールをつくると良いでしょう。
ただし、ある程度の枠組みも必要です。例えば、夜のゲームの時間についてのルールを決める際には「子どもには睡眠が大切だから、21時には寝ないといけないよ。ゲームは何時までにしようか?」といったように、単に「何時にする?」というのではなく、21時までの間に、という枠組みがある方が、突拍子もないルールになったり、子どもが非常に守りにくいルールにならなくておすすめです。

次に、約束の守り方についてです。ここが非常に大切なポイントです。
子どもは夜のうちに「明日の学校頑張る!」と言っていても朝になると「行きたくない」と言って泣き出したり、早く終わらせれば楽しい時間が待っていても「もうちょっとでやる」と宿題をどんどん先延ばしにしたりと情緒が不安定なものです。
子どもは“今”を生きていますので、昨日やさっき言ったことはすでに過去の終わったできことです。ここで「昨日は行くって言ったじゃない!」「早くやりなさい!」と叱っても子どもの決意は変わりません。むしろ叱らなければならない大人の方が辛くなってしまいます。

こういう時には叱るのではなく淡々と「学校へは8時に出発する約束でしょう。ランドセル背負っていこうね」と寄り添って一緒に学校へ行く身支度を整え、玄関から送り出してあげたり、「まずはこの2問をやってみよう」と一緒に宿題へ向き合ってあげてください。
大人も子どもも、何かしないといけないことの前には必ず「したくないな」というネガティブな感情が生じます。これを何度も繰り返し乗り越える経験をする、「行きたくなかったけど、行ったら楽しかった」「やってみたら案外簡単に出来た」を繰り返すことで精神の発達が促されますし、友人関係や知識も蓄積されます。
大切なことは“親もルールを守る”ということです。

忙しいから子どもにゲームをさせっぱなしになっている、動画配信サイトを見せっぱなしになっているということはありませんか?「5時から宿題をする」と約束をしたのであれば、親も守りましょう。つまり、5時になったら親が主導してゲームや動画配信サイトを消す、ということです。例えば、まずは「5時になったよ。宿題するよ」と声をかけます。それでも宿題に向かわなければゲームや動画配信サイトを強制的に取り上げることも大切ということです。

その場では泣いたり、時には癇癪を起こしたりすることもあるでしょう。見ていてかわいそう、と思ってもこの繰り返しがトレーニングになることを思い出してください。約束していても泣いたり暴れたり先延ばしにしたら、約束を守らなくてもなんとかなった、という誤った経験が学習されてしまうと、同じような状況で子どもはまた泣いたり暴れたりして約束を守らないということが続いてしまいます。
子どもの精神発達を促し、辛い状況にも自らの力で立ち向かっていく力を養うために、日常の小さな約束やルールから徹底して大人が約束を守ることが大切です。

いかがでしたか?次回は実際にやってみた例や、ルールを守れない他の要因についてお話しします。

後編の話




執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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